第一回「Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」が11月23日(木・祝)から11月29日(水)の7日間、沖縄県・那覇市の会場を中心に開催。本日10月11日(水)に台湾文化センターにて、コンペティション部門のラインナップを発表する記者会見が開催された。
映画祭の開催概要については、本映画祭のエグゼクティブ・ディレクターを務める黄インイクより、コンペティション部門のラインナップ発表はプログラム選考委員の上原輝樹より発表が行われた。本日の記者会見の発表内容は下記のとおり。
【開催期間】 11月23日(木・祝)〜11月29日(水) ※7日間
【開催会場】 那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール等、那覇市内を中心とした会場
【コンペティション部門審査員長】アミール・ナデリ監督
【オープニング作品】『オキナワより愛をこめて』(日本)
【クロージング作品】『私たちはここにいる』(オーストラリア/ニュージーランド)
【コンペティション部門作品】※全9作品
『アバンとアディ』(マレーシア)、『サバイバル』(オーストラリア)、『緑の模倣者』(台湾)、『ゴッド・イズ・ア・ウーマン』(パナマ/スイス/フランス)、『オルパ パプアの少女』(インドネシア)、『クジラと英雄』(アメリカ)、『BEEの不思議なスペクトラムの世界』(フランス)、『水いらずの星』(日本)、『ロンリー・エイティーン』(マカオ/香港)
【特別企画】
特別セレクション「Director in focus」クリストファー・マコト・ヨギ監督の特集上映
Pacific Islands ショーケース
野外上映
VR体験上映
ほか
【功労賞「マブイ特別賞」受賞者】
高嶺剛監督、高嶺組
まずゲストとして、映画祭のオープニングを飾る『オキナワより愛をこめて』から、砂入博史監督が登壇。本映画祭については、「琉球王国はアジアのハブと呼ばれていた場所。アジアの文化が行き来するような映画祭になったら素晴らしいと思います」とコメント。本作は、沖縄を代表する写真家・石川真生さんに密着したドキュメンタリー。石川さんについて問われると、「沖縄スピリットを体現する人で、写真を撮る喜びというものが作品からにじみ出ている」と振り返り、作品について「石川さんが写真を撮った1970年の分断された沖縄と、その特異な文化背景、それを体験した彼女の言葉のどれもが面白く、まさに“石川真生丸かじり”という映画になっていると思います」と語った。
次に、コンペティション部門のうち日本からの入選作品『水いらずの星』より、越川道夫監督と主演/プロデューサーの河野知美がゲスト登壇。
河野は本作について「“芝居とは何か”をずっと呪いのように問いながら現場にいました」と主演女優として芝居を追求したことを明かし、また同時に務めたプロデューサーという役割については「映画を一本作るということは、とても大変で簡単にできることではない。勇気と覚悟を持って立ち向かわなかればいけないことだとあらためて感じさせられる現場でした」と振り返った。また、戯曲の映画化について越川監督は、「(映画用の脚本ではなく)戯曲のままやるということが決まっていたので、戯曲のままどうしたら映画になりえるのかと考える日々でしたし、それは“映画とは何なのか”ということを問うということでもありました」と語った。
最後に、アンバサダーを務める俳優の尚玄、理事を務める監督で俳優の東盛あいかがゲスト登壇。ともに沖縄出身である2人が故郷で新たな映画祭が始まることについての想いを問われると、尚玄は「デビュー作品ではコンペティション入りした東京国際映画祭に参加し、その後も世界の映画祭に参加させていただいてきましたが、当時は沖縄に映画祭がなかったので、いつか沖縄でインターナショナルな映画祭ができたらいいなというのは長年の夢でした。愛する沖縄で映画祭が始まることが心から嬉しく思います」と喜びを露わにした。
また東盛は「日本最西端の与那国島が出身で、島には映画館がなく、映画に触れることがない環境のなかで育ってきましたが、沖縄を出てから映画を観るようになり、映画を作り届ける側になってから、映画が文化や人々を繋げることができるということを強く感じています。海に囲まれている沖縄は閉鎖的なのではなく、海を通して様々な地域とつながっている。映画祭を通じて、沖縄が海を通して国際的な文化の中継地点になったらいいと思います」と想いを語った。
