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イタリアの名匠パオロ・タヴィアーニ監督のベルリン国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作『遺灰は語る』が6月23日(金)より公開。このたび、現在91歳のパオロ・タヴィアーニ監督の日本独占インタビューが到着し、公開初日のオンラインQ&Aの開催も決定した。

「良い映画監督というのは嘘つきなんですよ(笑)」

『カオス・シチリア物語』(1984)、『グッドモーニング・バビロン!』(1987)などで知られるイタリアの名匠タヴィアーニ兄弟。2018年に兄ヴィットリオが死去後、現在91歳の弟パオロが初めて⼀⼈で監督したのが本作『遺灰は語る』。ローマからシチリアへ、ノーベル賞作家の“遺灰”を運ぶトラブル続きの旅を描く。

『遺灰は語る』

今年5⽉の「イタリア映画祭2023」(主催:朝⽇新聞社、イタリア⽂化会館、チネチッタ)でオープニング作品として⽇本プレミア上映された際、監督がオンラインで登壇する予定が本⼈の体調不良で中⽌となったが、体調回復後に⽇本の独占インタビューに応じた。またその際、⽇本の公開初⽇にオンラインQ&Aを⾏うことも約束した。

イタリアが映画史に誇るネオレアリズモの時代の後継者として、70 年代から約半世紀にわたって活躍を続けるパオロ・タヴィアーニ監督はまさに“⽣きる映画史”。最新作『遺灰は語る』は昨年のベルリン映画祭で国際映画批評家連盟賞に輝き、「ベルイマン、黒澤、ヴァルダ、オリヴェイラらのように。その殿堂に仲間⼊りする重要な作品」(ScreenDaily)と絶賛されている。

今回到着した日本独占インタビュー、そしてオンラインQ&Aの詳細は以下のとおり。

『遺灰は語る』は6月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

パオロ・タヴィアーニ監督 オンライン Q&A 詳細

⽇時:6⽉23⽇(⾦)18:30の回上映後
会場:新宿武蔵野館
座席のオンライン予約は劇場 HP にて 6/15(⽊)昼 12:00より
https://www1.musashino-ticket.jp/shinjuku/schedule/index.php
※イベントは予定につき、やむをえない事情により、時間や登壇者に変更などが⽣じる場合がございます。

パオロ・タヴィアーニ監督 ⽇本独占インタビュー

——本作のアイディアのきっかけを教えてください。

40年ほど前に『カオス・シチリア物語』を撮ったんですね。その時、実は「ピランデッロの灰」という物語を『カオス〜』の最後に加えるつもりでした。ところが、資⾦がなくなって、結局そのエピソードは撮れなかったんです。そのことがずっと⼼の中に残っていました。でも、なぜ今になってなのかは、よくわからないな。

——ノーベル賞作家ピランデッロの遺灰を運ぶ物語ですが、この遺灰のエピソードはイタリアでは有名なのですか?

ピランデッロは、私たちが抱える多くの問いに答えてくれる偉⼤な作家です。亡くなってから10年間遺灰がローマにあったことも、それから10年、15年くらい経ってようやく故郷のシチリアに墓(モニュメント)ができたのも事実で、何⼈もの作家がその遺灰についての物語を書いています。ただ、この映画はピランデッロという⼈物、その遺灰の旅からインスピレーションを得て作られた、完全なる創作なんです。良い映画監督というのは嘘つきなんですよ(笑)。遺灰の壺が列⾞で旅するというのも私の創作ですよ。

——その列⾞のシーンで、素敵な愛のシーンがありました。戦後間もない、引き揚げの⼈たちをシチリアへ運ぶ列⾞なのに、ピアノを演奏したり、踊ったり、さらにはラブシーンまであって、なんて美しいんだろうと思いました。

“愛のシーン”がありましたね。今、「素敵だった」と⾔ってくれましたが、実は「映画」だからこそ、さらに美しいんですよ。映画の撮影現場で起きたことによって、映画がもっと美しくなった。若い⼆⼈が愛を交わすシーン、あれは偶然の産物で、脚本に書かれていたわけじゃない。列⾞の中にレールを敷いて移動式のカメラを回して撮っていたら、あの⼆⼈が、本当に、愛を歌うような声やジェスチャーをしていたんです。それがすごく素晴らしいと思って、あのシーンを付け加えたんですよ。映画の現場から偶然⽣まれたシーンです。

