『太陽がいっぱい』『キャロル』『アメリカの友人』を生んだ作家パトリシア・ハイスミスのドキュメンタリー映画『パトリシア・ハイスミスに恋して』(11月3日公開)と、ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主演に迎えた『PERFECT DAYS』(12月23日公開)、日本で同時期に公開される両作品の繋がりを示す2つの本編映像、場面写真が解禁となった。
ドキュメンタリー映画『パトリシア・ハイスミスに恋して』で描かれる作家パトリシア・ハイスミスはアルフレッド・ヒッチコックからルネ・クレマン、クロード・シャブロル、アンソニー・ミンゲラ、トッド・ヘインズといった映画監督たちが原作の映画化を切望してきた作家。文章を読んで広がる映像のイメージの魅力もさることながら、時には同時代の社会的モラルについて考えさせる物語も大勢の観客を魅了してやまない。最新作『PERFECT DAYS』が話題を呼んでいる名匠ヴィム・ヴェンダースもその一人。ヴィム・ヴェンダース監督の名作『アメリカの友人』(77)はハイスミスの原作「トム・リプリー」シリーズが基となっている。
このたび解禁となったのは、日本で同時期に公開される『パトリシア・ハイスミスに恋して』と『PERFECT DAYS』の両作品のリンクを示す各作品本編からの抜粋映像。
まず、『パトリシア・ハイスミスに恋して』からは本編中に引用される『アメリカの友人』のワンシーン。『太陽がいっぱい』(60)の原作である「トム・リプリー」シリーズの第3弾として発表された「アメリカの友人」は、ヴィム・ヴェンダースが監督し、主人公リプリーを『イージー・ライダー』(69)のデニス・ホッパー、額縁職人ヨナタンを『ベルリン・天使の詩』(87)のブルーノ・ガンツが演じている。デニス・ホッパーがテンガロンハットをかぶったリプリーを演じ、その意外性と共に話題となった。20作品以上の小説のほとんどすべてが映画化されているハイスミス原作映画のなかでもファンの多い作品であり、中にはアラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』や、ケイト・ブランシェット主演の『キャロル』(15)を凌いでベストに挙げる評者もいるほど。
そして、もう一つは、先頃、日本でも第36回東京国際映画祭のオープニングで上映された『PERFECT DAYS』のワンシーン。第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞(役所広司)とエキュメニカル審査員賞を受賞し、第96回米国アカデミー賞国際長編部門の日本代表にも選ばれ、12月22日の公開に向けて大きな話題を呼んでいる本作。実は、この映画の中にもパトリシア・ハイスミスの小説が登場する。
解禁されたワンシーンでは、役所広司演じるトイレ清掃員の平山が休日に古書店を訪れ、ハイスミスの短編集「11の物語」を手に取る場面を見ることができる。古書店主の女性が「パトリシア・ハイスミスは不安を描く天才だと思うわ。恐怖と不安が別のものだって彼女から教わったの」と平山に語るシーンも、ハイスミス作品の熱心な読者には味わい深いセリフ。
『PERFECT DAYS』ではまた、平山の日常に「ある思いがけない出来事」が起こると、観客が平山に抱く謎を代弁するかのように、平山の周りの登場人物が彼に様々な問いを投げかける。『パトリシア・ハイスミスに恋して』を観て、ハイスミスの人生に触れた後で観ると、ヴェンダースがハイスミスの小説を登場させた意図を感じられるかもしれない。
『パトリシア・ハイスミスに恋して』は11月3日(金・祝)より新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。
『PERFECT DAYS』は12月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
パトリシア・ハイスミスに恋して
2023年11月3日(金・祝)より新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
トルーマン・カポーティに才能を認められ、『太陽がいっぱい』『キャロル』『アメリカの友人』を生んだアメリカの人気作家、パトリシア・ハイスミス。生誕100周年を経て発表された秘密の日記やノート、貴重な本人映像やインタビュー音声、タベア・ブルーメンシャインをはじめとする元恋人たちや家族によるインタビュー映像を通して明かされる、多くの女性たちから愛された作家の素顔とは―。ヒッチコックやトッド・ヘインズ、ヴィム・ヴェンダースらによる映画化作品の抜粋映像を織り交ぜながら、彼女の謎に包まれた人生と著作に新たな光を当てるドキュメンタリー。
監督・脚本:エヴァ・ヴィティヤ ナレーション:グウェンドリン・クリスティー
出演:マリジェーン・ミーカー、モニーク・ビュフェ、タベア・ブルーメンシャイン、ジュディ・コーツ、コートニー・コーツ、ダン・コーツ
音楽:ノエル・アクショテ 演奏:ビル・フリゼール、メアリー・ハルヴォーソン
2022年/スイス、ドイツ/英語、ドイツ語、フランス語/88分/カラー・モノクロ/1.78:1/5.1ch 原題:Loving Highsmith 字幕:大西公子
後援:在日スイス大使館、ドイツ連邦共和国大使館
配給:ミモザフィルムズ
© 2022 Ensemble Film / Lichtblick Film
PERFECT DAYS
2023年12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
STORY
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬
製作:柳井康治
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンド
2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/スタンダード/124分/G
原題:『PERFECT DAYS』
邦題:『PERFECT DAYS』
© 2023 MASTER MIND Ltd.
公式サイト perfectdays-movie.jp
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