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ヴィム・ヴェンダースが出演・ナレーションを担当しながら劇場未公開作品となっていた幻のアートフィルム『ドリーム・アイランド ーヴィム・ヴェンダースの失われた夢』をデジタルリマスターし世界へ届けるプロジェクトが発足され、本日3月17日(月)9時よりクラウドファンディングが開始された。

PERFECT DAYS』まで連なるヴェンダースの“夢の表現”の原点

本作はヴィム・ヴェンダース本人が「一番好きな作品」(※高松宮世界文化賞ホームページより)と語った映画『夢の涯てまでも』(1991)のために制作された“夢のシークエンス”がきっかけとなり、東京を舞台に実写ドラマとして作られた幻の未公開アートフィルム。

『夢の涯てまでも』で使用されなかった約100分間の“夢のシークエンス”の中から、厳選したシーンをヴェンダース自らが編集し、自身が12歳の時に撮った8mmフィルムも使用されている。この“夢のシークエンス”からは、後に“エレクトロニク・ペインティング”と呼ばれる当時最先端のメディアを駆使した平面作品が生まれた。ヴェンダースを語る上では外せない表現手法のひとつだ。また、ヴェンダース自らが出演・ナレーションを務めているという点でも貴重な作品と言える。

しかし、この作品は『夢の涯てまでも』のレーザーディスク版(1993年発売)の特典映像として収録されたのみで、現代では観る術がなく、長い間、関係者やヴェンダースファンの間で幻の作品とされていた。

2020年1月7日、ヴェンダースから『夢の涯てまでも』のアソシエイト・プロデューサーの御影雅良に一通のメールが届く。「30年が過ぎ去った。以来、私は再び『ドリーム・アイランド』を見ることができなかった。私は何ひとつコピーを持っていない…ところで、『夢の涯てまでも』のディレクターズカット版ブルーレイを送ってあげましょうか? ついに30年後にやっと私が意図したかたちの映画をリリースできました。 — ヴィム・ヴェンダース」。

そこで御影は『ドリーム・アイランド』のコピー(VHS)をヴェンダースに送った。ヴェンダースが笑顔で朗らかに東京を歩いているシーンが随所に映し出されている本作。きっとヴェンダースにとって、この作品を撮影した東京での日々はかけがえのない時間だったのではないだろうか。 

時が経ち、ヴィム・ヴェンダース監督は東京を舞台にした『PERFECT DAYS』の撮影に着手。世界中で大絶賛されたことが記憶に新しい。そんな折、一人の女性が御影にアプローチした。今回のプロジェクトの共同代表となる仲田早織、『ドリーム・アイランド』の撮影監督をした故・仲田能也の娘だ。『PERFECT DAYS』に映し出される東京の下町を観ていて、幼い頃に何度も父と観ていた『ドリーム・アイランド』を思い出し、もう一度本作が観られないか相談をするため、急遽、東京都写真美術館で実施された『夢の涯てまでも』ディレクターズ・カット4Kレストア版上映のイベントに登壇する御影を突撃訪問した。

亡き父がどんな気持ちで本作へ向き合っていたのか、そしてヴェンダースの“夢”とは――?そこから紆余曲折を経て、まさに失われていたと思われていた本作のオリジナルテープや16mmフィルムを執念で見つけ出す…。そしてこのプロジェクトを発足した。今回、共同代表の仲田早織からのメッセージも公開された。

『ドリーム・アイランド』デジタルリマスター製作委員会
共同代表 仲田早織 メッセージ

私の父は『ドリーム・アイランド』の撮影監督をした仲田能也です。私がまだ幼い頃、父は毎晩のようにこの作品を観ていました。その鑑賞タイムに何度も付き合わされていた私は「この不思議な映像はなんなのだろう?」と思ったのを覚えています。父はフィルム時代に生きてきた人間で、フィルムとデジタルの転換期に踠き、この作品から何かを導き出そうとしていたのかもしれません。残念ながら父は2013年に66歳で亡くなりました。

時は流れ2023年。ヴェンダースは再び、東京を舞台にした『PERFECT DAYS』を発表します。公開を待ち侘びていた私は、『PERFECT DAYS』に映し出される東京の下町のシーンを観て、あの時観ていた『ドリーム・アイランド』を思い出しました。そして、象徴的に描かれている夢のシーンを観て、ヴェンダースが「夢」をどように捉えているのか気になって仕方がなくなりました。さらに『ドリーム・アイランド』ではどのように「夢」が描かれていたのか、そして今は亡き父がどのような気持ちで『ドリーム・アイランド』と向き合っていたのかを知りたくなったのです。

