ハリウッド映画の特殊メイクを手がけた伝説的メイクアップアーティスト、リック・ベイカーの評伝・作品集『メタモルフォシス リック・ベイカー全仕事』が2021年6月下旬頃に河出書房新社より限定1000部で発売される。全国書店で予約受付開始。
ファン待望!モンスター・メイクの神様のコンプリート・ワークス
ハリウッド映画の代表的名作の数々と、その舞台裏を初公開。画期的な効果が光る『狼男アメリカン』、マイケル・ジャクソンとゾンビを組み合わせた『スリラー』、目新しいエイリアンがてんこ盛りの『メン・イン・ブラック』など、50年間総110作品にわたる偉業をフルカラー2冊に集成。作品やスケッチ1800点以上を計700ページ超にわたって収録した決定版。本人による撮影秘話はもちろん、豪華関係者による特別寄稿も充実したファン垂涎の一冊だ。
こんな人生を送るとは夢にも思っていなかった。世界を見、有名人に会い、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムの星までもらった。まったく、クレイジーじゃないか? 本書を楽しんでいただきたい。僕が自分の人生を歩み、作品を作って楽しんできたように。
──リック・ベイカー(特殊メイクアップアーティスト、本書の主人公)
リックは世界的に有名な映画製作者とも、正真正銘の駄作製作者とも仕事をしてきた。写真やデッサン満載のこの2巻セットは、彼の名人技に捧げるべく作られた。リックにまつわる興味深い話がたくさんあるんだ。
──ジョン・ランディス(『狼男アメリカン』『スリラー』監督)
リックは常に最高水準のものを生み出してきた。きわめて詳細に書かれた本書のなかでJ・W・リンズラーが記しているように、リックは仕事の質を落とすことなく、荒波を渡っていく方法を見出したんだ。
──ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』監督)
リックに電話し、もう私を追い越していることを告げ、きみを誇りに思うと言った。だが、私の本心だと言ってもリックは事実を認めようとしない。この本を読み、彼の天才ぶりを目にしたら、あの老人は正しかったとリックに一筆書き送っていただきたい。
──ディック・スミス(『エクソシスト』特殊メイク)
本書に登場するエピソード
◉『狼男アメリカン』
「『狼男アメリカン』は実現しないと思っていたんだ」とベイカー。「ところが『ハウリング』を引き受けたほんの数週間後にジョン・ランディスが電話してきた。グッドニュースだ、『狼男アメリカン』を撮ることになったぞって。こういうことってよくあるんだ。『実は別の狼男映画を引き受けたところなんだ』と答えたら、ジョンは『この野郎!』と怒鳴りだした」
◉未完に終わった『Night Skies』(のちの『E.T.』)
10月12日、スピルバーグはハワイで『レイダース』の撮影を終え、アメリカに戻った。10月21日にベイカーと会った彼は、ストーリーの新たな展開について説明し、予算について深刻な懸念を表明した。ベイカーは日記にこう書いている。「『Night Skies』は変わってしまった。新たな脚本。新たなE.T.。最初からすべてやり直しだ。予定外の膨大な時間が必要になる。『狼男アメリカン』とバッティングしてしまう。ショックだ……これほどの変更は受け入れがたい」
◉『ヴィデオドローム』
「『ヴィデオドローム』については、こんなこと、どうすりゃいいんだ? だいたい、なんでこういうことを思いつくんだ? というのが本音だった。腹にヴァギナのような割れ目ができ、そこにうっかり銃を突っこむ男とかが登場するんだ。自分の身を守ることも大切だけど、見積もりは妥当なものにしないといけない。本当に難しい」(RB)
◉『スリラー』
「『スリラー』のダンスを初めて、それも目の前で、ライブで見たとき、まさに……そのときジョン・ランディスが言った。『見ておけよ、リック。これからは、『スリラー』を手がけた人としてみんなに覚えられる。どんな仕事をしてもだ』。じつは大スターのメイクをするのは怖かったんだ。とても気むずかしいんじゃないかと思っていたが、びっくりするほど一緒に仕事しやすく、しかも彼はメイクされるのが好きだった。これはメイクアップアーティストにとって、本当に助かるんだ」(RB)
◉『星の王子 ニューヨークへ行く』
「エディ・マーフィはメイクが終わったら、姿を消してしまった。ゴルフカートでパラマウント・スタジオに行き、知り合いのいるオフィスひとつひとつに顔を出し、自分とわかるか人の反応を見て回っていたんだ。誰もエディと気づかなかった。年配の秘書とデートし、知り合いのプロデューサーに脚本を売りつけようとまでしていた」
◉『エド・ウッド』
ティム・バートンは言う。「マーティン・ランドーのメイクテストを始めたとき、私とメイクアップアーティストのリック・ベイカーは疑問を抱いた。『ベラ・ルゴシの目は何色だ?』 ルゴシのカラー写真は誰も見たことがない。ルゴシは白黒映画のスターだったから」。「もともと、映画はカラーにする予定だった」とベイカー。「どうもしっくり来ないなとティムが言った。それで僕は『モニターのカラーをオフにしてみよう、そしたら白黒になるから』と言ったんだ」
◉『メン・イン・ブラック』
脚本を読んだリック・ベイカーはアンブリンに車を飛ばした。「地球にいるエイリアンの映画なんだが、脚本には基本的に1体も登場しない。僕はこういう人間だろう? 『もっとエイリアンを出すべきだ』って言い続けたんだ」。バリー・ソネンフェルド監督は言う。「どんなエイリアンが映画に出てくるのか見当もつかなかったよ。『エイリアン』は少し見たんだけど、怖くて途中で映画館を出てしまってね。どこから手をつけていいかもわからなかった」
◉『PLANET OF THE APES/猿の惑星』
時間的にも作業量も非常に苦しくなると知りながら、ベイカーは契約を交わした。「この映画のために生まれてきた」と感じていたからだ。「『愛は霧のかなたに』が終わったとき、猿を作ることはもうないだろうと思っていた。その後に『マイティ・ジョー』をやり、これで終わったと思った。そうしたら、この話が舞い込んできたんだ──究極の猿プロジェクトが!」
『メタモルフォシス リック・ベイカー全作品』
ISBN978-4-309-29132-1
本体予価 39,000円(税込42,900円)
2021年6月下旬発売予定
公式ホームページ:https://web.kawade.co.jp/bungei/13709/
●リック・ベイカー プロフィール
伝説的な特殊メイクアップアーティスト。子どもの頃からキッチンで模型を作っていた“モンスター・メーカー”は、やがて70本以上もの映画やテレビ番組にその名を残し、7回のアカデミー賞、3回の英国アカデミー賞、そしてエミー賞をはじめとする数々の輝かしい栄光を授かるにいたる。
画期的な効果が光る『狼男アメリカン』、マイケル・ジャクソンとゾンビを組み合わせた『スリラー』、リアルなビッグフットが登場する『ハリーとヘンダスン一家』、目新しいエイリアンがてんこ盛りの『メン・イン・ブラック』。そのほか、『エクソシスト』から『デス・レース2000年』、『キングコング』『ケンタッキー・フライド・ムービー』『スター・ウォーズ』『ヴィデオドローム』『愛は霧のかなたに』『星の王子ニューヨークへ行く』『グレムリン2』『エド・ウッド』『ナッティ・プロフェッサー』『PLANET OF THE APES/猿の惑星』『もしも昨日が選べたら』『トロピック・サンダー』『マレフィセント』など、コンピュータグラフィックスが主流となる21世初頭まで、ハリウッド映画界における特殊効果の黄金時代を牽引している。
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