観客に手に汗握るひとときを提供するスリラー映画には、状況設定を極端に限定することで緊迫感を高める“シチュエーション・スリラー”というサブ・ジャンルがある。比較的低予算で作れることもあり、公衆電話ボックス、エレベーター、プール、ATM、サウナルーム、スキーのリフト上など様々な状況を舞台にした作品が誕生してきたが、共通するのは、“限定された空間”であることが恐怖や焦りを加速させていくこと。全編が仮設トイレで展開する新作スリラー『ホーリー・トイレット』(3月3日公開)をはじめ、必見のシチュエーション・スリラー4作品を紹介。
『ホーリー・トイレット』 3月3日(金)公開
世界中のファンタスティック映画祭を席巻してきた本作は、目覚めたらトイレ、爆発まで34分という極限状況に置かれた男の、奇想天外なワンシチュエーションのサバイバル劇。仮設トイレ内だけで全編が進行するという斬新な設定で、観る者は孤立無援の男が味わう底なしの恐怖と焦燥感、さらに鉄筋が刺さった腕の激痛を、あまりにも生々しい臨場感とともに疑似体験することになる。
頭部を負傷して意識を失った建築家フランクが、リゾートホテルの建設現場で横倒しになった仮設トイレの中で目を覚ます。記憶の一部が吹っ飛び、この異常な状況がのみ込めないフランクは、トイレの周りに大量の解体用ダイナマイトが仕掛けられ、34分後の午後2時ジャストに爆破が行われることを知る。この非常事態を生き延びるには、誰かに助けを求めるか、もしくは自力で脱出しなくてはならない。ところが右腕に鉄筋が突き刺さって動けないうえに、友人である市長ホルストの邪悪な思惑が明らかになり、時間だけが空しく過ぎていく。刻一刻と爆発のリミットが迫るなか、絶体絶命のフランクに打つ手はあるのか……。
『ソウ』(2004)
ソリッド・シチュエーション・スリラーと銘打ち、シリーズ化されるほどの大ヒットを記録、このジャンルを定着させた原点的な作品。老朽化したバスルームで目覚めた2人の男が、相手を殺すか、2人とも死ぬかの選択を迫られる。後にホラー映画界の巨匠となるジェームズ・ワンのデビュー作で、120万ドルという低予算にも関わらず、全世界で1億ドル以上の興行収入を記録。
老朽化した巨大なバスルームで目覚めた目覚めた2人の男、ゴードンとアダム。それぞれ足首に鎖をはめられ、2人の間には自殺死体が転がり、まったく見当がつかない状況に錯乱する。ポケットに入っていたカセットテープを再生すると「6時間以内に相手を殺すか、2人とも死ぬか」という連続殺人鬼ジグソウから殺人ゲームへの誘いが録音されていた…。2人は協力して脱出を試みるが失敗に終わり、徐々にタイムリミットが近づいてくる―。
『[リミット]』(2009)
ほぼ全編暗闇の中で描かれ、閉じ込められた棺の中以外のシーンが出てこないという、異色のワンシチュエーション・スリラー。『デッドプール』のライアン・レイノルズが主演を務め、圧巻の一人芝居を披露。ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞で、インディペンデント映画トップ10の1本に選ばれた。
トラック運転手としてイラクで働いていたアメリカ人のポールは、ある日突然、武装した軍団に襲撃され、目覚めると地中深くに埋められた棺の中にいた。手元にあるのはライターと酒、薬の瓶、足元にあった携帯電話、そして残り90分の酸素のみ。なぜポールは棺の中に埋められたのか? どうしたら脱出できるのか? タイムリミットが迫るなかポールは必死に脱出を試みるが…。
『フォーン・ブース』(2002)
『イニシェリン島の精霊』で第95回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされているコリン・ファレルが主演を務める新感覚シチュエーション・スリラー。全編が公衆電話ボックス(フォーン・ブース)で繰り広げられ、時間もリアルタイムで進行。電話相手の声を演じているのは『24 -TWENTY FOUR-』のキーファー・サザーランド。
ニューヨーク・ブロードウェイの電話ボックス。ヤリ手のコンサルタント、スチュは、コール音が鳴り響く電話ボックスの電話を思わず取ってしまう。電話の主から告げられたのは「電話を切ったらお前の命はない」というメッセージ。電話の主はライフルで彼を狙っていることを告げ、銃のレーザー照準でいつでも狙撃できることを示す。一体なぜ自分が標的になっているのか訳も分からぬまま、彼は電話ボックスから一歩も出ることが出来なくなってしまった。犯人の目的とは? スチュはいったいどうなってしまうのか?
ホーリー・トイレット
2023年3月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
STORY
頭部を負傷して意識を失った建築家フランクが、リゾートホテルの建設現場で横倒しになった仮設トイレの中で目を覚ます。記憶の一部が吹っ飛び、この異常な状況がのみ込めないフランクは、トイレの周りに大量の解体用ダイナマイトが仕掛けられ、34分後の午後2時ジャストに爆破が行われることを知る。この非常事態を生き延びるには、誰かに助けを求めるか、もしくは自力で脱出しなくてはならない。ところが右腕に鉄筋が突き刺さって動けないうえに、友人である市長ホルストの邪悪な思惑が明らかになり、時間だけが空しく過ぎていく。刻一刻と爆発のリミットが迫るなか、絶体絶命のフランクに打つ手はあるのか……。
監督・脚本:ルーカス・リンカー/出演:トーマス・ニーハウス、ギデオン・ブルクハルト
2021 年/ドイツ映画/ドイツ語/90 分/ビスタ/5.1ch/原題:Ach du Scheisse!/英題:Holy Shit! /日本語字幕:伊勢田京子/PG-12
提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム
© 2021 NEOPOL FILM, KELLNER & ZAPF GBR ©Daniel_Dornhoefer
公式サイト holy-toilet.com
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