名匠ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主演に迎えた『PERFECT DAYS』(公開中)のトークイベント「TALK TALK CINEMA~映画 PERFECT DAYSと映画を楽しむ5つの視点~」が福岡を皮切りに、東京、京都、高知、北海道の全国5箇所で開催中。第2弾として、2月16日(金)に六本木・蔦屋書店でトークイベントが行われ、作曲家・アーティストのオノセイゲンをゲストとして、本作の共同脚本・プロデュースを務めた高崎卓馬とともに、本作と「音楽」をテーマに特別トークが行われた。
『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、数々の傑作を世に送り出し続けてきた名匠ヴィム・ヴェンダース。本作は彼が長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員・平山の日々を描いた作品。昨年12月より公開された本作は、興行収入9億円を突破し、リピーターも多く、公開から2ヵ月近くたった今も劇場は平日土日も変わらず賑わいを見せ、公開劇場も増加し続けている。第96回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされ、受賞の行方にも期待が高まる。
今回のイベント冒頭で、司会者とともに登壇した高崎卓馬は、アカデミー賞ノミネート発表の日を振り返り、「事前にアメリカの配給会社からはずっと“入らないだろう”と言われてたんだけど、ノミネートされていて! めちゃくちゃ嬉しくて思わず監督に電話しちゃったんですよ。電話で話しながら、自分はあまり英語できなかったと気付いて(笑)、慌ててテレビ電話に切り替えて手を振って喜びあいました!」とエピソードを語った。
続いて、トークセッションに登壇した特別ゲストのオノセイゲンは、「主人公がカセットテープを聴くんだけど、その選曲がまた渋くて凄い。映画をみた瞬間、カセットテープのブームがまた来るな、と思いました。あとカメラ!(自前のカメラで撮影しながら)たまたま同じカメラを持っていたんだけど、慌てて2台目を買いました」と茶目っ気たっぷりに語った。
また、高崎は本作の制作過程を振り返り「この映画が、淡々として何にも起きないのに、なんとなく見ていられる理由の一つが“音”。説明的に音をあてるのではなく、見ている人の気持ちをどこかちょっと寄せるように、音を調整している過程をみることができましたね。普段の仕事では、そういうプロセスを見ずに、出来上がったものをチェックすることが多いので、すごく面白い経験でした」と語った。
質疑応答も行われ、オノも「渋い!」とコメントした選曲について聞かれた高崎は「主人公が何で音楽をきいているか考えた時、カセットテープが最高だ、となって。カセットということは、きっと彼が若い時から好きでずっと聞いてた曲を今もきいているのだろう、と。それからは脚本の打ち合わせをしながら“DJタイム”。この場面では彼は何をきいているだろう、と監督と意見を出し合いました。ちなみに金延幸子さんの“青い魚”は監督が使いたい、と案を出してきて、凄くびっくりしました(笑)」と選曲の裏側を語った。
また、オノが「ルー・リードの“Perfect Day”。これはやっぱりすごいよ!」と話すと、高崎は「はじめ僕が使いたいと提案して。でも、映画の編集がある程度できてきた時に、『PERFECT DAYS』というタイトルは、映画の意味を強めすぎているのではないか、と一度タイトルを考えることになったんです。“Perfect Day”という曲も冒頭に入れるとタイトルを強めてしまうし、ラスト部分の曲も決まっていたし、どこで流すか決まらなかったんです。でも最後のピースのように、今のところにぴったりとはまり、これならば映画のタイトルもこのままでいいね、となったんです」と作品タイトルに込められたエピソードを披露した。
また、配役について質問がおよぶと、高崎は「(監督に)動画を見せたりしながらキャスティングしていて。柄本時生さんの動画をみせたら監督も“なんて面白いんだ、絶対に彼がタカシだ!”と喜んだり。そうやって選んでいったら後で、“キャスティングが100点だ!すごいぞ!”って言われましたね(笑)。でも、ヴィム・ヴェンダース監督ならば、とスケジュールを調整してくれる方たちばっかりだったので、理想的なキャストが完成しました」。
最後に、二人の好きなヴィム・ヴェンダース監督映画について質問されると、オノは「『ベルリン・天使の詩』『都会のアリス』『時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース!』『夢の涯てまでも』も好き」と一気に列挙。高崎も「決められない」と悩みながら、「『都会のアリス』は最初にみたヴィム・ヴェンダース監督作品。モノクロでこんなに豊かに描くのかと印象的だった。『パリ、テキサス』も何度もみた。小さいものを大きくみるというのが映画の良さだと思います」と答えつつ、「監督の初期の短編をみると、実験的な作品も多くて。監督の世界をそのまま切り取りたいという願望が伝わってきます。そういう思いからこの人は始まってるんだなっていうのを感じると、なんだかすごくドキドキする、というか。 こうやって、1人の映画作家の人をずっと時系列の他追い直すのも、とても面白いです」と改めてヴィム・ヴェンダース監督の魅力を語った。
『PERFECT DAYS』は全国大ヒット公開中。
PERFECT DAYS
2023年12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
STORY
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬
製作:柳井康治
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンド
2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/スタンダード/124分/G
原題:『PERFECT DAYS』
邦題:『PERFECT DAYS』
© 2023 MASTER MIND Ltd.
公式サイト perfectdays-movie.jp
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