第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされている『PERFECT DAYS』(公開中)の日本メディア向け記者会見&ノミニーレセプションがL.Aの在ロサンゼルス日本国総領事公邸にて実施され、ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司、柄本時生、麻生祐未が登壇した。いよいよ明日に迫った米アカデミー賞を前にそれぞれの想いを語り、『ゴジラ-1.0』『君たちはどう生きるか』チームと共に、健闘を祈って乾杯をした。
『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、数々の傑作を世に送り出し続けてきた名匠ヴィム・ヴェンダース。本作は彼が長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員・平山の日々を描いた作品。昨年12月より公開された本作は、ついに興行収入10億円を突破。第96回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされ、受賞の行方にも期待が高まる。
L.Aの在ロサンゼルス日本国総領事公邸にて行われた記者会見には、日本から駆けつけたメディア、LA在住の記者など、多くの取材陣が詰めかけた。まず、ヴェンダース監督が、先日の日本アカデミー賞で、外国人監督初の監督賞を受賞したことの結果に触れ「小津安二郎監督を先生のように思っている私にとって、日本で監督賞を取れたことを非常に光栄に思っています。ありがとうございます」と挨拶をし、いよいよ明日となる米アカデミー賞®について聞かれると「もし、明日何かを取れるとしたら、ケーキの飾りのような、ボーナスだと思います」と謙虚に答え会場を和ませた。
「世界中から注目される米アカデミー賞に出席する今の気持ちは?」と問われた主演の役所は「有名な歌手の方のパフォーマンスや、受賞者がその世界の情勢に合わせていろんなスピーチをされるので、とても興味があります。そして、やっぱり今までスクリーンで見てきた人たちを実際に見ることができるのが楽しみですね!」と笑顔で語った。話しかけたい人はいますか?という質問に対し、「ノミネートされた人たちのパーティー(ノミニーランチョン)で、いろんな人を紹介していただいて、結構お会いしたかった人には会えたんです。有名な方達とのセルフィーをたくさん撮りました」と想いを叶えたことを明かした。
質疑応答は以下のとおり。
——カンヌでは、ヴェンダース監督が「平山さん(役所広司が演じた本作の主人公)との旅は非常に楽しみだ」ということを言っていた。(昨年の5月から日本公開をへて)ここまでの旅を振り返っていかがでしょうか?
ヴェンダース「今までのこの道のりは、私の人生を変えたと言ってもいいと思います。この撮影期間だけでなく、 実際の編集の期間中もほぼ毎日平山の姿を見て、役所さんが完全に平山になりきる姿を見てきました。今でもたまに役所さんのことを、間違えて平山と呼んでしまうくらいです。
そして、後ろにいらっしゃる(共同脚本の)高崎さん、非常に謙虚に後ろに立っていらっしゃいますけれども、 一緒に書いたこの脚本で、平山は本当に生きている人間のように私の人生にも影響を及ぼしてきました。というのは、例えば姪っ子とのシーンで“今度は今度、今は今”という言葉を聞きました。それは今の人生の中でも常に心に残っている言葉です。
そして撮影の前に、 一度平山が住むアパートに行った時に、物がたくさんあったんですね。美術スタッフが入れたものでした。けれどもそこで、「役所さん、平山になった役所さんにとって取り払った方がいいものはなんですか」と聞き、 ほぼ全てのものがそこで1度取り払われました。なので、その考え方、ものを無くすというより、家から出したりするということはすごく大事だと感じていて、自分の人生にもそれは言えます。 ということで、この作品は私に非常に大きく影響を及ぼした映画だと言えると思います」
役所「今まで映像で見ていた、アカデミーのレッドカーペットや授賞式に自分が行くっていうのはなかなか想像しにくくて、ちょっと緊張してますね。そして、先ほど、カンヌ国際映画祭から始まった監督との長い旅の話がでましたけど、一応明日で旅の最後かな、と思うとちょっと寂しいですね。やっぱり最後は、ケーキ?を美味しく食べたいな。と思っています」
麻生「私もこの映画は何度も見たんですけれども、本当に素晴らしい映画だと思います。人との繋がりや、 旅をするという文化など、それは本当に世界的に、普遍的に受け入れられるものだと思っています。もっともっとたくさんの人に見ていただきたい気持ちもあるので、ぜひ素晴らしい瞬間が起こるといいなと」
