カンヌが認める世界最前線の傑作を上映する「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」が12月12日(金)~25日(木)の14日間にわたって開催。このたび、先立って解禁された上映5作品に6作品を加えたフルラインナップ、さらに特別上映作品、チラシならびに予告編映像が解禁された。
2023年にアジア初の開催となり好評を博した「カンヌ監督週間 in Tokio」の第3回目の開催。本特集はソフィア・コッポラ、スパイク・リー、ジム・ジャームッシュ、グザヴィエ・ドラン、大島渚、北野武、黒沢清、三池崇史、西川美和……名だたる監督たちを見出してきたカンヌ国際映画祭の唯一無二のセレクションである「監督週間(Quinzaine des cinéastes/Director’s Fortnight)」の最新ラインナップを日本国内でいち早くスクリーンで鑑賞できる貴重な機会となっている。


今年度、第57回「監督週間」(第78回カンヌ国際映画祭)から本特集で上映作品として新たに発表されたのは6作品。日本人史上最年少となる26歳で「監督週間」選出となった団塚唯我監督の『見はらし世代』、エクソシズムとフェミニズムが斬新な融合を見せるジュリア・コワルスキー監督の長編第二作目『ハー・ウィル・ビー・ダン(英題)』、世界が終わる前に愛を知りたい男性が疾走するアポカリプス・ラブ・ストーリー『ピーク・エヴリシング(英題)』は『ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で』(17)のアンヌ・エモン監督の最新作だ。
さらに、格差社会の強者と弱者がやがて全面戦争に突入する様子を描くアントニー・コルディエ監督によるダーク・コメディ『パーティーズ・オーヴァー!(英題)』、今回の監督週間部門でフランス語の作品に与えられるSACD賞を受賞した、スポーツ競技の光と影、そして青春の挫折と輝きをストレートに描いたヴァレリー・カルノワ監督の初長編作品『ワイルド・フォクシーズ(英題)』、サンダンス映画祭では脚本賞も受賞したエヴァ・ヴィクター監督の初長編作品『ソーリー、ベイビー(原題)』など、舞台も題材もテイストもそれぞれ全く違う、盛り沢山の作品が集められた。
TOKYO FILMeX 2025(11/21~11/30)でも先立って上映される『Yes(英題)』については、「カンヌ監督週間in Tokio 2025」の会期中12月16日&17日の上映に合わせてナダヴ・ラピド監督の来日も予定されている。
特別上映作品として上映が決定したのは2014年に監督週間で上映された高畑勲監督の『かぐや姫の物語』。日本最古の物語文学としてよく知られた「竹取物語」を原作としたスタジオジブリの長編アニメーションだ。カンヌ国際映画祭「監督週間」アーティスティック・ディレクターであるジュリアン・レジが本作をセレクト、その意図について「今年10月から、ヨーロッパで初めてとなる高畑勲監督の展覧会がフランス・パリで開催されており、それに合わせてフランス過去最大規模となる高畑勲監督特集上映や有識者による講演会なども行われています。フランスがようやく彼の全作品を知る機会となりました!この機会に、日本のアニメーションを心より歓迎している「監督週間」として、私自身のお気に入りの映画の一つとして、本作を紹介できることに喜びを感じています」とコメントしている。
同時に解禁となった予告編映像では、先だって解禁された上映5作品に今回解禁となった6作品を加えた合計11作品のフルラインナップを発表する公式映像となっている。
1968年、作家性や芸術性の高い作品を称揚するためにカンヌ映画祭に創設された「監督週間」だが、そのセレクションは決してハ-トウォーミングな作品やラブコメなどではなく、ラディカルで自由な矢を放ち、見る者の心を打つメッセージ性の高い作品ばかり。日本の映画ファン、映画・映像業界に携わる方々、そしてこれからその世界に飛び込もうとしている若者たちへ向けて、VIPOがセレクトした世界の最前線の映画たちを届ける。
ラインナップ11作品+特別上映1作品
▼作品紹介文執筆:矢田部吉彦
★オープニング上映★
ザ・プレジデンツ・ケーキ (英題:The President’s Cake)<観客賞&カメラドール受賞作>
監督:ハサン・ハディ
出演:バニーン・アフマド・ナイエフ、サジャード・モハマド・カーセム、ワヒード・サーベト・フライバト、ラヒーム・アルハジ
制作国:イラク、アメリカ、カタール
【2025年|102分|イラク、アメリカ、カタール】 © 2025 TPC Film LLC All Rights Reserved.
