アフガニスタンの女性たちを描いたドキュメンタリー2作品『ハワの手習い』と『撃たれた自由の声を撮れ』が8月に公開されることが決定した。あわせて、2作品共通ビジュアル、監督メッセージ、特報予告編が解禁された。2作品とも山形国際ドキュメンタリー映画祭2025で上映され、『ハワの手習い』は〈市民賞〉(観客賞)を受賞した。ナジーバ・ヌーリ監督『ハワの手習い』が8月1日(土)より、ザイナブ・エンテザール監督『撃たれた自由の声を撮れ』が8月15日(土)より東京・ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて劇場公開される。
『ハワの手習い』は首都・カーブルで認知症の夫を世話しながら暮らすハワのドキュメンタリー。30歳上の夫との結婚を強いられたとき、彼女はまだ13歳の少女だった。父は幼いハワを教育から遠ざけ、母は出産について何も助言してくれなかった。6人の子を産んだ彼女は、同じ道に進まぬよう全力を尽くして娘に教育の機会を与え、次女のナジーバはジャーナリストとして自立した生活を送っている。そして、彼女は決意する——「母の味方になろう」。母にカメラを向け話し相手を務める。夫の愚痴、秘密の恋の話、そして、“やってみたかったこと”について。

今年こそ、と民族手芸の商売と読み書きの学習を始めたハワ。洗濯物を絞っていた彼女の手は刺繍が施された美しい布を撫で、夫の老いた肌を洗っていたその手はまっさらなボードの上で言葉を紡ぎ始めた。ハワのささやかな夢が動き出した矢先、長女の元夫と暮らす孫娘のザハラーが支配的な父親から逃れてきた。母親に代わって彼女を引き取り、共に読み書きを学ぶハワ。しかし、タリバンによる襲撃と占領は日に日に進み、ザハラーと彼女を匿う家族にも命の危険が迫る。2021年8月、カーブル陥落。報道の自由を封殺する動きも強まり、ナジーバは兄のアリーにカメラを託し母国を離れることに——。

「女性」という記号で教育も自由も奪われ、存在そのものさえ脅かされる世界は、この国と地続きにある。娘が撮ろうとした母についての映画は、世界中に満ちる叫びと祈りを幾重にも織り込みながら、今ここに手渡された。
『撃たれた自由の声を撮れ』は、タリバン復権後のアフガニスタンで、自由を求めて声を上げる女性たちの抵抗を記録したドキュメンタリー。2021年8月、タリバンがアフガニスタンのほぼ全土を掌握。20年にわたる民主政権が崩壊した。タリバン復権によってふたたび女性たちは外で働く場を失い、教育の機会を奪われ、少女たちは親よりも年の離れた男たちと結婚させられ、家に閉じ込められる──。

ラシュミンとナスタランの姉妹は、ほかの女性たちと共に街に出ては声を上げる。「私たちはひるまない」。銃を構えた男たちに言い放ち、この国の現状を発信すべくスカーフにスマートフォンを隠し撮影する。親族宅などを転々としながら抵抗を続けるが、家父長制が支配する社会。デモに参加する女性たちを父親は軽蔑し、隣人からの密告にも怯える日々だ。殺されるかもしれない、血の凍る思いをしてもなお街に飛び出していくラシュミン。次世代に同じ苦しみを経験させたくない、その想いが彼女を突き動かす。「未来の子どもたちだけは私たちアフガン女性を誇りに思うはず」。

この怒りと絶望を私たちは直視出来ているだろうか──監督も自らと家族の身に危険を感じながらも、闘いの日々を記録しようと追随する。世界に届けなければこの声は無かったものにされてしまう。沈黙は、この現実を受け入れ認めていることになってしまう。無数の不平等に立ち向かう名もなき女性たちの生々しく痛みを伴う映像を、遠い国の物語で終わらせていいはずがない。「次は平和な世界で会いましょう」という彼女たちの切ない願いを、世界はいつ叶えられるというのか。

