1975年、『アダプション/ある母と娘の記録』で女性監督として初めてベルリン国際映画祭の最高賞(金熊賞)を受賞し、アニエス・ヴァルダ、アンナ・カリーナ、イザベル・ユペールら錚々たる映画人らからも熱い注目を集めるメーサーロシュ・マールタ。2023年に開催され好評を博した第一弾特集上映に続き、日本で劇場初公開となる全7作品を新たにレストア/HDデジタルリマスターした珠玉の作品群を一挙上映する「メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章」が11月14日(金)より開催。このたび、本特集上映7作品それぞれのモノローグ付キービジュアルおよび入門予告映像、そして枝優花、ゆっきゅんら著名人からのコメントが解禁された。
今回解禁されるのは「メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章」で上映される、日本劇場初公開の全7作品のモノローグ付キービジュアルと入門予告映像。

「モノローグポスター」は7作品それぞれのビジュアルに、物語の核心をそっと語りかけるような一言が添えられ、登場人物たちの心の奥に息づく想いへと静かに誘うとして完成。第1作『日記 子供たちへ』(第37回カンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリ受賞)をはじめ、冷戦下の恐怖政治を生き抜いたメーサーロシュ自身の記憶が刻まれたパーソナルな叙事詩“『日記』三部作”からは、監督の分身ともいえるユリの繊細な感情が、静かな光の中に滲み出るように捉えられている。



孤児として育った女性が両親を追い求めるデビュー作『エルジ』では、どこか儚げでありながらも、未来をまっすぐに見据えるエルジの横顔が印象的に切り取られる。

血のつながらない男と少女の間に芽生える、親子のようでいて言葉にできない親密さを描いた『ジャスト・ライク・アット・ホーム』では、無邪気に笑い合う二人の姿の傍らで、アンナ・カリーナ演じる女性アンナの物憂げなまなざしが、ひときわ深い余韻を残す。

さらに、階級格差が男女の結びつきを蝕む『リダンス』では、工場で働きながらも「夢」を見つづけるユトゥカの凛とした横顔が映し出される。

中年期の孤独と再生をシスターフッドの視点から描いた『月が沈むとき』では、エディトの沈黙の表情が、彼女を取り巻く人々の眼差しとともに、静かに胸に迫るものに。

あわせて解禁された入門予告映像は、7つの作品それぞれのテーマを鮮やかに掬い取り、エッセンスを凝縮した魅惑的な映像に。時代や国境を越えてもなお変わることのない、女性たちの痛み、迷い、そして生きる力がスクリーンの奥から静かに滲み出し、メーサーロシュ作品の核心にある“人間の強さと優しさ”を浮かび上がらせており、どの作品から観るべきか迷う人にも、そしてこれから彼女の映画世界に足を踏み入れる人にも、最初の一歩としてふさわしい—そんな“マールタ・ワールド”の魅力を凝縮した入門映像となっている。
本特集上映で公開される作品それぞれに寄せられた著名人からのコメントも到着。『エルジ』には、枝優花(映画監督・脚本・写真家)が「自分にかけている呪いをといてほしい。誰かや何かに縋らなくてもただそこにいるだけで自分は魅力的なのだと。自分で生きることはわがままなのではない。自分こそがこの世界の光なんだと」、『月が沈むとき』には四方田犬彦(比較文学・映画誌研究)が「月が消えたとき、月の暈はどこへ行けばよいのか。アントニオーニの『赤い砂漠』の4年後に撮られたこのフィルムは、女性の不安と苛立ちを、その根源において見つめている」、『リダンス』にはゆっきゅん(DIVA)が「工場で働くユトゥカは大学生と恋をして階級差に直面する。職場の騒がしい音が涙をかき消すように響く。労働の音、毎日の音。あなたに聞こえることがない私の大切な音」、『ジャスト・ライク・アット・ホーム』には児玉美月(映画批評家)が「果たしてこの世界に自分の居場所はあるのか?『ジャスト・ライク・アット・ホーム』は、定住の“家”を持たぬ根無草のように生きる者たちに捧げられた珠玉の一本」、『日記』三部作には斉藤綾子(明治大学文学部芸術学科 教授)が「メーサーロシュ・マールタの映画を理解する三つの要素。それは女性、ハンガリー、ファミリー・メロドラマだ。この三つが交差して壮大な物語を作り上げたのが彼女の代表作「日記」三部作だ。そこには作家の総てが凝縮され、眩暈のように私たちを歴史の只中に誘い込む稀有な映画体験が待っている」とそれぞれの想いを寄せている。コメント全文・一覧は以下のとおり。
著名人コメント全文 ※作品制作年順※敬称略
『エルジ』1968年
自分にかけている呪いをといてほしい。
誰かや何かに縋らなくても
ただそこにいるだけで自分は魅力的なのだと。
自分で生きることはわがままなのではない。
自分こそがこの世界の光なんだと。
枝優花(映画監督・脚本・写真家)
『月が沈むとき』1968年
月が消えたとき、月の暈はどこへ行けばよいのか。アントニオーニの『赤い砂漠』の4年後に撮られたこのフィルムは、女性の不安と苛立ちを、その根源において見つめている。
四方田犬彦(比較文学・映画誌研究)
『リダンス』1973年
工場で働くユトゥカは大学生と恋をして階級差に直面する。
職場の騒がしい音が涙をかき消すように響く。
労働の音、毎日の音。
あなたに聞こえることがない私の大切な音。
ゆっきゅん(DIVA)
『ジャスト・ライク・アット・ホーム』1978年
メーサーロシュ・マールタのフィルモグラフィにおいては異色作となる男性主人公の映画『ジャスト・ライク・アット・ホーム』は、うだつのあがらない中年男とまだ幼い少女の奇妙な紐帯を見つめてゆく。
さらにそこに、彼を巡ってその少女と年の離れた女とのスリリングな攻防が、サスペンスとなって絡み合う。
果たしてこの世界に自分の居場所はあるのか。
定住の“家”を持たぬ根無草の生を生きる者たちに捧げられたような一本。
児玉美月/映画批評家
「日記」三部作(1980-83年/1987年/1990年)
メーサーロシュ・マールタの映画を理解する三つの要素。それは女性、ハンガリー、ファミリー・メロドラマだ。この三つが交差して壮大な物語を作り上げたのが彼女の代表作「日記」三部作だ。そこには作家の総てが凝縮され、眩暈のように私たちを歴史の只中に誘い込む稀有な映画体験が待っている。
斉藤綾子/明治大学文学部芸術学科 教授
メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章
2025年11月14日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
© National Film Institute Hungary - Film Archive
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