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新潟市にて開催されていた「第1回新潟国際アニメーション映画祭」が3月22日(水)に閉幕。コンペティション部門グランプリは村上春樹原作『めくらやなぎと眠る女』に決定した。

「3⼈の審査員の意⾒が⼀致した、唯⼀の作品です」

3⽉17⽇〜22⽇まで新潟市の合計8つの会場にて開催された「第1回新潟国際アニメーション映画祭」。会期中にはりんたろう監督の 14 年ぶりの新作のワールドプレミア上映や「⼤友克洋レトロスペクティブ」、⽚渕須直監督による最新作についてのトークなどが行われ、アニメーションのこれまでの素晴らしい業績やこれからの可能性などを感じさせる映画祭となった。

最終⽇の3⽉22 ⽇(⽔)にはりゅーとぴあ新潟市⺠芸術⽂化会館にて、「第1回新潟国際アニメーション映画祭」の核とも⾔えるコンペティション部⾨の授賞式が開催され、グランプリには村上春樹の6つの短編(「かえるくん、東京を救う」「バースデイ・ガール」「かいつぶり」「めくらやなぎと眠る⼥」「ねじまき⿃と⽕曜⽇の⼥たち」「UFO が釧路に降りる」)を基にした『めくらやなぎと眠る⼥』(監督:ピエール・フォルデ)が決定した。

『めくらやなぎと眠る⼥』

審査委員⻑の押井守は「ご覧になった⽅は⾮常に驚かれたと思いますが、⼀⾒すると⾮常に地味なスタイルなんですけども、現代⽂学を表現する最適のスタイルなんじゃないかということで、3⼈の審査員の意⾒が⼀致した、唯⼀の作品です」と受賞の理由を明かした。

そのほか、本映画祭ならではのユニークな賞として創設された傾奇賞(かぶく)賞には『カムサ ‒ 忘却の井⼾』(監督:ヴィノム)が、境界賞は『四つの悪夢』(監督:<故>ロスト)が受賞したことが発表され、奨励賞として『劇場版「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」』(監督:牧原亮太郎)が受賞した。

総評コメント、受賞者コメントなどの全文は以下の通り。

★傾奇賞(KABUKU Award)とは?
従来の価値観に捉われず、斬新で新しいものに挑戦し、創造していく作品に与えられるもの。「傾奇」とは戦国時代末期から江⼾時代の潮流で、「歌舞伎」の語源ともなった⾔葉。当時、常識から外れた派⼿な装いや⾏動をする者を「傾奇者」と呼んだことに端を発している。

★境界賞(Evolve Award)とは?
「2D」や「3D」「コマ撮り」といった制作⼿法、またはジャンルの様々な境界に捉われず、アニメーションの世界に進化を与える作品に与えられるもの。英語の表記になった「Evolve」にはアニメーションの「進化」の意味が込められている。

コメント全⽂

新潟国際アニメーション映画祭授賞式
会場/りゅーとぴあ 新潟市⺠芸術⽂化会館 劇場
⽇時/3⽉22⽇(⽔)18:30〜
登壇者/押井守(審査委員⻑)、ジンコ・ゴトウ(審査員)、デヴィッド・ジェステット(審査員)
挨拶/真⽊太郎(ジェネラル・プロデューサー)
閉会挨拶/井上伸⼀郎(フェスティバル・ディレクター)

真⽊太郎の挨拶(ジェネラル・プロデューサー)
第1回新潟国際アニメーション映画祭授賞式にようこそいらっしゃいました。審査委員⻑の押井さん、審査員を務めて下さったデーブさん、ジンコさん、ありがとうございます。最初に皆さんにお知らせしたいことがございます。この賞は監督賞、脚本賞、美術賞、⾳楽賞と発表しているのですが、実は賞の名前を変えました。その部分も含めてこの後の授賞式を楽しみにしていてください。

押井守審査委員⻑の総評
この結果は、映画をご覧になった⽅は意外な受け⽌め⽅をしているかもしれません。もしかしたらひっくり返っているかもしれない。実は、今回審査にはいろいろと問題がありました。最⼤の問題は、これだけ多様な表現の作品が10本並んだところで通常の映画のような評価の仕⽅が果たして通⽤するのかどうか。というところで、審査の冒頭で議論になりました。

アニメーションの表現は、本来からして多様なものなんです。その作品にフィットしたスタイルというものが必ず存在する。今回は作品の主旨をそれに⼀番適合したスタイルが存在するかどうか、通常の映画祭の審査とはやや異なる審査基準で決定しました。グランプリを除いた3つの賞を審査員が協議して新たに作り出した、いわばあまり前例のない賞なんですけれども、それぞれ作品のおかれている、あるいはアニメーションという表現がおかれている今⽇的な⽴ち位置、おかれた⽴場、それを象徴する賞となっています。

境界賞には多少説明が必要だと思いますが、アニメーションの周辺には、劇映画だけではなくたとえばミュージッククリップであったり、隣接する領域の中で優れた作品がたくさん存在します。同じように、アニメーションの制作スタイルも時代に合わせて刻々と変わってきます。例えば、これからゲームで使⽤されているゲームエンジンを使って映画を作り出す時代が来ると思います。これだけ多様な表現があり、多様な制作⽅法があり、さらに⾔えば、地域で異なる制作の動機が存在します。それらを、従来と同じ審査基準で相対的に評価していくことはたぶん不可能、ということで3⼈の審査員の意⾒が⼀致しました。ことアニメーションに関して⾔うなら、そこに集まった作品の中から⾃動的に賞が⽣まれる。それが正しいやり⽅ではないかと。画期的ではありますけど、この映画祭の初回にふさわしい、今⽇的な賞になっているのではないかと⾃負しております。

