第36回東京国際映画祭が10月23日(月)より開幕し、オープニングを飾るレッドカーペット、そしてオープニング作品『PERFECT DAYS』公式上映の舞台挨拶が実施され、審査委員長として来日しているヴィム・ヴェンダース監督と主演の役所広司を筆頭に豪華キャストが勢揃いした。
『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、数々の傑作を世に送り出し続けてきた名匠ヴィム・ヴェンダース。本作は彼が長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた作品。1988年にヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩』が30週にもわたるロングラン上映で大ヒットを記録した記念すべき映画館、TOHOシネマズ シャンテをメイン館として全国公開される。
このたび、東京の秋風が爽やかな空の下、各国のゲストを迎え36回東京国際映画祭が華々しく開催。多くのメディアと、ファンがたちならぶレッドカーペットに『PERFECT DAYS』チームが登場すると大きな歓声があがり、メディアへのインタビューやファンからの声に丁寧に足を止めながら総勢11名の『PERFECT DAYS』チームがレッドカーペットを歩いた。
その後、オープニングセレモニーを終えたキャストは、『PERFECT DAYS』オープニング上映会場となるヒューリックホールへ移動。会場いっぱいの観客が待つ中、ヴィム・ヴェンダース、役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和、高崎卓馬(共同脚本、プロデュース)、柳井康治(製作)が大きな拍手で迎えられ、日本初上映前の記念すべき舞台挨拶を実施した。
この日日本に到着したというヴィム・ヴェンダースは、たくさんの観客を見渡しながら「私の友人も来ています」と目を細めつつ、挨拶を求められると、「この作品は出演者もスタッフも日本人です。そしてこの映画は、ドイツ人監督が撮ったものだと思いますか?ということを皆さんに聞いてみたかった」と言い、「私には日本の魂がある」と、日本の観客に向けて感無量の様子。
そんなヴェンダースに対して主役を演じた役所は「監督は、今日4時間飛行機が遅れて、ちょっと前に日本についたので時差ボケっぽくって…」と、笑顔でつっこむと、監督が役所の肩にもたれかかる、ほほえましい場面も。
本作で演じたトイレの清掃員、平山という役について話が及ぶと、役所は「平山という男について、ヴェンダース監督はいつも“ああ、平山みたいに生きたいな。平山みたいな生き方が羨ましいな”っておっしゃっていました。僕も、あ、そういう人物を目指せばいいのかという風に撮影中ずっと思っていました。自分は都会の中で生きている男ですが、(平山は) 他の人たちとは違う、ゆったりとした時間と、森の中で静かに呼吸しながら生きているような人物だなと思いました」と平山の人物像を語った。
平山の同僚を演じた柄本は、現場での思い出について「ヴェンダース監督とご一緒できたことを本当に光栄に思っております。“たかし”っていう人間は適当なんですね。ただ、わかりやすく、憎めない人間性がある。僕はそれをどう見つけられるかなと思いながら、楽しく演じさせていただきました」と振り返った。
そして、アオイヤマダは演じた“あや“という人物について「謎が多いと思います」としながらも、「(監督は)私という人物を見つめてくれた。役に私を近づけるんではなく、私に役を近づけてくれた感じがしました」と、謎の多いキャラクターではあるものの、監督がアオイに寄せて作り上げてくれたことを明かした。
そして、平山の姉を演じた麻生祐未は、本作への参加について「それはそれは夢のように楽しい時間を過ごさせていただきました。こんなレジェンドと呼ばれる方と一緒に時間を過ごせるなんて。撮影の現場ではいつ見ても監督はニコニコ本当に楽しそうに笑ってらして、それがみんなにも伝わって、私たちもいつの間にかリラックスして楽しく撮影できることができました。本当に感謝しています。ありがとうございます」と笑顔で感謝しきりの様子。
平山の姪を演じた映画初出演である中野有紗は「初めての演技で、 もう右も左もよくわからないまま、こんなにも素晴らしいチームに加えていただけて、 その上、こんなにも素敵な場にも連れてきてくださって、本当に今、ありがとうございますの気持ちでいっぱいです」とコメント。これに対してヴェンダースは「初めて演技をするという人は、まずその1番最初のその場面に真実があるんですね。彼女は生まれもっての役者であるという風に思いました」と新人でありながら素晴らしい演技で本作を支えた中野に惜しみない賛辞を送った。