フセイン独裁政権下のイラク。国連の経済制裁により生活が逼迫する中、国民は大統領の誕生日を祝わねばならない。学校から祝典用ケーキの調達担当に指名された少女は、祖母とともに市場に出かけるが、はぐれてしまう。不条理な生活を強いられたイラク市民の生活を、健気な少女の姿を通じて素朴かつ力強く描き、カンヌ映画祭の全部門を通じて決められる「新人監督賞(カメラ・ドール)」を受賞。
見はらし世代 (英題:Brand New Landscape) ※英語字幕版での上映
監督:団塚唯我
出演:黒崎煌代 遠藤憲一 井川遥 木竜麻生
制作国:日本
【2025年|115分|日本】 ©2025 シグロ / レプロエンタテインメント
自分たちを捨てた父親を許せるだろうかーー。母の死に続き、仕事を優先する父にも去られた姉と弟が、成人後に改めて父親と向き合う。普遍的な家族の風景から、父が手掛ける都市の再開発がもたらす影響まで、幅広い視点を含み、リアルとファンタジーが交差する独特の世界観をシャープな映像美で描いてみせる団塚監督は、日本人史上最年少となる26歳でカンヌ国際映画祭「監督週間」選出となった。
ハー・ウィル・ビー・ダン (英題:Her Will Be Done)
監督:ジュリア・コワルスキー
主演:マリア・ヴルーベル、ロクサーヌ・メスキダ、ジャン=バティスト・デュラン、ラファエル・ティエリー
制作国:フランス、ポーランド
【2025年|95分|フランス、ポーランド】 © Grande Ourse Films, Venin Films
畜産業の実家を手伝う若い女性のナヴォイカは、亡き母と同様に、体内に悪魔がいると自覚している。ナヴォイカの欲望の高まりとともに、悪魔が破壊的な力を彼女にもたらす。村を離れていた奔放な女性が隣家に戻って来ると、ナヴォイカの運命が動き出す。フランスにおけるポーランド移民のコミュニティを背景に、エクソシズムとフェミニズムが斬新な融合を見せる新感覚ドラマ。コワルスキー監督長編第2作。
国宝(英題:Kokuho)※英語字幕版での上映
監督:李相日
出演:吉沢亮 横浜流星 高畑充希 寺島しのぶ 渡辺謙 他
【2025年|175分|日本|<PG12>】 ©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会
任侠の家に生まれたが、女形としての才能を見込まれて歌舞伎役者の名家に引き取られた少年と、その家の跡取り息子の2人が、長年に渡って切磋琢磨しながら芸に人生を捧げていく姿を描く。主演の吉沢亮、共演の横浜流星の迫真の熱演が全世代から圧倒的な支持を受け、日本映画興行の歴史を塗り替えるメガヒットを記録した本作は、世界初上映の場となった「カンヌ監督週間」から快進撃をスタートさせた!
ミラーズ No.3 (英題:Mirrors No.3) ※ミラーズとNo.3の間は半角アケ
監督:クリスチャン・ペッツォルト
主演:パウラ・ベーア、バルバラ・アウア、マティアス・ブラント、エンノ・トレプス
制作国:ドイツ 【2025年|86分|ドイツ】 ©Schramm Film
ベルリンの大学に通う女性のラウラは、田舎での交通事故を奇跡的に回避するがショック状態に陥り、近所に住む主婦のベティの世話になる。ラウラはベティを母のように慕い、ベルリンに戻らずベティの家に留まる。ベティも戸惑いながら受け入れるが…。運命のツィストに翻弄される人々の姿を鮮やかに描くヒューマン・ドラマ。ドイツ映画界を代表する存在のひとり、クリスチャン・ペッツォルト監督最新作。
ピーク・エヴリシング (英題:Peak Everything)
監督:アンヌ・エモン
主演:パトリック・イヴォン、パイパー・ペラーボ、ジル・ルノー、エリザベス・マゲレン、エリック・K・ブリアンヌ
制作国:カナダ 【2025年|100分|カナダ】 ©Metafilms inc
モントリオールでペットホテルを営む48歳の独身男性アダムは、環境破壊の進行による終末を恐れ、不安に苛まされている。オンラインで購入した癒しグッズのカスタマーサービスを心の相談窓口と勘違いして電話してみると、応対した女性に恋してしまう!孤独で不安なアダムの世界は、自然災害を経て不思議な迫力に満ちていく。世界が終わる前に愛を知りたい男性が疾走するアポカリプス・ラブ・ストーリー。
ガール・イン・ザ・スノウ (英題:The Girl in the Snow)
監督:ルイーズ・エモン
出演:ガラテア・ベルージ、マチュー・ルッチ、サミュエル・キルヒャー、オスカー・ポンス
制作国:フランス 【2025年|98分|フランス】 ©TakeShelter - Arte France Cinéma
1899年.雪深い山奥の村に、若い女性エメーが教師として着任する。未開に近い村で、エメーは地元の前時代的な風習に抵抗しながら子どもたちに外の世界を教える一方、自らの欲望の高まりを自覚する。やがて、村の青年が失踪する…。冬の山の苛酷な荘厳さを伝える映像美と、女性への抑圧を想起させるメタファーに富んだ、不可思議な魅力を備えた物語。ルイーズ・エモン監督による長編第1作。
パーティーズ・オーヴァー! (英題:The Party's Over!)