——映像が本当に美しくて、艶やかに輝いているようでした。モノクロからカラーに変わる瞬間もとても感動的ですね。

⽩黒のシーンは撮影監督によるところが多いんです。⾃分が監督だから⾔うのではなく、⽩黒の中でも素晴らしい効果、⾊彩を作り出してくれたと思っています。“過去”にまつわるから⽩黒、ということだけではなく、映像⾃体が艶やかで⼒がありましたね。今後もまた⽩黒作品を撮りたいと思えるくらいでしたね。映画は⽩黒で始まって、遺灰がシチリアに戻って来た瞬間に⾊がつく。あの海は、ピランデッロが「アフリカの海」と呼んだ海なんですよ。海に光が差す、あの濃い⻘がスクリーンに現れる。あのシーンは、ピランデッロがくれた贈り物かもしれませんね。

——映画の最後にはピランデッロの短編がつくユニークな構成ですね。こちらは⼀転して鮮やかなカラーでした。

⾊彩が爆発的にカラフルになりますよね。まるで⾊の奔流のような。その“⾊”というのが私たちが⽬にしている、“現実”なんです。私⾃⾝は、この映画は2つの全く違う作品が並べられているものだとは思ってはいなくて、同じフレームの中の第⼀章、第⼆章、と考えています。この短編「釘」はピランデッロが死の20⽇前に書いた⼩説で、だからこそ遺灰の旅と、この物語との間に強い結びつきが⽣まれるわけです。

——本作は、初めてお⼀⼈で発表した作品ですね。

(兄の)ヴィットリオは、やはり常に私の映画の中にいるんですよ。初めて⼀⼈で映画を撮影しましたが、私はシーンを撮り終えるたびに、「カット!いいね」と⾔って、ヴィットリオの確認を得るために振り返っていたそうですよ。兄はもうそこにはいないのにね。

——ニコラ・ピオヴァーニさんの⾳楽も素晴らしいです。

彼との仕事は、ヴィットリオと仕事をするのと同じような感覚なんですよ。私たちの映画にずっと寄り添ってくれた⾳楽家ですからね。『サン★ロレンツォの夜』から、途切れることなく関係が続いています。彼は偉⼤な⾳楽家だが、それはアカデミー賞を獲ったからではなく、それ以上の存在なんです(※ピオヴァーニはロベルト・ベニーニ監督の『ライフ・イズ・ビューティフル』でアカデミー作曲賞を受賞している)。

——この映画にはロッセリーニ監督の『戦⽕のかなた』はじめ様々な映画の引⽤によって、戦後のイタリアが描かれますが、⽇本の若い映画ファンに、これは絶対⾒るべき、と思うイタリア映画の名作を3本あげていただくことはできますか?

ロッセリーニ『無防備都市』、デ・シーカ『⾃転⾞泥棒』、ヴィスコンティ『⼭猫』です。私たちが映画監督になりたいと思ったきっかけは、ロッセリーニ監督の『戦⽕のかなた』を⾒たことでした。ただ、残念ながら、ロッセリーニ監督とは⽣前そんなにお会いする機会はありませんでした。けれど、私たちがカンヌのパルムドールを受賞した時、授与をしてくれたのはロッセリーニ監督だったんですよ!(※『⽗/パードレ・パドローネ』で1977年カンヌ国際映画祭の最⾼賞パルムドールを受賞している)。

——今後、映画にしたい題材やアイデアはまだたくさんおありなのでしょうか?

新作をいま準備中なんですが、それについては内緒です(笑)。なんとか撮影までこぎつけるといいなと思っていますよ。

作品情報

遺灰は語る
2023年6月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

原題:Leonora Addio|2022|イタリア映画|90 分|モノクロ&カラー|監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ|出演:ファブリツィオ・フェラカーネ、マッテオ・ピッティルーティ、ロベルト・ヘルリツカ(声) 字幕:磯尚太郎、字幕監修:関口英子

配給:ムヴィオラ

© Umberto Montiroli

公式サイト https://moviola.jp/ihai/

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