そんなヴェンダースは改めて本作を製作したきっかけについて「本当に素晴らしい場所があるということでお誘いいただいたんです。日本の建築士の方々が作ったトイレですね。素晴らしいものを作っているというところからインスピレーションを受けまして、当初映像を何か作ることを考えてはいたんですけれど、見たことがないものを目にして、こういうものであれば物語で語った方がいいのではないかというところから(映画の製作が)始まりました。誰よりも尊敬する、憧れの役所広司さんと仕事ができるということで、私はとてもプレッシャーを感じました」と明かした。
製作の柳井康治は本作の内容について「僕は(完成した本編を)初めて見たのは2月の終わりだったと思います。自分が憧れている方に出ていただいて、作っていただいて、それが形になるということを目にした時に、自分では言葉にできなかったぐらい感動しました。1人でも多くの方に同じ気持ちになってほしいなと思います。本当に素晴らしいものになりました」と、豪華キャストとヴェンダースを前に感無量の様子。
また、高崎卓馬も「ヴェンダースという素晴らしい監督がいて、スタッフもキャストもみんなとにかくヴィムが好きで、すごくあったかいチームができました。そういうチームだからこそできた映画だなと思います。何も考えずにこの映画に出会ってほしいなと思います」と率直に語った。
ホームレスを演じた田中泯は「この映画では、僕は平山さん(役所)からしか見えない役で、一言も喋りません。ですから、今日は喋らないでおこうかなと思ってました(笑)。1番初めの撮影で、トイレのあるこの木の下で監督から“木漏れ日が刺すからそこで踊ってくれ”って言われてとても嬉しかったです。撮影は短い期間でしたが、もう嬉しくて嬉しくてしょうがなかったですね。素晴らしいチームで、開放的で、そしてそれぞれのベストを尽くす。素晴らしい。本当にあの嬉しさが未だに僕の中には残っていてあったかいです」と『PERFECT DAYS』チームに対してのあたたかい想いを明かした。
平山が通う小料理屋の女将を演じた石川さゆりは「このお話を伺った時に、ヴェンダース監督の映画と聞いたら、役者さんたちはすごい自分へのご褒美だと思いますっておっしゃったんですけど、私はそこまでのすごさがわからなくて…。 それで、役所さんの映画、そして素晴らしい監督の映画というだけで、歌い手の好奇心、私の好奇心で、出ます、と言ってしまいました。そして、監督が音楽が大好きな方だったので、あの映画の中で本当に、いつもいろんな音楽が流れていて、嬉しかったです。私たちの歌作りもそうなんですけど、あざとく、決めのある歌、それもあの身を切るような歌もいいんだけど、時にやっぱり1人は寂しいよねとか、こういう時に人がいてくれたらいいねって、そんなことを感じる。私たちの歌作りととっても似たものを感じました。 本当にあったかい映画だなと思いました。今の時代だからこそ、皆さんにこういう “1人じゃないよね”っていう、こんな映画を見ていただきたいです。今日は本当に皆さんと会えて、そして私も参加させていただいて、ご縁に感謝いたします。ありがとうございます」を感謝の意を表す。
続けて三浦友和が「緊張と不安のまま、その現場に行きました。出来上がりが、素晴らしいです。私、最後の方にちょこっとだけいます。見逃さないようにしてください。ありがとうございました」と舞台挨拶を締めくくった。
ついに東京国際映画祭で日本お披露目となった『PERFECT DAYS』は10月24日(火)~ 30日(月)TOHOシネマズ日比谷にて特別先行上映。12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
PERFECT DAYS
2023年12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
10月24日(火)~ 30日(月)TOHOシネマズ日比谷にて特別先行上映
STORY
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬
製作:柳井康治
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンド
2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/スタンダード/124分/G
原題:『PERFECT DAYS』
邦題:『PERFECT DAYS』
© 2023 MASTER MIND Ltd.
公式サイト perfectdays-movie.jp
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