現在開催中の「第2回新潟国際アニメーション映画祭」の開催5日目となる3月19日(火)、「世界の潮流」にて『劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』が上映され、監督の小中和哉、本作にプロダクションアドバイザーとして関わる板野一郎、演出を手がけた阿尾直樹が登壇し、トークショーを行った。MCはアニメ・特撮研究家の氷川竜介が務めた。
長年にわたって愛されるシルバニアファミリーに命を吹き込み、驚くほどハートウォーミングな世界観を作り上げた『劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』。監督を務めたの「七瀬ふたたび」やウルトラマンシリーズで知られる小中和哉監督。そしてアドバイザーとして板野一郎がクレジットされているとあれば、特撮ファンなら「ウルトラマンの血が入っている」という氷川の言葉も納得だろう。
『シルバニアファミリー』映画化の企画立ち上げから関わったという小中は「娘がシルバニアファミリーで遊んでいたんですね。映画を始める前、映画を手にする前の一番の遊びは人形遊びだった。人形遊びからお話を作っていくのは僕の原点なんです」と意外なきっかけを告白。
まだCGがCMやゲームでしか使われていなかった時代から、3DCGの先駆者であったのが板野。小中監督とは『四月怪談』の時以来の長い付き合いだという。
氷川が「人形遊び感覚というのはすごくよくこの作品に出ていて、アメリカで作るとくにゃくにゃの動きにしちゃいたくなりそうじゃないですか。でもそこはちゃんと人形です、でも人形だけど命が入ってますというところにものすごい注力している感じがするんですよね」と述べると、演出の阿尾は「顔の変形ができるようにもできるんですが、今回は逆に変形しちゃうと人形のイメージが壊れてしまうので極力変形はしない、目の表情もそうです。少ない情報量で感情表現することが大事だったので、そこはアニメーターも苦労して。表情は変わらないんだけど、どういう顔をしているのか自分で思い入れをしながらするのが人形遊びだと思うので、見る人の思い出が入る余地があった方がいいのかなと考えて作っていました」と、引き算の考え方での制作だったことを明かした。
アクションやフライングの戦闘シーンなどを得意としてきた板野は「飛んでるシーンはちょっと見せてもらったくらいです。結構原作を大事にしているというかうまく最低限の動きでちゃんと動作もついてるし、結構いい感じだなと」とお墨付き。
フォトリアルな世界を目指したという本作。コマ撮りの人形でライティングして撮ったようにしたいという思いがあったという小中は「絵コンテ段階でミニチュアを作り、3Dでやる前提で整合性が取れるように、後でモデリングできるようにしないといけないし、いろんなアングルが見えるのを作ってそれを参考に絵コンテが描きたかったので、絵を描くよりもミニチュアを作りながらデザインした方が早いかなと」と異例の手法を語った。
CGのライティングにも話がおよび、「実写の場合は撮影監督がいてライティングのイメージを話して監督の仕事は大体終わり。CGの場合は実写と違って後処理でキーライトの強弱はいくらでもやれてしまう。キャラクターだけにどうライティングするかでドラマチックさが決まる、いい芝居に見えるのはライティングだなと今回すごく思った」と小中監督が話すと「どうしてもCGだとツヤツヤギラギラするんですよ。特撮だと本当の光なんですけどCGは光がないので、光に見せるのが大変なんです。洞窟の暗さ、奥が明るくてピントが見てほしいキャラクターに合っていて、手前に踊っているモブがいる。結構ライティング決まってると思います」と賛辞を送った。
小中監督と板野とあれば『ULTRAMAN』の話にも。小中監督が特撮にジャパニメーションの良さを持ち込みたいと板野に相談。ウルトラマン平成三部作の後、「僕が行った時にはCG嫌われてて、『アニメ屋がきたけど、実写と特撮とアニメ違うんだぜ』みたいな話にもなった」と過去を回想。「ULTRAMAN」の空中戦闘シーンを見ながら「2003年、4Kの空を作ったんですよ。雲はレイヤーで。レンダリングして雲とか作ってない、処理が遅すぎて。しかもウルトラマンは手を前に出して飛べとか、加速する時に空気抵抗を無くすように体にくっつけるんです。マッハを超えた時に空気の圧力で衝撃波が出るんですけどそれをくっつけたりとかしてたんです」と解説を加えた。伝統的なものとの衝突もあったが「小中さんが援護射撃してくれた。ビデオコンテまではソフビでやってたんでみんなから笑われていたんですけど、これ(CGシーン)を見たらもうみんな…『これからはCGだな』って(笑)」とエピソードと共に当時を振り返った。
また、小中監督、板野、阿尾および紺吉有限会社という同じ座組で、新潟を舞台にしたオリジナルアニメーション『烈火伝説(仮)』の制作が社長の瀧澤から発表された。紺吉有限会社として初の長編アニメーションとなる。紺吉有限会社は着物を染めるための藍などの染料を販売をやっていた会社。革新と継承という企業理念のもと、3DCG技術を手に、新潟から世界へ羽ばたいていく。
「第2回新潟国際アニメーション映画祭」は3月20日(水)まで開催中。
第2回新潟国際アニメーション映画祭
2024年3月15日(金)~20日(水)開催
英語表記:Niigata International Animation Film Festival
主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
企画制作:ユーロスペース+ジェンコ
公式サイト https://niaff.net
この記事が気に入ったらフォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow WEEKEND CINEMA