ヴェンダース監督「アメリカ人はよく、このアカデミー賞の前のいろんな行動のことを「レース」と呼んでいます。我々は今まで楽しんできたので、レースに関わっているようには感じていませんでしたが、これを馬に乗ってのレースと考えると、他の馬が先頭でリードしていることは確かではあると思います。しかし、我々の馬は非常にいい馬で大好きな馬です。なので、もしこの馬が勝たなくても、みなさん、よりこの馬を好きになってくれるのではないでしょうか」
——役所さんに平山について渡したというメモの中身について
ヴェンダース「平山というこの男が誰なのかということを私が知っておくために、確かに2ページのメモを書きました。もちろん 主演ですし、このキャラクターについては知っておいた方がいいと思ったので、それを翻訳してもらいました。そして、実際に役所さんが思い描いていたものにとても一致することがあり、そしてその中に1つ、とても重要なことが書いてあります。というのは、「木漏れ日」という、世界のどの文化もおそらく大事にしているものなのに、日本にしかその言葉がない、というこの現象についてと、平山との関係性についてです。その内容は明かしません(笑)」
役所「でも、本当にその監督の2枚のメモというのは、会話に書いてある以上のことが書いてあって、そのメモを貰ってからは、やっぱりちょっと、台本に書いていない部分も含めて、イメージが膨らんできたような感じがしました。とても大きな力です」
——アメリカは何回目ですか?
柄本「初めてです。アートを感じるというか、大きいなということをすごく感じました。来てよかったなというのが本当に1番です」
麻生「いろんなところに何度か来たことがあるんですけれども、L.Aだけはなぜかあまり行かなくて、今回 30年ぶりに2度目です。昨日の夜、役所さんに晩御飯をご馳走していただいたんですけれども、そこで他の役者さんがいらっしゃったりして、やっぱり映画の街なんだなという印象があります。もっとゆっくり歩いてみたいですね」
——本当のトイレの清掃員の方に、スカウトされたと聞きましたがそれは本当ですか?
役所「はい、毎回撮影に立ち会ってくれて、指導していただいた人から、明日からでもシフトに入れるといわれました」
ヴェンダース「柄本さんは、オファーされませんでした」
柄本「そうですね、僕にはなかった…!」
——海外で受け入れられた要因は
ヴェンダース「皆さんご存知の通り、この映画はトム・クルーズも出ませんし、アクション映画ではありません。スーパーヒーローではなく、本当の意味でのヒーローを描いた映画です。なので、この映画のこれだけの成功は私も驚きで、非常に心を動かされました。平山が本当に人々の心に届いたのだと思います。今まで私の夢を遥かに超えた結果を得ることができました。
そして、今までたくさんのメッセージや通信を通して本当に心を動かされたとファンの方々から聞いていますけれども、このような効果があったというのは、賞を取るよりもはるかに嬉しいことです。長編映画を撮りたいといったクレイジーなアイデアに同意をしてくれ撮らせてくれた柳井さん、そして、高崎さんのおかげで、素晴らしい脚本だけではなく、素晴らしいキャストに(役所さんと、麻生さんと、柄本さんを見て)出会うことができました。皆さんのおかげでここまで来ることができたのです」
旅の終わりとなる米アカデミー賞®授賞式を明日に控えている『PERFECT DAYS』チーム。ヴェンダース監督を中心にキャストとスタッフが、お互いの長い道のりを讃えあう、あたたかな雰囲気があふれる会見となった。
ノミニーレセプションでは、『PERFECT DAYS』のほか、視覚効果賞にノミネートされている『ゴジラ-1.0』、長編アニメ映画賞にノミネートの『君たちはどう生きるか』の代表とともに、写真撮影が行われた。
『PERFECT DAYS』は大ヒット公開中。
PERFECT DAYS
2023年12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
STORY
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬
製作:柳井康治
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンド
2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/スタンダード/124分/G
原題:『PERFECT DAYS』
邦題:『PERFECT DAYS』
© 2023 MASTER MIND Ltd.
公式サイト perfectdays-movie.jp
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