第35回東京国際映画祭で主要3冠獲得、スペインを震撼させた実際の事件に基づく心理スリラー『理想郷』が11月3日(金・祝)より全国順次公開。このたび、映画をいち早く鑑賞した各界著名人たちから絶賛コメントが続々到着した。また、都会から移住してきた夫婦を襲う村人による数々の嫌がらせシーンを集めた、衝撃の特別映像が解禁となった。
都会を離れて田舎で過ごすスローライフに夢を抱き、スペインの山岳地帯ガリシア地方の小さな村に移住したフランス人夫婦のアントワーヌとオルガが主人公となる本作は、名作『わらの犬』(71/サム・ペキンパー監督)でも描かれた“田舎と都会の対立”がテーマ。2010年の発覚から裁判が終わるまでの8年間多くの新聞が報道するなど、スペイン全土に激震が走った実際のある事件をベースに映画化されている。第37回ゴヤ賞で最優秀映画賞、最優秀監督賞など主要9部門受賞し、スペインで2022年に公開された独立映画の興行収入1位を獲得。その後も、第48回セザール賞最優秀外国映画賞をはじめ、世界で56の賞を獲得(2023.8.25時点)するなど好評を博した。
このたび、森達也、斎藤工、筒井真理子、小島秀夫ら各界著名人から本作へ絶賛コメントが寄せられた。実際の虐殺事件を元にした初フィクション監督作『福田村事件』も記憶に新しい映画監督・作家の森達也は、「観終えて余韻に浸り続けている」などとコメント。
昨年の東京国際映画祭で本作を鑑賞している俳優・映画監督の斎藤工は、「あまりにも他を逸する圧巻な悪魔的なエネルギーを客席に放ち、それが未だに内臓に残り続け一年経った今なお消化出来ずにいる」などと、一年前に受けた強烈な体験を振り返りつつコメント。
今年も最新主演作ともに出演作が目白押しの俳優の筒井真理子は「ロドリゴ・ソロゴイェン監督のまなざしは人間の深部を掘り、底知れぬ恐ろしさを浮かび上がらせる」などと、監督の手腕を称えるコメント。
そのほか、黒沢あすか(俳優)、岩井志麻子(作家)、小島秀夫(ゲームクリエイター)、小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)からもそれぞれの言葉で映画への衝撃が語られている。コメント一覧・全文は記事下にて。
また今回、「移住者を襲う嫌がらせセレクション」と題された特別映像が解禁。映画本編の中から、スペインの山岳地帯ガリシア地方の小さな村に移住したフランス人夫婦の、おもにアントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)を襲う村の隣人兄弟による嫌がらせの数々がピックアップされ、村に住む男たちが集うバーで彼らを避けるアントワーヌがシャン(ルイス・サエラ)からかけられた嫌味を捉えた【移住先で洗礼を受ける】、車が故障し立往生していたアントワーヌがロレンソ(ディエゴ・アニード)から車に乗るようと声をかけられるが乗る前に何度も車を発車される【からかわれる】、庭に置いてある椅子に尿をかけられてしまう【庭の椅子を汚される】、アントワーヌと妻のオルガ(マリナ・フォイス)が手塩にかけて育ててきた有機トマトに何かが混入され壊滅的なダメージを受ける【作物を台無しにされる】、そして車で逃げようとするアントワーヌにシャンから鬼のような形相で掴みかかられる【唾を吐きかけられる】…という5つの衝撃シーンを紹介していく。
しかし、この映像では嫌がらせの数々に見舞われるアントワーヌにも、劇中相手を明らかに見下す独り言をつぶやいたり、移住者のエゴを押し付けようとしたり、カメラで隠し撮りをしたりと眉をひそめずにはおれない言動が。そして嫌がらせをするこの隣人兄弟にも事情はあり、この村で一生生きていくしかないという悲哀や移住者によって故郷が脅かされる恐怖なども見え隠れし、映画は後者だけをことさら悪者として描くことはしない。
脚本も務めたロドリゴ・ソロゴイェン監督は、「ヨーロッパの都会人と、スペインの田舎の人間というと、後者がより無知で迷信深く、都会人の方が優れていると考える人が多いかもしれません。でも、彼らの対立を浮き彫りにしていくためには、前者と後者では与えられる機会が不公平なほどに違うということや、人の視野が広がるためには、文化が不可欠であるということも表現したかったのです」とこの対立を描き出す上での狙いを語っている。
隣人兄弟による嫌がらせはますますエスカレート。その先に何が待ち受けるのかは映画館で確かめてみよう。
『理想郷』は11月3日(金・祝)より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネマート新宿ほか全国順次公開。
『理想郷』に寄せられたオピニオンコメント(順不同/敬称略)
森達也(映画監督・作家)
