1961年に発刊されすぐに発禁処分となった小説『Filip』を映画化した衝撃作『フィリップ』が6月21日(金)より公開。このたび、映画監督の五十嵐匠、平山秀幸、古厩智之や、作家・演出家・俳優と多彩な活躍を広げる松尾スズキら著名人から絶賛コメントが到着した。あわせて主人公フィリップがその美貌を武器にドイツ人女性に復讐を果たす本編特別映像が解禁された。
本作は、第2次大戦、ナチス支配下のポーランド、そしてドイツを舞台に、ユダヤ人としての素性を隠して生きる美青年フィリップの愛と復讐の物語。1961年にポーランドで発刊後、その内容の過激さから、すぐ発禁処分になったポーランド人作家レオポルド・ティルマンドの実体験に基づく自伝的小説『Filip』(※日本未刊行)が基になっている。監督はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督作品のプロデューサーとして、後期代表作である『カティンの森』、『ワレサ 連帯の男』、そして遺作『残像』まで製作を務め上げたミハウ・クフィェチンスキ。
このたび本作をいち早く鑑賞した著名人から絶賛コメントが到着。『地雷を踏んだらサヨウナラ』『島守の塔』など、戦争と向き合う作品を多数手がける五十嵐匠(映画監督)は「戦争により静かに壊されてゆく“人間であること”」、『閉鎖病棟 それぞれの朝』で日本アカデミー賞優秀監督賞、優秀脚本賞受賞、『愛を乞うひと』など話題作を世に送り続ける平山秀幸(映画監督)は、「これは「自由と解放と、そして復讐」を求めた、新しいフィルム・ノワールだ」、『のぼる小寺さん』『さよならみどりちゃん』など、様々な視点で人間の姿を描き続ける古厩智之(映画監督)は「ひとの魂が形を結ぶことを許さない戦争。そんな日々の中でも喜びや悲しみを燃やす人間の愛おしさを描いた青春映画だった…。映画ぜんぶで「たしかに生きた」と言っている」とコメント。作家・演出家・俳優と多彩な活動を広げ続ける松尾スズキは「相手の女を寝取ることで復讐・・・・。滑稽だからこそ、悲しい。その愚かさと孤独を主人公は、独特すぎる目付きと沈黙で語り尽くす。エリック・クルム・ジュニア。すごい俳優を見た。」と感嘆した。著名人のコメント全文・一覧は以下のとおり。
あわせて解禁された本編映像は、主人公フィリップがドイツ人女性に復讐を果たすシーンを捉えたもの。自身の美貌を武器にプールサイドで夫が出征したドイツ人女性を誘惑したフィリップ。夫がいない寂しさを紛らわすために優しくしてもらおうとフィリップにすがったのも束の間「君の亭主はポーランドで死体になる」「子供はもう出来ない、これが最後の交わりになる」と、非道な言葉を投げつけられてしまう。その言葉に傷つき、警察を呼ぼうとする女性に対し「恥をかくのはそっちただ。髪を切られてな」と、畳みかけていく様子から、これまで自身が追ってきた傷を、さらに人を傷つけることで埋めようとする彼の壮絶な孤独が垣間見えるような映像となっている。
『フィリップ』は6月21日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開。
コメント一覧(※五十音順・敬称略)
戦争により静かに壊されてゆく“人間であること”。
次々と破壊されてゆく愛と友情。
そして、主人公フィリップがたどりついた衝撃のラスト!
現代、ウクライナ、シリア、パレスチナ、アフガニスタンから逃れた多くの難民たち。自国を捨て国外に生きる難民たちのどうしようもない深い苦悩が、ナチスドイツの時代を通して繊細に、そしてリアルに描かれ、観る者をたちまちその世界に引き込んでしまう。
五十嵐匠(映画監督)『地雷を踏んだらサヨウナラ』『島守の塔』
流麗でスリリングなカメラワークが素晴らしい。気品のある映像美が、常に感性を刺激してくれる。孤独と噓で塗り固めた主人公。強烈に引き込まれるのは、逆境の中でも朽ちない艶やかな生命感を見事に描いているからだ。
大谷健太郎(映画監督)『風の奏の君へ』『NANA』
狂気という言葉が生ぬるい物語とその時代背景に美女たちの肢体が踊り、悪魔となった男が復讐をこめて貪り尽くす。彼女たちの心をもっと知りたいが、男が容赦せずに蹂躙する地獄を美しく感じても良いのか?