続けて尚玄が、本映画祭の国際文化交流という理念についての思いを問われると、「僕が主演とプロデューサーを務めた日本とフィリピン合作の映画『義足のボクサー』(2022)は、ブリランテ・メンドーサ監督と釜山国際映画祭で出会い親交を深めて、長年温めていた企画を監督に打診するところから始まった作品でした。映画祭は、素晴らしい映画の上映というだけでなく、色んな国の人が集まって、映画について語り合いそこから新しいものが生まれてくる“出会いの場”という側面があると思います。沖縄がそういう場になってくれたら嬉しいですね」と語った。
また東盛は映画祭を通じて若い世代へ映画を届けることについて問われると「子供たちが、世界の映画を沖縄で観られるということは素晴らしいことですし、私自身、うらやましいな、と思います。この映画祭をきっかけにして沖縄から映画を作っていく次の世代が生まれていくことを願っています」と語った。最後に尚玄が、「映画祭が敷居が高いとは思われたくなくて、地元の人もふらっと映画を観に来ていただきたいですし、映画を目指す人たちも気軽に足を運んでいて、誰もが映画を観て語らうことができる、双方向な映画祭にしたいと思っていますし、沖縄ならではの映画祭ができると信じています」と映画祭を熱をもってアピールした。
続けて質疑応答が行われ、尚玄、黄インイク、上原輝樹が登壇した。内容は下記のとおり。
Q:コンペティション部門の選定のレギュレーションはどのようなものでしょうか?
上原:この映画祭のコンペティションの基調は環太平洋地域に限定してるということです。具体的な国に関しては、WEBサイトにすべて記載しておりますので、そちらを見ていただけますと幸いです。
Q:映画祭の方向性としては、初監督作品などもあるので、新しい才能を発掘して、沖縄から世界に発信していくというものなのでしょうか?
上原:そうですね。それも大きな狙いのひとつです。まずは環太平洋の地域でどういう映画がつくられているか、私たちも始めるまで知っていたわけではないのですが、私とあともう2人、3名でいろいろな作品をみて、そして応募していただいて、黄さんを含めてディスカッションし選んでいったというプロセスになります。イメージでは新しい才能を発掘するというのもあるのですが、もう30年監督をやられている方の作品もセレクトしていますし、この地域で撮られている良質な映画、現代性のある、良い映画をお届けするのが主な目的かなと思います。
Q:審査員に関してなんですが、まだ発表できない部分もあると思いますが、何名いらっしゃる予定なのでしょうか?
黄:最大で5名で考えています。
Q:尚玄さんにお伺いで、沖縄出身ということで、この映画祭に国内外から多くのお客さんがいらっしゃると思いますが、映画だけでなく、沖縄のどういったところに魅力を感じてほしいと思いますか?そして見てもらいたいところがあればぜひ教えていただきたいです。
尚玄:もちろん沖縄には自然の素晴らしさというのもあるのですが、黄さんから今年の春にこの映画の話を聞いて、まずこのコンセプトが素晴らしいなと思って、今回参加させてもらうことになりました。上映以外にインダストリーと野外上映という2つの柱もありますよね。みなさん自分がもっている企画を、ピッチングするプロジェクトです。この映画祭に多くのフィルムメーカーの方に沖縄に足を運んでいただいて、沖縄には歴史的背景もあるので、映画としての素材というか、凄くいろいろ詰まっている場所だということを伝えたいです。なので、足を運んでくれた人が沖縄の歴史を知ることで、沖縄で今度映画を撮ってみたいなとか、そういう風なつながりがもって欲しいな、と思いますね。
Q:黄さん、尚玄さんおひとりずつ質問したいと思います。まず黄さん、台湾から沖縄に移住されてずいぶん長い時間がたっていますが、沖縄の魅力を教えてください。そして尚玄さんですけれども、日本国内だけでなく、海外でも幅広く活動されています。今年ハリウッドを含め映画業界いろいろな社会問題、また日本でも映画館が少なくなっている状況で、この映画祭を通じて、日本の映画界がどうなっていってほしいか、というのをお聞かせください。
黄:最初の3,4年くらいは東京に住んでいて、でもずっと沖縄に通っていて、それから那覇に移住しました。もう7年くらいですね。沖縄の一番の魅力は、“沖縄タイム”ですね。住んでみると分かります。毎日生活忙しいけれども、沖縄に戻るだけで癒されるというか、数日だけでも充電できるので、沖縄にいるだけの生活が非常に好きだな、と思って沖縄に住み続けています。