しかし手元にはメルカリで手に入れたレーザーディスクしかなく、『ドリーム・アイランド』を観る術がありません。よく父からお名前を聞いていた「御影さん」なら、この作品のデータを持っているのではないかと思い、御影さんのお名前をネットで検索すると、東京都写真美術館で5時間版の『夢の涯てまでも』(ディレクターズ・ カット)が上映され、御影さんがトークイベントをされるという情報が目に飛び込んできました。私はこれしかない!と思い、御影さんに会いにいきます。

御影さんは私の突然の訪問にとても驚き、私が父によく似ていると喜んでくださいました。『ドリーム・アイランド』が観たい!と相談したところ、「VHSをヴェンダースに貸してしまったから、他にデータがあるか分からないが自宅を探してみるよ」と言ってくださり、その日は連絡先を交換して別れました。その後、御影さんから「DVDのコピーが見つかった!」と連絡があり、同時期に中目黒のN&A Art SITEで開催されていた「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし」展で再会。DVDのコピーを貸してもらうことができました。

30年ぶりに観た『ドリーム・アイランド』は衝撃的にアーティスティックで、ヴェンダースを知る上でとても貴重な作品であると共に、ヴェンダースが思い入れのある東京で生まれた私たちが後世に残し、世界に発信しなければならない作品であると確信しました。そして、父が切り取った映像を観て、久しぶりに父を近くに感じ、やはり当時の父の気持ちに触れたくなりました。そのためにもヴェンダースに会って、撮影当時の父や、家族のこと、そしてどのようにしてこの作品に向き合っていたのかを聞くことが私の夢です。

「あなたにとって夢とは何ですか?」

その後、私と御影さんは何度も話し合いを重ね【『ドリーム・アイランド』デジタルリマスター製作委員会】を立ち上げました。幸いなことに、失われたとされていたハイビジョンのオリジナルテープと16ミリフィルムを天王州の倉庫で発見することが出来ました。映像素材は全部で34本(HDTV1インチ、D1、D2テープ、16ミリフィルム)。保存状態は良好でしたが、ハイビジョンの1インチテープは劣化もしやすく、レーザーディスク同様、デジタイズしなければ観ることも編集することもできないことが判明しました。デジタイズには費用がかかります。しかし、デジタル映像黎明期の実験的な表現が隠されたこの作品を、過去のものとして葬り去ってしまうわけにはいきません。

是非、皆様にもこの幻のアートフィルムを体験して頂きたく、ファンディングにご協力いただけないでしょうか。クラウドファンディングが成功した暁には、どのようにして『ドリーム・アイランド』が制作されたのかを探るドキュメンタリーを制作予定です。また、海外の映画祭への出品にもチャンレンジしたいと思っています。

クラウドファンディング概略ページURL

https://motion-gallery.net/projects/DreamIsland

『ドリーム・アイランド ーヴィム・ヴェンダースの失われた夢』

1991年制作 60分 スーパー16mm/ハイビジョン映画作品
原題: Dream Island― The Lost Dreams of Wim Wenders
©2025 Dream Island Association

プロデューサー: ヴィム・ヴェンダース マサ・ミカゲ
監督:ショーン・ノートン 撮影:仲田能也 出演・ナレーション・「夢」の制作:ヴィム・ヴェンダース
音楽:ニック・ウッド オスカー・デリック・ブラウン 主なキャスト:スー・ダック・リー フミコ・オブセ 仲田英樹  仲田大記

STORY
恋人を失った女性(ふみ)が見ている東京は、彼女だけの空間。彼女にとっては、今一番大切なのは想い。そして、東京の新宿公園に毎日のように出かけ、街中の音をDATで拾い集めている男(ダットマン)にとっては、音の方が良く見える。だから、彼の見る空間はとても絵的。子供の目は、大人たちが見る見方とは常に異なっている。夢だって違う。純粋な気持ちを忘れるように大人たちは、いつからか「モノ」にこだわっていく。「モノ」は、いつかはクズになる。しかし、イメージはどうだろうと、観察者(ウォッチャー)と名乗る男(ヴイム・ヴェンダース)は問いかける。東京の子供たちの笑い声は、さまざまな夢の空間から私たちを解き放ち、目覚めさせてくれる。少年(大ちゃん)は、そんな大人たちの思考経路に関係なく、どこかで全員と巡り合って、その人生の中の一時に関与しているのだ。夢の島を、一緒になって歩いているのだ…。

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