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19世紀フランスを代表する文豪、オノレ・ド・バルザックの原作を豪華キャストで映画化した『幻滅』が現在好評公開中。このたび、ヴァンサン・ラコスト演じるジャーナリストが、現代にも通じるメディアの裏側を明かすシーンの本編映像が解禁された。

「俺の仕事は株主を裕福にすること。金を巻き上げながらね」

文豪オノレ・ド・バルザックが44歳で書き上げた「人間喜劇」の一編『幻滅̶メディア戦記』を『偉大なるマルグリット』(2015)のグザヴィエ・ジャノリ監督が映画化した本作は、セザール賞において作品賞他、最優秀助演男優賞(ヴァンサン・ラコスト)、有望新人男優賞(バンジャマン・ヴォワザン)を含む最多7冠を受賞しフランス映画界を席巻。200年も前の物語とは思えないほど現代と酷似したメディアの状況を鋭利に描く社会派人間ドラマだ。

主演のリュシアンを演じたのは、フランソワ・オゾンの『Summer of 85』で日本でも大きな注目を浴びたバンジャマン・ヴォワザン。オゾン作品とは打って変わり、初のコスチューム劇で、純粋な青年が野心と欲望に惑わされ堕落していく過程を見事に演じきった。また、リュシアンの先輩格として彼を教育していくジャーナリストを演じるのは、『アマンダと僕』のヴァンサン・ラコスト。

このたび解禁された本編映像は、ヴァンサン・ラコストが演じる打算的なジャーナリストのエティエンヌが、詩人としての成功を夢見る純朴な青年リュシアン(バンジャマン・ヴォワザン)にメディアの裏側を明かすシーン。

文学を愛する田舎の純朴な青年リュシアンは、彼を熱烈に愛する貴族の人妻ルイーズと駆け落ち同然に憧れのパリに上京するが、宿に置いていた貯金を盗まれてしまう。切羽詰まったリュシアンは、カルチェラタンにあるビストロでなんとか給仕の仕事を見つける。そして店の常連であるジャーナリスト、エティエンヌに、ある日意を決して自分を売り込む。

芸術を批評する仕事に憧れるリュシアンにエティエンヌは、「俺の仕事は株主を裕福にすること。金を巻き上げながらね」と悪びれずに告げる。続けて「ある劇場に称賛記事を売りつけ、その競争相手に話をもちかけ値段をつりあげて、新聞と名前を使い分け、称賛し酷評する。その繰り返しで巻き上げていくのさ」とからくりを明かす。

憧れているメディアの世界の現実に驚きの表情を浮かべるリュシアン。現代でいうフェイクニュースやステルスマーケティングがこの時代から横行していた事実が明らかになる映像となっている。

放送大学教授の野崎歓は、当時マスコミの世界でしのぎを削るジャーナリズム関係者たちについて「パリが十九世紀ヨーロッパの首都と称されるほどの活況を呈したのは、そこが地方からやってきた若者たちにがむしゃらな“やる気”を抱かせる場所だったからこそだろう。逆に言えばパリは、ひたむきに明日を夢見るうぶな若者たちをむさぼり喰らうことで巨大都市へと変貌していったのだ」と分析する。

若きバルザック自身も田舎からパリに出てきて作家を目指しながらもなかなか成功できない時代があり、当時成長期を迎えていたジャーナリズムでのライター稼業で身をすり減らしたという。「その経験を彼はそっくりリュシアンに託し、打算と偽りに満ちた活字メディアの舞台裏をこれでもかと描き出したのである。映画だけ見ると、グロテスクな誇張が過ぎるのではないかと思われるかもしれない。だがそれぞれの細部は原作におけるバルザックの克明な描写に忠実である」と、原作ファンも納得の出来になっていると太鼓判を押す。

本作のメガホンを取ったグザヴィエ・ジャノリ監督は、「時代が移り変わっていくスピードなど、ダイナミックなムーブメントを生み出しながら、登場する人々の人生、悲劇と喜劇を結びつけたい」と風刺に富んだ、極上のエンターテインメントを生み出した。

『幻滅』はヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開中。

作品情報

幻滅
2023年4月14日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開

STORY
19世紀前半。恐怖政治の時代が終わり、フランスは宮廷貴族が復活し、自由と享楽的な生活を謳歌していた。文学を愛し、詩人として成功を夢見る田舎の純朴な青年リュシアンは、憧れのパリに、彼を熱烈に愛する貴族の人妻、ルイーズと駆け落ち同然に上京する。だが、世間知らずで無作法な彼は、社交界で笑い者にされる。生活のためになんとか手にした新聞記者の仕事において、恥も外聞もなく金のために魂を売る同僚たちに感化され、当初の目的を忘れ欲と虚飾と快楽にまみれた世界に身を投じていくが…。

脚本:グザヴィエ・ジャノリ
撮影:クリストフ・ボーカルヌ – AFC SBC 編集:シリル・ナカシュ 美術:リトン・デュピール=クレモン – ADC
キャスト:バンジャマン・ヴォワザン、セシル・ドゥ・フランス、ヴァンサン・ラコスト、グザヴィエ・ドラン
2022年/フランス映画/フランス語/149分/カラー/5.1chデジタル/スコープサイズ/原題:Illusions perdues

字幕:手束紀子 配給:ハーク 配給協力:FLICKK  R-15

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