『ハワの手習い』ナジーバ・ヌーリ監督メッセージ
山形国際ドキュメンタリー映画祭で『ハワの手習い』をあれほど大切に受け止めていただいたことは私の心に深く刻まれています。ハワの物語が本当に国境を越え、皆さんの国、そして一人ひとりの心の内に居場所を得たのだと感じました。この映画が日本の劇場に届く一方で、いま、アフガニスタンは国際ニュースからほとんど姿を消しています。しかし何百万人もの女性たちにとって、日々の暮らしは一層の制約を受け、その声はさらに奪われつつあります。ハワの歩みは彼女ひとりのものではありません。たとえ世界の視線が途絶えても、なお静かに抗い続ける多くの女性たちの力強さをも宿しています。この映画をご覧になり、ハワに繋がりを感じ、家族や尊厳、屈することなき意志について想いを巡らせ、あなたのなかで響き合うことを願っています。

『撃たれた自由の声を撮れ』ザイナブ・エンテザール監督メッセージ
撮影当時、私も多くのアフガニスタンの女性たちと同じように、恐怖、避難、そして安定を失う痛みを抱えながら生きていました。彼女たちと同じ場所に立ち、恐れや苦悩、希望を分かち合う者としての視点からこの作品は生まれたのです。私はこの映画を「アフガニスタンだけの物語」とは捉えていません。人間の自由、尊厳、教育、そして存在そのものの権利が脅かされるときに何が起こるのか。世界のどこであっても起こりうる普遍的な問題を映し出しています。映画は文化や国境を越えて理解を生み出し、自由を求める闘いが特定の国や民族だけのものではないことを、私たちに静かに思い起こさせてくれます。日本の皆さんに、本作を「同情」ではなく、「人としての結びつき」を持って受け止めていただければ嬉しいです。

STATEMENT
今夏、ナジーバ・ヌーリ監督『ハワの手習い』、ザイナブ・エンテザール監督『撃たれた自由の声を撮れ』の2作品を劇場公開いたします。いずれもアフガニスタンを舞台に、ふたりの女性監督が文字通り命がけで作り上げたドキュメンタリー映画です。
民主政権下で培われていた希望、迫りくる抑圧の恐怖、そしてタリバン支配下でなお自由を求め続けるアフガニスタンの女性たちの抵抗を異なる視点から描いた2作品は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2025で上映され、『ハワの手習い』は市民賞を受賞しました。
世界中が戦禍に飲み込まれるいま、“平和国家日本”という足元もまた揺らいでいます。この2作品を通して、自由を諦めない人びとの強さと、その声を奪われまいとする意志に出会っていただければ幸いです。
――配給会社 東風
まとめ(注目ポイント)
- アフガニスタン女性を描く2作品が連続公開決定ナジーバ・ヌーリ監督『ハワの手習い』は8月1日、ザイナブ・エンテザール監督『撃たれた自由の声を撮れ』は8月15日公開。
- 山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映両作品とも山形国際ドキュメンタリー映画祭2025で上映され、『ハワの手習い』は市民賞(観客賞)を受賞。
- 『ハワの手習い』が見つめる学びへの願い13歳で結婚を強いられた女性ハワが、読み書きの習得と孫娘の未来のために奮闘する姿を記録。
- 『撃たれた自由の声を撮れ』が捉えた抵抗の日々タリバン復権後、命の危険にさらされながらも自由を求め声を上げ続ける女性たちを追う。
ハワの手習い
2026年8月1日(土)ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
撃たれた自由の声を撮れ
2026年8月15日(土)ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
『ハワの手習い』
監督・撮影:ナジーバ・ヌーリ 共同監督・撮影:ラスール(アリー)・ヌーリ
製作:クリスティアン・ポップ 編集:アフサネ・サラリ 制作:TAG Film
日本語字幕:佐藤まな 配給:東風
フランス、オランダ、カタール、アフガニスタン|2024 年|85 分|ダリー語|DCP|英題:Writing Hawa
『撃たれた自由の声を撮れ』
監督・撮影・製作:ザイナブ・エンテザール 編集:モハマド・サミプール 制作:Lumier Film
日本語字幕:吉田ひなこ 字幕監修:後藤絵美、Aweed Sadeed 配給:東風
アフガニスタン|2024 年|70 分|ダリー語|DCP|英題:Shot the Voice of Freedom
『ハワの手習い』 © TAG Film
『撃たれた自由の声を撮れ』 © Lumier Film



