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持ち運び可能な卵型の「ポッド」で赤ちゃんを育てるカップルを描いたSFラブコメディ『ポッド・ジェネレーション』が12月1日(金)より全国公開されるのに先立ち、映画監督の長久允とアートディレクター/料理家のurara夫妻をゲストに迎えて11月22日(水)にトーク付き特別試写会が実施された。

「劇中のカップルが経験したパートナーシップの変化の仕方にすごく共感しました」

本作は、AIが発達した近未来のニューヨークを舞台に、持ち運び可能な卵型の「ポッド」で赤ちゃんを育てることを選択したあるカップルの変化を描いた物語。ハイテク企業に勤めるレイチェルは、新しい出産の方法を提案する最新テクノロジーに心惹かれる。一方、自然界の多様性を守ろうと日々奮闘している植物学者のアルヴィーは、自然な妊娠を望む。そんな二人が「ポッド妊娠」を選択し、出産までの10ヶ月間でどのような「新時代の育児」と向き合うのかを、優しく、時にコミカルに描く。『ゲーム・オブ・スローンズ』のエミリア・クラークが主演を務め、製作総指揮としても参加している。

「新しい映画体験のカタチ」を楽しむイベントとして本作のトーク付き特別試写会が行われた会場は、“街の小さな映画館”として親しまれている東京・代官山にある「シアターギルド」。観客がそれぞれヘッドフォンを付けて、好きな場所で好きな姿勢で映画に没入できる環境が整っており、ゆったりとした落ち着いた雰囲気の中で上映がスタートした。

上映後、11月22日=いい夫婦の日にピッタリなゲストとして映画監督の長久允とアートディレクターであり料理家のurara夫妻が登場。まず映画の感想を聞かれると、uraraは「みんな観た方が良い教科書みたいな映画だと思いました。日本でタブー視されている性教育のことや、妊娠・出産におけること、日本はとても遅れているんですけど、まずこの作品を見てみんなに考えてほしい。大人から子供まで、小学生が見ても良い素晴らしい映画だなというのが私の感想です」と、普段アートディレクターや料理家としてだけでなく、“SRHR”(セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)=“性と生殖に関する健康と権利”についても活動している視点からコメント。

長久は「映画を見終わった後に、夫婦で時間をかけて議論しました。映画を機能的な側面だけで捉えてはダメですが、社会に対して問題提起ができる一つの方法ではあると思うので、その側面ですごく存在意義があると感じます」と、鑑賞後に様々なことを話すことができる作品だと位置づけした。そして、自身も作品を手掛ける物語作家として「めちゃくちゃシンプルな設定なんですが、男女に対して妊娠というものをフラットに、平等と言っても良いくらいの設定を作り上げている、素晴らしいアイディアだなと思います」と、本作の物語の描かれ方がフラットな視点を貫いていると語った。

映画に登場する卵型の「ポッド」が妊娠や出産において男女平等になる技術として描かれているが、uraraは会場に用意された実際に撮影で使われたポッドを見ながら「世代的にたまごっちにときめいたり、iPodやiPhoneにときめいてきた世代なので、きゅんとくる感じがありました」と、そのフォルムに惹かれた様子。

長久は「私たちには子供が二人いるんですが、(自分は)出産(を経験)していないけど、出産したい思いはあったので、男性として出産に参加できるというテクノロジー自体には羨ましさを感じました」とまさかの出産を経験したいという思いに会場から驚きの声が。「妻は出産を経験しているので、子供に対するアプローチや責任が優位であるというか。そういう意味で僕も負担したかった」と出産において対等でありたいと話すと、すかさずuraraが「私は逆にポッドを絶対使いたくないと思いました。子供を二人産んで痛くて大変だった分、夫より私の方が家の中で偉いと思っているんです。ポッドはいらないから私を一番でいさせてほしい(笑)」と夫婦の関係性に触れながら、ポッドに対するそれぞれの考え方を明かした。