尚玄:今回のメイン会場である国際通りには、昔は映画館が沢山あったんですね。ホテルコレクティブさんがあったところには國営館という映画館があって、ほかにもたくさんあったんですが。僕は国際通りの真裏にある那覇高校出身だったので、暇さえあれば映画館にいって映画ばっかり見ていました。この間、ある大学教授の人と話していたら、授業の一環で、映画館で映画を見せたらしんですね。そしたら初めて映画館にいった、という人が何人かいたらしくて。本当に感動した、という生徒がいてびっくりした、というお話をしました。やはり今は実際にそういう状況があると思います。僕らの世代はまだ映画館に足を運びますけど、若い世代はなかなか映画館に行くというのは減ってきていると思いますね。やはり映画館に行く行為は、体験でありますし、いろんな人と共有してみることが大切だと思います。今回の映画祭にはゲストの方々が来て、できれば双方向で話をする環境を作りたいので、その映画体験をして欲しいですね。若い人たちに体験してもらい、もしかしたら、映画の道に進みたいと思えるかもしれないし、そうじゃなくても、僕みたいに映画を見ることで救われるひとがいるかもしれない。子供だけじゃなくて、大人でも感じることがいっぱいあると思うので、そういう機会をつくれたらいいなと思っています。
Q:環太平洋というそのテーマの着想を教えていただきたいです。ディレクターズインフォーカスというコーナーは、もし今後も続けていく場合、島のクリエイターを取り上げる部門と考えてよいのでしょうか?
黄:まず2つ目のディレクターインフォーカスというのは、まだ日本であまり紹介されていない島の文化とか、アイデンティティをもっている監督さんを紹介したいと思っている部門です。環太平洋のエリアは実は広くて、北米・南米・西海岸含まれているので、島だけとは限らないのですが、海文化に影響されて、自分のアイデンティティを映画を通して表現されている作家を見つけたいと思っています。できれば日本で紹介されてない方で、という感じですね。今回の第一回目はクリストファー・ヨギさんです。そして1つ目の質問の、どうやってエリアを考えたかというと、2018年の石垣島の映画祭を考案した時に、Cinema at Seaが海を越えて、民族、島をつなぐという概念でスタートし、そこで2つのマップを大きく参考にしました。一つは南島語族ですね。南島語族は台湾からスタートして海わたってマウイ族だったり、ここも少しインド洋もはいっているんですけれども、基本中心はニュージーランドとか大きい太平洋の国です。これがひとつのマップです。そこの一番北端と言われるのが、日本最南端の波照間島なんですね。そこも根拠があります。やはり沖縄でつながっているということです。2つ目が、世界のうちなんちゅ(沖縄生まれの人)のネットワークです。そこは南米だったり、ハワイだったりたくさんの沖縄県の移民がいるとうこと、沖縄ずっとディスカッションし続けている、うちなんちゅの大きな祭りもあります。その2つのマップを重ねて、この環太平洋のエリアに定めました。
上原:このアイディアは黄さんからでてきたもので、最初にこういうのを考えているんだけど、と相談を受けました。その時は、そのエリアに限定して、色々な映画を見ることができるのかな、と思っていたんですけれども、実際に作品を公募してみたら、かなり多様性のある作品が集まったので、様々な作品を見ることができる映画祭になりそうだな、という感触がありました。
Q:ちなみに対象となる国や地域はいくつぐらいになりますか?
黄:フランス領のニューカレドニアや、周りの小さな島々もはいっているんですが、私たちコンペティション、劇映画もドキュメンタリーも分けないのは、できればいろいろな地域の作品が欲しいからです。なぜなら、人口20万人以内の小さな島には劇映画がないんです。例えばパプアニューギニアの「オルパ」という作品もパプアニューギニアで数十年間独立の紛争があって、映画監督ひとりもいない状況でした。そしてやっと映画監督が生まれました。映画監督はラッパー出身の方で、映画監督を務めました。そういった作品も発掘したいなと思っています。
第一回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル
【正式名称】 第一回Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル (Cinema at Sea - Okinawa Pan-Pacific International Film Festival 2023)
【主 催】 Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル事務局
【開催期間】 11月23日(木・祝)〜11月29日(水) ※7日間
【開催会場】 那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール等、那覇市内を中心とした会場
【実施内容】 公式コンペティション作品上映、特集上映、トークイベント他
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