ハリウッドで⼤活躍中のヘンリー・ゴールディングが主演を務める新作『MONSOON/モンスーン』(1⽉14⽇公開)は変わりゆくベトナムの“今”を捉えた映像美にも注目の作品。本作の撮影監督ベンジャミン・クラカンが、初めての試みとなったベトナムでの撮影について語った。話題作『プロミシング・ヤング・ウーマン』の撮影も手がけた名手が語る“挑戦的なテイク”の裏側とは?

本作は『クレイジー・リッチ!』(18)で注⽬を浴び、『G.I.ジョー︓ 漆⿊のスネークアイズ』の主演に⼤抜擢されハリウッドでも活躍中のヘンリー・ゴールディングを主演に迎え、30年ぶりにサイゴンへ帰郷した主⼈公・キットの旅路を描く作品。監督・脚本は、『追憶と、踊りながら』(14)のホン・カウ。カウもまたキット同様に、カンボジアから逃れてベトナムに渡ったのち8歳まで同国で過ごし、”ボート難⺠”として渡英していた過去を持つ。
キットのアイデンティティをめぐる旅は、現代ベトナムを映し出した魅⼒的な⾵景を通してより深められる。サイゴンには、⼤量のバイクが道路を⾏き交い、巨⼤なビルが⽴ち並ぶ⼀⽅、ハノイは、古い町並みを残す。前者では新世代が活躍し、後者では旧世代が昔ながらの暮らしを営んでいるが、年齢的には新世代に属するキットが⼼安らぐのは後者だ。そこには彼にとって、懐かしい景⾊がまだ息づいている。故郷にいながらも孤独を感じているキットが、過去の⾯影を巡る旅の中で⾒つけた〈⾃分〉とはー?

本作の撮影を手がけたのは、第93回アカデミー賞®で作品賞ほか5部⾨へノミネート、脚本賞を受賞し話題になった、医⼤⽣キャシーの復讐劇を描く映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の撮影監督を務めたベンジャミン・クラカン。これまで、第31回サンダンス映画祭ワールド・ドキュメンタリー部⾨で観客賞を受賞した『Dark Horse(原題)』や、『ハイエナ』(15)、第72回英国アカデミー賞英国作品賞にノミネートされた『Beast』なども⼿掛けてきた彼が今回、ホン・カウ監督と初めてタッグを組んだ。
ベンジャミン・クラカンは撮影当時を「ベトナムは⾮常に魅⼒的でした」と振り返る。本作の撮影まで、イギリスでしか撮影現場を経験していなかった彼にとってベトナムでの撮影は初めての試みで「異なる環境を開拓する機会は刺激的なもの」だったという。
ホン・カウ監督が普段⽤いないような美的なテイクを提案していったクラカン。「プロット先⾏の脚本ではなく静観的な映画でしたので、挑戦的な撮影に対してオープンだと感じました。押しつけがましさを出さず、登場⼈物に余地を与えて、登場⼈物が沈思している瞬間をいかにして捉えるかが重要だと私たちは同意しました。また、ベトナムは⾮常に濃密な環境ですので、それと対照的な静謐さとスローなテンポで、キットが苦労しながらも周囲と関わる様を表現したいと思いました」と語る。

このたび解禁された場⾯写真も、ベトナムの湿度や⾵をそのまま肌で感じられるようなショットや、画⾯を越えて今にも喧騒が聞こえてきそうな⼈混みの景⾊などが印象的だ。
また、クラカンは脚本を読んだ時、ホーチミンの個性が際⽴って感じたと語る。「私は都会的な映画が好きなんです。ミケランジェロ・アントニオーニ監督の⼤ファンで、セットがあたかも⼀つの役のような作品を好みます」
これはホン・カウ監督にとっても重要な観点となり、ロンビエン橋や統⼀会堂といった、ベトナム戦争における重要なランドマークを撮影場所に選んだ。そこで撮影することで、明確にそうしたランドマークに⾔及することなく、過去と現在を潜在的に表現している。

ベトナムでの旅を経験したことのある人には⾒慣れた⾵景もたびたび登場する本作。“今”のベトナムを映し出す⾵景とともに、1シーン1シーンのロケーションにも注⽬だ。
『MONSOON/モンスーン』は1⽉14⽇(⾦)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
MONSOON/モンスーン
2022年1月14日(⾦)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
出演:ヘンリー・ゴールディング、パーカー・ソーヤーズ、デイビット・トラン、モリー・ハリス
監督・脚本:ホン・カウ 『追憶と、踊りながら』
2020/イギリス、⾹港/85分/5.1ch /カラー/原題『MONSOON』
配給:イオンエンターテイメント
©MONSOON FILM 2018 LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019
公式サイト︓ MONSOON-MOVIE.COM