本作には、ポッド以外にも、街なかで休める“自然ポッド”や生活をサポートするAIテクノロジーが登場するが、実際に利用してみたいものを聞かれ、「全然使いたくない(笑)」とuraraが即答すると会場からは笑いが起こった。ただ妊娠・出産において“SRHR”の観点から、「自然で産むか、無痛で産むか、助産院で産むか、自宅で産むか、など選択肢を知ったうえで選ぶというのが大事」と選択肢の一つとしてポッド妊娠があれば救われる女性もいるのではないかと言及した。

そして、本作の魅力の一つでもあるパステルカラーを基調とした統一感のあるビジュアルについて、長久は「美術のコントロールがしっかりされていて、低予算で作られたと思いますが、日本とは比にならないくらい予算がかけられているんだなと羨ましかったです」と作り手としての羨ましさを吐露した。そのように一からモノを作られる環境の中で「QRコードを使用したり、iPhoneみたいなもので通話したり、現代にあるものをそのまま活かしているものがありますよね。おそらく予算を考えるとデバイスの形状から作り直せたと思うのですが、現実と地続きのものを採用しているというのは意図があって、15年後くらいの地続きの未来を意識して残そうとプランニングしたのではと感じました」と興味深かった点を挙げた。

また、主人公カップルである、ハイテク企業に勤めるレイチェル(エミリア・クラーク)がテクノロジー派、植物学者であるアルヴィー(キウェテル・イジョフォー)が自然派、という対立した関係性が描かれていることに話が及ぶと、uraraは「(レイチェルは)効率性を評価されることが快感になっている。彼女の出世したいという欲が止められなくなっているというのが面白いなと。今の社会だと男性の方がその傾向が強いと思いますが、劇中では女性でそれを描いているところも面白いなと思いました」と語り、長久も「やっぱり現状の比率としてストレートに描くと、逆で描くのがわかりやすいと思うのですが、意図して男性を自然派に、女性をテクノロジー/労働優先派にしているんだなと思います。そこにジェンダーにとらわれない問題定義がありますよね。」とソフィー・バーセス監督のジェンダーの描き方について語った。

本作は夫婦の関係性もテーマになっているが、レイチェルとアルヴィーが妊娠の方法について話し合い、お互いの考えを理解しようと歩み寄るところに、長久は「僕らもそれぞれ思想が強い方なので、元々はお互い別々の道を見ていましたが、妊娠・出産・育児を通して一つのチームとして、考えや哲学や生き方をすり合わせて、今ここにたどり着いているんですよね。その経験と、劇中のカップルが経験したパートナーシップの変化の仕方にすごく共感しました」と明かす。

続いてuraraも「子育ては二人の価値観をすり合わせることだなと思うんです。その価値観は決めたらずっと同じということではなくて、子供の成長と共にアップデートしなくちゃいけない。(レイチェルとアルヴィーの)二人と同じ気持ちだなと思って映画を見ていました」とレイチェルとアルヴィーのスタンスに共感したようだった。

最後に二人が挨拶。長久は「こんな風に誰かと話すのがこの映画の面白い楽しみ方だと思うんですよね。これが正解なのかどうか、正解はないんじゃないだろうかと楽しんでもらえたら良いと思います」、uraraは「この映画をきっかけに議論がいっぱい生まれると良いなと思います。世界を変えるのは誰かとのお喋りから始まると思ってるので!」と締めくくりイベントは終了した。

『ポッド・ジェネレーション』は12月1日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ホワイトシネクイントほか全国公開。

作品情報

ポッド・ジェネレーション
2023年12月1日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ホワイトシネクイントほか全国公開

監督:ソフィー・バーセス 『ボヴァリー夫人』(16)
主演・製作総指揮:エミリア・クラーク 『ラストクリスマス』(19)、「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズ(13-19)
出演:キウェテル・イジョフォー 『それでも夜は明ける』(14)

111分/ベルギー、フランス、イギリス合作/シネマスコープ/2022年/英語/カラー/原題The Pod Generation/字幕翻訳:安本熙生/G

提供:A M Gエンタテインメント、パルコ
配給:パルコ 宣伝:スキップ

© 2023 YZE – SCOPE PICTURES – POD GENERATION

公式サイト pod-generation.jp

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