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『熱帯魚』『1秒先の彼女』で知られるチェン・ユーシュン監督の最新作であり、第62回金馬奨にて最優秀作品賞を含む最多4冠受賞を果たした映画『霧のごとく』が5月8日(金)より全国公開。このたび、チェン・ユーシュン監督が日本の観客に向けたメッセージ映像が到着した。さらに、チェン・ユーシュン監督が本作制作の裏側を語ったインタビューが公開された。

今回到着したメッセージ映像で監督は、1950年代の台湾・台北を舞台にした本作の制作背景について語っている。近年あまり描かれることのなかった時代の再現は「大きな挑戦でした」と振り返る。

さらに監督は本作について、「切なく重い物語ではありますが、その中にもユーモアや人間の温かさがあります」と説明。また、キャスト・スタッフの多くが若い世代であったことから、時代性の再現に加え、言語面でのアプローチにも注力。台湾語や各地域の方言、アクセントの違いを再現するため、出演者には数か月に及ぶトレーニングが行われたという。本作の男性主人公である趙公道役のウィル・オーについても、香港出身でありながら当時の広東語の発音を習得するためのトレーニングを実施したことが明かされている。

チェン・ユーシュン監督は日本の観客に向けて「日本の皆さんは台湾に親しみを感じていると思いますし、70〜80年前の台湾にも興味を持っていただけるかと」とコメント。加えて「本作を日本の皆さんにお届けでき、光栄に思います」と語り、続けて「私の過去作品をご覧になっている方には、これまでの作品との違いも感じていただけると思います」とメッセージを寄せた。

あわせてチェン・ユーシュン監督のインタビューも到着。白色テロをテーマとした本作制作のきっかけから、台湾映画の現在について語る必読の内容となっている。インタビューは以下のとおり。

チェン・ユーシュン監督 インタビュー

――かつては、白色テロを撮ることがあると思っていなかったそうですね。本作を撮ろうと思ったきっかけは?

『1秒先の彼女』が終わって時間ができ、年老いた両親と過ごす時間が増えました。父母の昔話を聞くうちに、その時代の出来事が気になってネット検索をすると、白色テロに関する衝撃的な記事が次々と出てきました。二・二八事件や白色テロがあったことは、多くの台湾人と同じように「なんとなく」知ってはいましたが、深く調べたことはなかった。ところが関心を持ち始めると、関連記事が勝手にパソコンに現れたり、図書館でもすぐ関連本が見つかったり、友人がその分野の専門家を紹介してくれるなど人脈も広がっていきました。いま振り返ると、なにか神秘的な力に導かれていたように思えます。

制作が始まってからも、不思議な出来事がありました。美術スタッフなどが入ってきて元のスタッフルームが手狭になったので、プロデューサーがより広いオフィスを探してくれました。でも、その新しいスタッフルームに入った瞬間から体調がすぐれず、とにかくイライラして気分が悪い。「何か変だ」と思って外に出ると、その違和感はすっと消えました。

――もともと「敏感」な体質ですか?

そんなことはなく、あの日、あの場所だけ強烈な違和感があったんです。新しいオフィスは(台北市内の)青島東路(チンダオドンルー)にあったのですが、思い当たることがあって、かつての「軍法処」(白色テロ期に人々が連行され、拷問を含めた取り調べや判決が行われた)の住所を調べたんです。軍法処とオフィスの住所が完全に一致したのを確認した瞬間、ゾッとしました。すぐプロデューサーに話して、みんなで「拜拜(パイパイ)」(伝統的な法要の儀式)をしたらようやく落ち着いて。それ以降は、撮影中も天気に恵まれ本当に順調で、公開までずっと「何かに守られている」と感じました。見えない大きな力がこの物語を撮らせてくれた、そんな感覚がずっとありますね。

――歴史と人生が絡みあった複雑な人物造形は、実在の人物や資料に基づいていますか。

特定の実在するひとりの人物をそのまま写したわけでなく、それぞれ「ある集団」を代表する存在として描いています。たとえば趙公道は、「老兵」(国民党軍退役兵)というグループを代表しているし、二雄や范春といった特務側にも異なる代表性があります。

――台湾の映画界全体の流れについては、どう見ていますか。

最近は映画祭に行っても自分が最年長だったりして、少し気まずいですが(笑)、台湾監督協会の理事長職も先週ようやく退いて、後任の林孝謙(リン・シャオチエン)監督に引き継ぎました。若い世代の監督たちは、私の世代よりしがらみが少ないし、健全ですよ。最近では『功夫』(監督:ギデンズ・コー)も『ダブル・ハピネス』(監督:許承傑)も素晴らしかった。一般の観客やマーケットのことも考えつつ、完成度も高いです。『陽光女子合唱団』、『角頭』、『96分』、『泥娃娃:呪いの人形』など、ジャンルも多様で興行的にも成功しています。ここ最近、台湾映画は全体的にすごく元気ですし、今後もどんどん良い作品が出てくると思います。

――最後に、日本の観客へひと言。

これは私にとって初めて、実際の歴史にかなり近い物語を撮った作品です。でも、重いだけ、苦しいだけの映画ではありません。笑いも涙もあり、一つの時代に没入できる映画になっています。観終わったあとも、その世界の中にしばらく留まってしまうような感覚を、日本の皆さんにも感じていただければ嬉しいです。

オフィシャルインタビュー:取材・構成・執筆:栖来ひかり(2026年3月9日台北市内)

まとめ(注目ポイント)

  • 映画『霧のごとく』5月8日(金)より全国順次公開第62回金馬奨にて最優秀作品賞を含む最多4冠を受賞した、チェン・ユーシュン監督の最新作。
  • チェン・ユーシュン監督による日本の観客へのメッセージ1950年代の台湾を舞台にした本作の制作背景や、言語面でのアプローチについて語る特別映像が到着。
  • 白色テロ期を背景にした制作の裏側を語るインタビュー撮影時の不思議な体験や、実在の集団をモデルにした人物造形など、制作秘話を語る必読の内容。
作品情報

霧のごとく
2026年5月8日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、Strangerほか全国順次公開

STORY
1950年代、戒厳令下の台湾。白色テロにより反政府分子として捕らえられた兄が台北で処刑されたと知った少女・阿月(アグエー)は、故郷の嘉義から、なけなしの金と兄の形見の時計を手に、遺体を引き取るため一人台北へ向かう。しかし遺体を引き取るには高額な手数料が必要で、途方に暮れてしまう。怪しい男に騙され、遊郭に売り飛ばされそうになったその時、彼女を救ったのは人力車の車夫・趙公道(ザオ・ゴンダオ)だった。中国・広東出身の公道は、国民党軍の元軍人として台湾に渡って以来、故郷へ帰ることもかなわず、その日暮らしの生活を送っている。白色テロで軍の仲間を喪い、人生に行き場を見いだせずにいた彼は、阿月の想いに心を動かされ、手を差し伸べることを決意する。先の見えない時代の激流の中で出会った二人の運命が大きく動き出していく……。

監督・脚本:チェン・ユーシュン
キャスト:ケイトリン・ファン、ウィル・オー、9m88、ツェン・ジンホア、リウ・グァンティン、ビビアン・ソン

2025年│134分│台湾│原題:大濛│カラー│配給:JAIHO/Stranger

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公式サイト https://www.afoggytale.com

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