監督:アントニー・コルディエ
主演:ローラン・ラフィット、エロディ・ブシェーズ、ラムジー・ベディア、ロール・カラミー、サミ・ウータルバリ、ノエ・アビタ、マヒア・ズルーキ 制作国:フランス 【2025年|95分|フランス】 ©Cheyenne Federation
裕福な家族が豪華な別荘で楽しく休暇を過ごしているが、次第に管理人夫婦との関係がぎくしゃくしていく…。格差社会の強者と弱者が、やがて全面戦争に突入する様子を描くダーク・コメディ。目まぐるしい対決は笑いを誘うと同時に残酷であり、フランス社会の本音と建前が露呈する。絶えず形勢の逆転を試みるキャラクターたちを生き生きと演じる、ローラン・ラフィットやロール・カラミーらのスター俳優にも注目。
ワイルド・フォクシーズ (英題:Wild Foxes)
監督:ヴァレリー・カルノワ
主演:サミュエル・キルヒャー、ファイサル・アナフルー、ジェフ・ジェイコブス
制作国:ベルギー、フランス
【2025年|92分|ベルギー、フランス】 ©HÉLICOTRONC — LES FILMS DU POISSON
全寮制のスポーツ寄宿校でボクシングを専攻するカミーユは、有望選手だったがケガをきっかけに調子を崩し、チームメイトとの関係も悪化していく。しかしその一方でテコンドー選手の女性と知り合う…。豊かな自然の中でスポーツ競技の光と影、そして青春の挫折と輝きがストレートに描かれる。カルノワ監督による長編デビュー作であり、「監督週間」部門でフランス語の作品に与えられるSACD賞を受賞。
イエス (英題:Yes) ※12/16 & 12/17の上映に合わせて監督が来日予定
監督:ナダヴ・ラピド 出演:アリエル・ブロンズ、エフラット・ドール、ナーマ・プライス
制作国:フランス、イスラエル、キプロス、ドイツ
【2025年|150分|フランス、イスラエル、キプロス、ドイツ】 ©Les Films du Bal, Chi-Fou-Mi
テルアビブで活動するピアニストの男性が、政府から依頼された仕事を前に苦しみ、妻との関係も悪化していく…。ガザを攻撃し続けるイスラエルに暮らすアーティストの苦悩を描き、躁的な乱痴気騒ぎを始め、過剰に偽悪的で自虐的な描写の果てに、絶望的な罪悪感が溢れ出す。国際的存在のナダウ・ラピド監督の新作は、10.7以降にイスラエルの監督が内面の苦しみと政府批判を世界で発表した稀有な例となっている。
ソーリー、ベイビー(原題) (原題:Sorry, Baby) ※英語タイトルの「,」と「B」の間は半角アケ
監督:エヴァ・ヴィクター
出演:エヴァ・ヴィクター、ナオミ・アッキー、ルイス・キャンセルミ、ケリー・マコーマック、ルーカス・ヘッジズ、ジョン・キャロル・リンチ 制作国:アメリカ
【2025年|103分|アメリカ】 © 2025 PROJECT ALPHA, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
アメリカ北東部、ニューイングランドの大学で文学者を志すアグネスが、親友との深い絆を大切にしながら、人生を揺るがす難事に対峙していく物語。暖かくユーモラスな空気と、最悪の事態を迎えるビターな要素が巧みにブレンドされ、省略を効かせた静かな演出とスタイリッシュな映像のセンスが光る。本作が長編第1作となるエヴァ・ヴィクター監督が主演も務めている。サンダンス映画祭脚本賞受賞。
★特別上映★
かぐや姫の物語 (英題:The Tale of The Princess Kaguya) ※英語字幕版での上映
監督:高畑勲
声の主演:朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、田畑智子 ほか
制作国:日本
【2013年|137分|日本】 © 2013 Isao Takahata, Riko Sakaguchi/Studio Ghibli, NDHDMTK
都のはずれの里山に、働き者の翁と媼が暮らしていた。ある日、竹林を訪れた翁は、光る不思議な竹に気づき、近づくと竹の子の中から小さな可愛らしい女の子が現われた。女の子を連れ帰った翁は自分たちの子として大切に育てる。女の子は村の子どもたちと元気に遊び回るうちに、みるみる美しい娘へと成長する。驚いた翁は娘を姫に相応しい女性に育てるために都へ居を移し、教育を受けさせる。そして「かぐや姫」として都中の評判になるのだった。姫の美しさを聞きつけた5人の求婚者が現われる。姫は彼らに婚姻の条件として難題を課すのだが…。
まとめ(注目ポイント)
- 「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」が12月12日〜25日開催。
- フルラインナップ11作+特別上映『かぐや姫の物語』を発表。
- 先立って解禁された上映5作品に団塚唯我監督『見はらし世代』など新たに6作品を追加。
- 今回チラシとフルラインナップの映像を含めた予告編が解禁。
カンヌ監督週間 in Tokio 2025
2025年12月12日(金)~12月25日(木)ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催
■主催:監督週間(Quinzaine des Cinéastes/Directors' Fortnight)/特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)
■共催:東京テアトル株式会社 ■宣伝:SUNDAE(Powered by Filmarks)■特別協力:三菱UFJフィナンシャル・グループ/株式会社ティー ワイ リミテッド ■協力:AKIRA H/株式会社IMS Group/株式会社平成プロジェクト/株式会社セレモニー/金延宏明(ノブ・ピクチャーズ)/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
© Cannes Directors Fortnight in Tokio 2023-2025
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