ロシア演劇界の⻤才にして気鋭の映画作家キリル・セレブレンニコフ監督(『LETO-レト-』)が、⼤ベストセラー⼩説を原作に描き、カンヌを驚かせた最新作『Petrovʼs Flu』が、『インフル病みのペトロフ家』の邦題で4⽉23⽇(⼟)より全国順次公開されることが決定した。

濱⼝⻯介監督『ドライブ・マイ・カー』が脚本賞を受賞し、⽇本でも⼤きな話題を呼んだ昨年のカンヌ国際映画祭。他にもレオス・カラックス監督『アネット』やアピチャッポン・ウィーラセタクン監督『MEMORIA メモリア』など話題作が⽬⽩押しの中で、名だたる批評家を驚かせ、喝采を浴びたのが本作『インフル病みのペトロフ家』。
監督は、ロシア演劇界の⻤才であり、『The Student』(2016/⽇本未公開)や『LETO -レト-』(2018)でカンヌをはじめとする数々の映画祭で多数の賞を受賞するなど、すでに映画監督としても世界から注⽬を浴びているキリル・セレブレンニコフ。若くして 2012 年からモスクワのゴーゴリ・センターの芸術監督に任命された⻤才演出家でありながら、2017 年に国からの予算を横領した疑いで逮捕されて⾃宅軟禁状態に。⽇本でも公開された『LETO -レト-』がカンヌで絶賛され、サウンドトラック賞最優秀作曲家賞を受賞した際には、多くの映画⼈がセレブレンニコフの無罪を訴え、解放を求めたがカンヌには参加できなかった。本作の脚本は、その軟禁という不条理な環境の中で書いたという。
原作は、2016 年に発売され、ロシア⽂学界でセンセーションを巻き起こしたアレクセイ・サリニコフによるベストセラー⼩説『Петровы в гриппе и вокруг него(インフル病みのペトロフ家とその周囲)』(邦訳未出)。ソヴィエト崩壊後、2004 年のロシア、エカテリンブルグで、インフルエンザが流⾏する中、主⼈公のペトロフは⾼熱にうなされる。妄想と現実の間を⾏ったり来たりするうちに、次第にペトロフの妄想は、まだ国がソヴィエトだった⼦供時代の記憶へと回帰していく…という物語だ。

映画は、ロシア社会への強烈な⾵刺を孕みながら、妄想と現実の境⽬が曖昧な原作の世界観そのままに、セレブレンニコフ監督らしい型破りな芸術的感性と刺激的なアクションに彩られ、強烈なインパクトに溢れた⼀編。いくつものプロットが絡み合い、頻繁に幻覚のトリックにすり替わっては次々に展開され、熱に浮かされたような刺激的な映像体験をもたらす。どのように撮影されたのか気になってしまうほど複雑な⻑回しショットや、めくるめく場⾯転換は必⾒だ。
なお本作は、カンヌ国際映画祭で芸術的貢献を認められる CST Artist-Technician Prize を受賞。上映後、アメリカのザ・プレイリスト紙は「映画の熱病的譫妄。(中略)純粋で、粗野で、⼼かき乱す映画」、イギリスのリトル・ホワイト・ライズ誌は「驚くほどに奇妙な、ポスト・ソヴィエト時代のロシア像。幻想的で、刺激的。息を呑む映画作りだ」と⼤絶賛。世界中の観客を混乱させ、魅了し、映画の迷宮を疾⾛していく『インフル病みのペトロフ家』、映画ファン必⾒の今年の 1 本になるはずだ。
インフル病みのペトロフ家
2022年4月23日(土)よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開
原題:Петровы в гриппе/英語題:Petrov's Flu
監督:キリル・セレブレンニコフ(『LETO -レト-』)|出演:セミョーン・セルジン、チュルパン・ハマートワ、ユリヤ・ペレシリド
原作:アレクセイ・サリニコフ著「Петровы в гриппе и вокруг него(インフル病みのペトロフ家とその周囲)」(邦訳未出)
2021年|ロシア=フランス=スイス=ドイツ合作|146分|DCP|カラー|日本語字幕:守屋愛
配給:ムヴィオラ
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