ジャック・タチ作品に大きな貢献を果たし、映画監督や俳優として活躍したフランスの才人ピエール・エテックスの特集上映「ピエール・エテックス レトロスペクティブ」が明後日12月24日（土）よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次開催。このたび、上映作品『ヨーヨー』『大恋愛』の特別ポスタービジュアルと、著名人からのコメントが解禁となった。
二十代半ばにジャック・タチと出会い、『ぼくの伯父さん』（58）の助監督として映画界に参入したピエール・エテックス。ムッシュ・ユロの印象を決定づけた伝説的なポスターを生み出すなど、イラストレーターとしても活躍した。その後、のちに偉大な脚本家となるジャン＝クロード・カリエールと共に映画制作を開始。短編二作目『幸福な結婚記念日』で米アカデミー賞最優秀短編実写映画賞を受賞し、長編一作目『恋する男』がフランスで大ヒット、往年の喜劇を彷彿とさせる作品群は広く受け入れられた。
© 1962 – CAPAC
本特集では、ルイ・デリュック賞受賞作『恋する男』、トリュフォーが絶賛し、ゴダールがその年のベストテンに選出した代表作『ヨーヨー』、4編のオムニバス・コメディ『健康でさえあれば』、中年男性の恋と妄想を夢幻的に描く初のカラー長編『大恋愛』の長編4作品と、『破局』、アカデミー賞受賞作『幸福な結婚記念日』、『絶好調』の短編3作品の計7作品がラインナップ。これらの作品は、フランスの権利問題が理由で長く劇場で上映されていなかったが、ジャン＝リュック・ゴダールやレオス・カラックスなどの映画人を含む 5 万人以上の署名活動によって、2010 年に世界各国で再び上映することが可能となった。
そしてこのたび、上映作品より『ヨーヨー』『大恋愛』の特別ポスタービジュアルが完成。解禁となったのは、イラストレーター網中いづるのイラストがあしらわれた『ヨーヨー』と、イラストレーター一乗ひかるのイラストがあしらわれた『大恋愛』のポスタービジュアル。
『ヨーヨー』の劇中に登場するサーカスのシーンを中心に描かれた網中のイラストは、映画同様モノクロながら煌めくような輝きを放っている。一乗のイラストは、道化師やパントマイマーとしても活躍したエテックス独特の動きをポップな色彩にのせて表現。これらの特別ポスターは、東京の公開劇場であるシアター・イメージフォーラムでも掲出予定。
あわせて、著名人からのコメントも解禁。RHYMESTER の宇多丸は『ヨーヨー』について、「序盤の SE ギャグ畳みかけ（“扉の開閉音”だけでこんなに可笑しいなんて！）始め、知的にも素朴にも感じられる無数の小ネタが、まずは最高に楽しい。それでいて鑑賞後に残るのは、見たばかりの夢に感じる懐かしさにも似た、不思議な寂寥感なのだ。」と寄せた。
そのほか、映画監督の今泉力哉、文筆家の岡田育、評論家・早稲田大学教授の小沼純一からコメントが到着している。コメント全文・一覧は記事下にて。
「ピエール・エテックス レトロスペクティブ」は、12月24日から渋谷のシアター・イメージフォーラムにて、順次全国の劇場でも開催。初日12月24日（土）『ヨーヨー』13 時の回上映後には、ライター・編集者の小柳帝をゲストに迎えたトークが実施される。
「ピエール・エテックス レトロスペクティブ」コメント一覧
（敬称略・順不同）
60年前？ ほんと？ こんなにもユーモアとウィットに富み、ときにほろにがい映画がつくられていた？ ことばで要約できるようなストーリーが、サウンドトラックもカラーもごくごくあたりまえになった時代、ひとの動作やモノとモノとの遭遇やすれちがいを、サイレントの記憶をとどめえたピエール・エテックス、知らなかったおのれの無知に、おもわず地団太。
小沼純一（評論家 / 早稲田大学教授）
そうそう「わたしの伯父さん」ってもう一人いたのでした。
会ったことがなくとも、お名前だけはずっと忘れずにいました。
初めて観たのに懐かしくなるその人は、
夢のように美しく、マンガみたいに面白く、失神するほどかわいくて、
とびきりオシャレな、絵になる人でした。
岡田育（文筆家）
序盤のSEギャグ畳みかけ（“扉の開閉音”だけでこんなに可笑しいなんて！）始め、知的にも素朴にも感じられる無数の小ネタが、まずは最高に楽しい。それでいて鑑賞後に残るのは、見たばかりの夢に感じる懐かしさにも似た、不思議な寂寥感なのだ。
宇多丸（RHYMESTER）*『ヨーヨー』
想像や夢想したことが現実と境なく映像化され、そして現実に戻っていく。
くだらないし見たところで人生は豊かにならないけど、とても楽しめます。
いつの時代も男は馬鹿ですね。
今泉力哉（映画監督）*『大恋愛』
ピエール・エテックス レトロスペクティブ
2022年12月24日（土）より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次開催
配給：ザジフィルムズ 協力：シネマクガフィン
