現在大ヒット上映中の映画『呪呪呪/死者をあやつるもの』の公開を記念したトークイベントが2月11日(土)に新宿バルト9にて開催され、Apsu Shusei(文様作家/怪談蒐集家)、田中俊行(オカルトコレクター)、はやせやすひろ(都市ボーイズ)が登壇した。
本作は『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)でゾンビ・アポカリプスの新境地を開拓し、その動向が最も注目されるクリエイターの1人であるヨン・サンホが原作・脚本をつとめ、「愛の不時着」(2019)「シスターズ」(2022)などクオリティの高いドラマ作品を得意とするスタジオドラゴンとタッグを組んだ最新作。怪事件を追うジャーナリストと呪術師がゾンビに立ち向かう。Netflix「シスターズ」での好演も光るオム・ジウォンと『パラサイト 半地下の家族』で強いインパクトを残したチョン・ジソら豪華キャストが共演した。
このたび開催されたトークイベントに登壇したのは呪術・オカルトに精通した豪華メンバー。Apsu Shuseiはホラープロダクトを開発・販売する株式会社アシタノホラーの名誉顧問で世界の怪談蒐集家。文様作家としても活動中。オカルトコレクターの田中俊行は、怪談だけでなく曰くつきの呪物を収集するその道のスペシャリスト。さらに、怪奇ユニット都市ボーイズとしてYouTubeでも活躍するはやせやすひろは、稲川淳二の怪談グランプリで2度優勝した経歴をもっている。彼らが韓国の怪談集から生まれたゾンビや呪術についてディープなトークをくりひろげた。
本作を鑑賞した感想についてApsuはドラマ「謗法」も鑑賞済みで「今回はインドネシアの呪術が描かれているということで楽しみにしていました。インドネシアの呪術がモチーフになるということがなかなか無いので、ここまでエンタメに特化した作品に仕上がっていてとても嬉しかったです。今後も世界中の呪術や呪物をモチーフにした作品が生まれていったらいいなと思っています」と述べた。
はやせは「僕も同じく、インドネシアというところに目をつけたのがすごく良いなと思いました。インドネシアと“遺体”や“死体”というものがすごく密接に関わりがあるんです。トラジャ族という民族は“死”というものが無いので、遺体と暮らすんです。そういう世界線がちゃんとホラーになって、韓国で映画になるというのが素晴らしくて面白いし、ちゃんと調べていることが伝わってきたので好感触でした」、田中も「ヨン・サンホ監督はジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を敬愛されているみたいで、僕は子供の頃『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』と稲川淳二ばかり観ていたので(笑)、この作品は従来のゾンビ映画にアクションも加わってアップデートされているな!と感じました」と絶賛。
続いて、本作に登場するゾンビ“ジェチャウィ”についてApsuは「調べてみたらジェチャウィというのは韓国の妖怪なんだそうです。韓国では昔から伝わる怪談や妖怪などの資料がほとんど残されていないので、こうやって作品として韓国のそういった伝説が我々の前に登場してくれることによって、もっといろんな妖怪などについて知れるのではないかなと、嬉しくなりますね」と、まだ見ぬ“呪い”を思い浮かべて感慨深い様子だった。
はやせも「1782年、江戸時代に出回っていた呪い本とか、韓国や中国で流行っていた伝書などを持っているんですが、その頃から遺体が動くといったことが記されていて、実際に戦に使っていたという話もあったりするんです。そこからどんどん進化してきたので、今2000年代ではゾンビでもカーチェイスするか!(笑)ゾンビって伸びしろあるんだ!とこの映画を観て思いました」とゾンビの可能性の広がりを語る。
その一方で田中は、「僕は普段動きが遅いんですが、小学校3年生まで犬に憑りつかれていたことがあるんです。その頃の僕の動きは“ジェチャウィ”並でしたね。家族を噛むので怖がられていました」と独特な体験を暴露し、「笑っていいか分からんわ!」とはやせからツッコまれる一幕も。
また、今回のイベントのためにはやせと田中が自身のコレクションの中から貴重な“呪物”を持参し、観客の前で披露した。
はやせが紹介したのは「バタック文書」と呼ばれる書物。「インドネシアで数百年前に実際に使われていた呪術本で、紙ではなく木でできています。この本だけを研究した方による解説本付きなんです。“死者をあやつる”といった内容も記されているので、これを読みながら進めていくと本当に人が呪えます」と紹介してみせた。本作で描かれている呪いとリンクする内容も書かれているようで、実際に“死者をあやつる”方法も合わせて、おどろおどろしいものを何とも軽快に熱弁してみせた。
続いて田中が「これぞTHE 呪物です!」と声を大にしながら意気揚々と取り出したのは特大の藁人形。「昭和34年に作られたものです。素人によるものではないということが作り方から分かるんですよ。顔、首、心臓、腹に加えて股の下にも釘が刺されていますし、顔が焼かれています。子孫が残せなくなり、一族が滅びるようにということから、恐らく女の人を呪ったものらしいです」と解説。他にも、腕の部分の作り込み具合からもこの藁人形に込められた呪いの念の強さが分かるようで、それを聞いたApsuも思わず「これは堪りませんね…」と、貴重な一品に興奮気味の様子。
また、世界中に各地それぞれ独自の姿で存在する“呪い”について尋ねられると、「呪いやまじないというのは人の願いの形だと思っていて、決して怖いものではないんです。呪物を通してその土地の人々が残した願いが分かることが呪物の魅力かと思います」(Apsu)、「皆さんも知らず知らずのうちに人を呪ったことがあるということをお伝えしたいです。実は“祝い”と“呪い”は同時に生まれるので、祝ったことがある人は呪ったことがあるということになります。そう考えると日常に溢れていることなので、そういった視点で身の回りを見てみてください」(はやせ)、「僕にとっては目に見えない世界の話というだけで魅力的なんです。人間がいる限り呪いは続くんじゃないかなと思います」(田中)と、三者三様にそれぞれの“呪い”への想いが強く込められた持論を語ってみせた。
最後の挨拶として三人は、「こうやって呪物、呪術の世界が作品の中で見られるのはすごく貴重なことだと思います。ぜひ感想を呟いたりして広めていただいたら今後もこういった作品が作られるのではないかと思うので、応援の程よろしくお願いします」(Apsu)、「今、呪いやオカルトといったものがすごく流行っていると思います。人類が危機に瀕した時にそういったものが盛んになるので、コロナ禍の今、この『呪呪呪』という作品が皆さんによるツイートなどで呪いのようにどんどん伝播していってヒットしたらいいなと思うので、ご協力お願いします!」(はやせ)、「僕はこの作品みたいな世界に本当になればいいのになと思っています。この映画を観て、もう一度“呪い”を信じてみようかな、呪いの大切さを思い出しました」(田中)と述べ、“呪い”に溢れながらもほのぼのとした雰囲気のイベントを締めくくった。
『呪呪呪/死者をあやつるもの』は新宿バルト9ほか大ヒット上映中。
呪呪呪/死者をあやつるもの
2023年2月10日(金)新宿バルト9他にて公開
※呪呪呪の読みは「じゅじゅじゅ」
英題:「The Cursed: Dead Man’s Prey」
監督:キム・ヨンワン
原作・脚本:ヨン・サンホ
キャスト:
オム・ジウォン 、チョン・ジソ 、チョン・ムンソン 、
キム・イングォン 、コ・ギュピル
提供:CJ ENM 制作会社:クライマックス・スタジオ
共同制作:CJ ENM、スタジオドラゴン、キーイースト
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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