プンクテ配給作品第一弾として、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開される『ウルリケ・オッティンガー「ベルリン三部作」』の初日が8月19日(土)に決定し、ポスタービジュアルと予告編が解禁された。
「ニュー・ジャーマン・シネマ」の時代から精力的に作品を発表しながら、日本では紹介される機会が少なかったドイツの映画作家ウルリケ・オッティンガー。2020年ベルリン国際映画祭でベルリナーレカメラ(功労賞)を受賞。2021、2022年にはウィーンやベルリンの映画博物館などヨーロッパを中心に、大規模なレトロスペクティブが開催。美術館やギャラリーでは美術作品の展示が行われ、映画作家として、芸術家として、世界的に再評価の機運が高まっている。
そして今夏、「ベルリン三部作」と呼ばれる『アル中女の肖像』(79)、『フリーク・オルランド』(81)、『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』(84)が一挙公開される。『アル中女の肖像』と『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』は日本の劇場では初めてのロードショー、『フリーク・オルランド』は29年ぶりの劇場公開となる。
ドイツ在住の小説家・詩人の多和田葉子はベルリン国際映画祭での功労賞受賞式で次のように祝辞を述べた。「ダンテは『神曲(神聖喜劇)』を、バルザックは『人間喜劇』を書きました。オッティンガーの映画は、「人間と神々の喜劇」と呼べるのではないでしょうか?」。
このたび解禁されたポスタービジュアルは、『アル中女の肖像』のワンシーンをオッティンガー監督が撮影したモノクロのスチルをベースにデザインされている。
主人公「彼女」を演じるタベア・ブルーメンシャインが酒を飲む姿と、彼女と飲酒観光の旅をともにする「動物園の酔っぱらい女」を演じるルッツェの姿、そして二人の印象的な濃い影を映し出している。彼女たちの背後にはベルリンの「壁」が高くそびえる。実際のポスターは銀色を使用し、壁に貼られたように日本語タイトルの入ったステッカーを貼付する仕様となっている。デザインは、数多くの映画作品の宣伝美術を手掛ける成瀬慧。
あわせて解禁された予告編はサックスの音が鳴り響く中、3作品の映像が交錯した後、各作品の見どころが映し出され、最後はブルーメンシャインがベルリンへの愛を叫ぶ歌で終わる構成となっており、「ベルリン三部作」への期待感を煽る。予告編の制作は、音楽やファッションの領域で映像ディレクターとして、またDJとしても活躍するpooteeが担当している。
『アル中女の肖像』に主演したタベア・ブルーメンシャインは、80年代の西ドイツのファッションや前衛的なアートにおいてアイコン的存在だった。ブルーメンシャインの佇まい、身振りや表情は、「ベルリン三部作」のユニークかつユーモアに満ちた世界観と現代性を体現しているといっても過言ではないだろう。『アル中女の肖像』では衣装も担当しており、そのキッチュでスタイリッシュな着こなしにも注目。『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』ではドリアンの恋人役を演じている。
『アル中女の肖像』はオッティンガー監督の最高傑作との呼び声が高いにも関わらずデジタルレストアがなされるまで見る機会が少なかった作品。映画監督リチャード・リンクレーターは本作を最愛の1本にあげて「何度も見たい、元気になる映画」と語っている。そして、同時代に活躍し、本作の撮影現場を訪れていた映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーは「最も美しいドイツ映画」の1本として選出している。また本作には、第8代ドイツ連邦首相アンゲラ・メルケルが首相退任式で選曲した「カラーフィルムを忘れたのね」で話題となった、パンク歌手ニナ・ハーゲンが出演し美しく迫力ある歌声を披露している。
フェミニズム映画やクィア映画の文脈で論じられるなど、従来の様々な規範を揺るがす先進性が再評価されているオッティンガー作品。「ベルリン三部作」は、物語の「わかりやすさ」をはねつけ打ち壊す過激さを持つ一方で、その映像は見ることの喜びへと誘うユーモアと美意識に溢れている。そして、冷戦下の西ドイツにおいて「ベルリンの壁」に分断された都市の荒廃した風景を捉えており、現在のベルリン、あるいは都市について考えるための歴史的な記録としても貴重なものである。生々しい知性と豊かで鋭い感性を備える3つの作品が、製作から40年余りの時を超えて、ついに映画館のスクリーンに現れる。
『ウルリケ・オッティンガー「ベルリン三部作」』は、8月19日(土)より渋谷のユーロスペース他にて全国順次公開。
ウルリケ・オッティンガー「ベルリン三部作」
『アル中女の肖像』
『フリーク・オルランド』
『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』
2023年8月19日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー
『アル中女の肖像』 国内劇場初公開
1979年/西ドイツ/カラー/108分/原題:Bildnis einer Trinkerin/英題Ticket of No Return
監督・脚本・撮影・美術・ナレーション:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ペーア・ラーベン 衣装:タベア・ブルーメンシャイン 歌:ニナ・ハーゲン
出演:タベア・ブルーメンシャイン、ルッツェ、マグダレーナ・モンテツマ、ニナ・ハーゲン、クルト・ラープ、フォルカー・シュペングラー、エディ・コンスタンティーヌ、ウルフ・ヴォステル、マーティン・キッペンバーガー
『フリーク・オルランド』
1981年/西ドイツ/カラー/127分/原題・英題:Freak Orlando
監督・脚本・撮影・美術:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ヴェルヘルム・D.ジーベル 衣装:ヨルゲ・ヤラ
出演:マグダレーナ・モンテツマ、デルフィーヌ・セイリグ、ジャッキー・レイナル、アルベルト・ハインス、クラウディオ・パントーヤ、エディ・コンスタンティーヌ、フランカ・マニャーニ
『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』 国内劇場初公開
1984年/西ドイツ/カラー/151分/原題:Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpresse/英題:Dorian Gray in the Mirror of the Yellow Press
監督・脚本・撮影・美術:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ペーア・ラーベン、パトリシア・ユンガー
出演:ヴェルーシュカ・フォン・レーンドルフ、デルフィーヌ・セイリグ、タベア・ブルーメンシャイン、トーヨー・タナカ、イルム・ヘルマン、マグダレーナ・モンテツマ、バーバラ・ヴァレンティン
『アル中女の肖像』
Bildnis einer Trinkerin, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger
『フリーク・オルランド』
Freak Orlando, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger
『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』
Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpresse, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger
配給・宣伝:プンクテ
この記事が気に入ったらフォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow WEEKEND CINEMA