不穏な光と音。そして複数の視線。中盤で定石を外すストーリー。そして女性の強さ。観終えて余韻に浸り続けている。
斎藤工(俳優・映画監督)
去年の映画祭にて偶発的に出逢った本作は
あまりにも他を逸する圧巻な悪魔的なエネルギーを客席に放ち
それが未だに内臓に残り続け一年経った今なお消化出来ずにいる
スペイン北部ガリシアの山村を舞台に
個々の正義・集団心理・同調圧力・地域貧困・地方の過疎化…
人間と言う種族の根幹的な醜悪さや執着故のある種の美しさが何重層にもなって襲って来るが
それは果たして遠くの出来事・物語なのだろうか
混沌とした現代を生きる我々が最も対峙すべき作品の一つと言い切れる
筒井真理子(俳優)
暴力と理性、移住者と地元住民、男性と女性、さまざまな対立の軋みから生まれる憎悪。
ロドリゴ・ソロゴイェン監督のまなざしは人間の深部を掘り、底知れぬ恐ろしさを浮かび上がらせる。技巧は微塵も感じさせないのに緻密で巧みに配置された脚本と演出、卓越した演技に満ちている。俳優たちの見事な演技に触れることができて幸せな時間だった。そして、そのすべてを凌駕するかのようなラスト。生きるということをもう一度考えさせられる傑作。
黒沢あすか(俳優)
"よそ者"と言われ、苦渋の日々を送るアントワーヌ・オルガ夫妻。
都会からの新参者へ注がれる視線は粘り気があり執拗に絡みつく。
『住めば都』という言葉もあるが、それは交流が成立してこそ意味を成すもの。
『郷に入れば郷に従え』を暗に主張してくる者との対話は万策尽きる時を迎える。
人の思考も"発酵と熟成"を繰り返し育てていかなければならない。
ひと匙の愛、誰かが彼らの頭上に振りかけてくれていたらと思わずにはいられなかった。
岩井志麻子(作家)
私は子どもの頃から、漠然と理想郷というのを怖い場所だと思っていた。私が私でなくなりそうだから。という理由が、この映画で初めてわかった。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
強烈なパンチと衝撃を喰らった。痛みとも、哀しみとも体感の違う、未体験のボディ・ブローを。このエンディングは、終演後も観客を映画からは逃してはくれない。ミステリーの“理想”からは大きく外れた結末に、取り返しのつかない“理想郷”の迷宮へと、いつまでも幽閉される。
小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)
自然を愛する夫婦の、夢のような移住生活。ただひとつ、最悪の隣人を除いては。圧倒的に分かり合えない!善意も正義も常識も、すべてが覆る虚しさ。分断が深まる現代社会の、縮図のような映画だった。共感や感動がもてはやされる世の中で、この不穏極まりない作品を作りきった人々の野心にグッと来た。
理想郷
2023年11月3日(金・祝)より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネマート新宿ほか全国順次公開
STORY
フランス人夫婦アントワーヌとオルガはスローライフに夢を抱き、緑豊かな山岳地帯スペイン・ガリシア地方の小さな村に移住する。しかし、地元で生まれ育った村人たちは慢性的な貧困問題を抱えており、穏やかな暮らしとは言えない生活をおくっている。隣人兄弟シャンとロレンソは新参者であるフランス人夫婦をあからさまに歓迎しておらず、彼らに嫌がらせをするようになっていく。その後、兄弟の攻撃はエスカレート。夫婦が大事に育てていた農作物をダメにしてしまうなど、嫌がらせの範疇を超えていく。そんな中、村にとっては金銭的利益となる風力発電のプロジェクトをめぐり、村人と夫婦の意見が対立。敵対関係が激化していき……。
出演:ドゥニ・メノーシェ、マリナ・フォイス、ルイス・サエラ、ディエゴ・アニード、マリー・コロン
監督:ロドリゴ・ソロゴイェン 脚本:イザベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴイェン 撮影監督:アレハンドロ・デ・パブロ
2022年/スペイン・フランス/スペイン語・フランス語・ガリシア語/138分/カラー/シネスコ/5.1ch/原題:AS BESTAS/英題:THE BEASTS/字幕:渡邊一治
配給:アンプラグド 後援:駐日スペイン大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
© Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E,Le pacte S.A.S.
公式サイト unpfilm.com/risokyo
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