金子修介(映画監督)『ゴールド・ボーイ』『信虎』
主人公の行為は正義なのか悪なのか、それとも背徳なのか。ホロコーストを舞台にしながら、ステレオタイプな倫理ではない善悪の彼岸と真実の愛を描いていて、あまりにも圧巻。打ちのめされました。
佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
フィリップの本心、偽らざる率直な「言葉」は、たった一人きりで過ごす夜の場面の数々にて、セリフを介さずして実に雄弁に語られているようだ。彼にとっては――故郷も何もかも失った彼にとっては――この「言葉」こそが、仲間の死を越え、ポーランド人そしてユダヤ人という枠組みを超えた、かけがえのない個人としてのアイデンティティをめぐる死に物狂いの闘いを生き抜くための、たった一つのよりどころとなったのだ。
田中洋(杏林大学外国語学部 准教授)
復讐心を燃やすフィリップがようやく、再び愛の温もりを得たと思えたのに──。戦争は何度でも人間を絶望に突き落とす。自分の心を消去したフィリップの衝撃の行動。表情を失った彼が、あの光景を見て噛み締めるものは何なのか?
あまりにもやるせないラストは落涙すら寄せつけない。厳しい内容だが、真実とはこういうことなのだろう。
谷口正晃(映画監督)『ミュジコフィリア』『時をかける少女』
ナチス支配下の、冷え冷えとした空気の中にたたずむ主人公の「哀しみ」の表情が忘れられない。
これは「自由と解放と、そして復讐」を求めた、新しいフィルム・ノワールだ
平山秀幸(映画監督)『閉鎖病棟 それぞれの朝』『愛を乞うひと』
ナチス・ドイツの占領地域だけではなく、そのお膝元にあっても、自由を求めた一人ひとりの抵抗があった。「君はこの腐った世の中に迎合していない。戦争が終わってもそれは大切なこと」という、フィリップがブランカを励ました言葉を心に留めておきたい。
藤森晶子(歴史研究家、『丸刈りにされた女たち』著者)
ドイツ人将校の妻たちを寝とるユダヤ人青年、なんて聞くと煽情的でピカレスクだけど。欲望があって友情があって、本当の恋を知って喪失があって。自分の輪郭が浮かび上がるかと思いきやそれを押しつぶす戦争があって…。ひとの魂が形を結ぶことを許さない戦争。そんな日々の中でも喜びや悲しみを燃やす人間の愛おしさを描いた青春映画だった…。映画ぜんぶで「たしかに生きた」と言っている
古厩智之(映画監督) 『のぼる小寺さん』『さよならみどりちゃん』
相手の女を寝取ることで復讐・・・・。滑稽だからこそ、悲しい。その愚かさと孤独を主人公は、独特すぎる目付きと沈黙で語り尽くす。
エリック・クルム・ジュニア。すごい俳優を見た。
松尾スズキ(作家・演出家・俳優)
フィリップ
2024年6月21日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
STORY
1941年、ワルシャワのゲットーで暮らすポーランド系ユダヤ人フィリップ(エリック・クルム・ジュニア)は、恋人サラとゲットーで開催された舞台でナチスによる銃撃に遭い、サラや家族、親戚を目の前で殺されてしまう。2年後、フィリップはフランクフルトにある高級ホテルのレストランでウェイターとして働いていた。自身をフランス人と名乗り、戦場に夫を送り出し孤独にしているナチス将校の妻たちを次々と誘惑することでナチスへの復讐を果たしていた。孤独と嘘で塗り固めた生活の中、プールサイドで知的な美しいドイツ人のリザ(カロリーネ・ハルティヒ)と出会い、愛し合うようになる。しかし戦争は容赦なく二人の間を引き裂いていく…。
監督|ミハウ・クフィェチンスキ 脚本|ミハウ・クフィェチンスキ, ミハル・マテキエヴィチ (レオポルド・ティルマンドの小説『Filip』に基づく)
出演:エリック・クルム・ジュニア、ヴィクトール・ムーテレ、カロリーネ・ハルティヒ、ゾーイ・シュトラウプ、ジョゼフ・アルタムーラ、トム・ファン・ケセル、ガブリエル・ラープ、ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ、サンドラ・ドルジマルスカ、ハンナ・スレジンスカ、マテウシュ・ジェジニチャク、フィリップ・ギンシュ、ニコラス・プシュゴダ
撮影|ミハル・ソボチンスキ 美術|カタジーナ・ソバンスカ,マルセル・スラヴィンスキ 衣装|マグダレナ・ビェドジツカ, ユスティナ・ストラーズ
メイクアップ|ダリウス・クリシャク 音楽|ロボット・コック プロデューサー|ポーランド・テレビSA
配給:彩プロ |原題:Filip | 2022 | ポーランド | ポーランド語、ドイツ語、フランス語、イディッシュ語 | 1: 2| 124分 | 字幕翻訳:岡田壮平 | R-15+ 後援|ポーランド広報文化センター
©TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022
この記事が気に入ったらフォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow WEEKEND CINEMA