特にグランプリ作品に関してはですね、ご覧になった⽅は⾮常に驚かれたと思いますが、⼀⾒すると⾮常に地味なスタイルなんですけども、現代⽂学を表現する最適のスタイルなんじゃないかということで、3⼈の審査員の意⾒が⼀致した、唯⼀の作品です。

最後に申し上げたいのは、今回参加していただいた10本の作品のクオリティの優劣を決めるための賞ではないということです。参加してくれた監督さん、プロデューサーの⽅々、関係者の⽅々、どうか僕を恨まないでください(笑)。今回の作品は、どれも⼤変素晴らしい作品が並んだと思います。僕の想像を超えて良い作品が集まって、とても嬉しいと思っています。やや意外な結果になったかもしれませんけども、新潟国際アニメーション映画祭、第1回に相応しい、かなり画期的な賞になったんではないかと考えています。それは違うだろ、というような考え⽅の⽅もいらっしゃると思いますが、それは私に⽂句を⾔ってください(笑)。どうもありがとうございました。

受賞者コメント

グランプリ
『めくらやなぎと眠る⼥』 監督:ピエール・フォルデ
 ※ビデオメッセージで参加
みなさまこんにちは、素晴らしいお知らせを受けました。とてもとても嬉しいです。実は新潟の映画祭に⾏くことをとても楽しみにしていました。世界中の⾊々な映画祭に⾏きましたが、その中でも新潟は楽しみにしていたんです。しかし残念ながら、本作のフランスでの公開が本⽇のため⾏けませんでした。重ねて感謝申し上げます。みなさまの感想もぜひ聞きたいです。どんなご質問にも喜んでお答えしたいと思いますので、私のサイト pierrefoldes.com からご連絡ください。新潟にいらっしゃる皆様、審査員の皆様、改めてありがとうございます、光栄です。

傾奇賞(かぶく)賞
『カムサ ‒ 忘却の井⼾』 監督:ヴィノム
この新潟でこのような⼤きな賞をいただけたこと、本当に本当に⼼から感謝しております。この『カムサ』という映画はずごく難しかったです。短編を⻑編に変えていくということで、それを⼤変少ない⼈数で時間をかけて作ってきたわけなんですけれども、完成したときには本当に⼤きな喜びを感じました。そしてすべての感謝を制作スタッフに捧げたいと思います。同時にいらっしゃってるすべての監督にも感謝を申し上げたいと思います。この新潟の地で私は才能ある⼈々にたくさん出会うことができました。そして最後に、押井監督に⼼から感謝申し上げたいと思います。というのも、この作品は⼤きなインスピレーションを『天使のたまご』から得たものだからです。本当にありがとうございました。

『カムサ ‒ 忘却の井⼾』

奨励賞
『劇場版「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」』 監督:牧原亮太郎
このような賞をいただきましてとても光栄に思っています。作っているあいだはずっとコロナが⼤変な時期で、スタジオにも⼈がいないし、配信⽤の作品を劇場版にした作品ですので。スタッフの顔もお客さんの顔もなかなか⾒えづらいなかで作っていました。皆さんの顔を⾒ながら作品をお⾒せする機会が得られなかったので、今回の映画祭でこういう⽅々がお客さんなんだとわかって、とても感動しました。これもコロナのせいなのですが、つくってくれたスタッフの皆さんにお礼を⾔えなかったので、この場を借りて、作ってくれたスタッフの皆さんにも感謝の気持ちを送りたいと思います。

『劇場版「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」』

境界賞
『四つの悪夢』 監督:<故>ロスト
※監督が故⼈につき、関係者に代わり、プログラム・ディレクターの数⼟直志が壇上にあがった。

『四つの悪夢』

フェスティバル・ディレクター井上伸⼀郎の閉幕の挨拶
まずはグランプリアワードを受賞なさいました『めくらやなぎと眠る⼥』のピエール監督おめでとうございます。そして各賞のウィナーの皆様、本当におめでとうございます。コンペティションに参加してくださった監督の皆様、関係者の皆様、すべての皆さまに感謝申し上げます。押井監督をはじめ審査員の皆様、お忙しいなか貴重なお時間を割いていただき、たぶん真剣にものすごく悩んで激しい議論を戦わせていただいたと思います。皆さまに感謝します。

この新潟の地に参りまして、映画祭を⾏ってきましたが、新潟の皆さまの温かいおもてなしに感謝いたします。街中に映画祭のフラッグがあるのはもちろん、居酒屋さんとかお蕎⻨屋さんにもポスターがあり、料亭にもチラシが置いてあり、街中が映画祭を応援してくださっていると実感しました。この新潟の地で、⽇本の中から海外から多くのアニメ関係者が6⽇間集まっていただき、交流を深めるという最初の私の夢がかなった形です。すべての皆さまに感謝します。

これにて閉幕いたします。新潟、そしてアニメ最⾼です!ありがとうございました。

開催情報

第1回新潟国際アニメーション映画祭
Niigata International Animation Film Festival
2023年3月17日(金)~22日(水)開催

上映会場:新潟市⺠プラザ、T・ジョイ新潟万代、シネ・ウィンド、クロスパル新潟
イベント会場:新潟⽇報メディアシップ、古町ルフル広場、新潟⼤学駅南キャンパスときめいと
FORUM 会場:開志専⾨職⼤学

主催:新潟国際アニメーション映画祭実⾏委員会
企画制作:ユーロスペース+ジェンコ
特別協⼒:新潟市、新潟⽇報社、新潟県商⼯会議所連合会、燕商⼯会議所
後援:外国映画輸⼊配給協会
協⼒:新潟⼤学、開志専⾨職⼤学、JAM ⽇本アニメ・マンガ専⾨学校
協賛:NSG グループ

公式サイト https://niaff.net

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