アンドレア・アーノルド監督の最新作『バード ここから羽ばたく』が9月5日(金)より全国公開されるのを記念して「アンドレア・アーノルド監督セレクション」が開催されることが決定した。劇場未公開の2作品『ワザリング・ハイツ 〜嵐が丘〜』と『COW/牛』が8月30日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開される。


世界の片隅を見つめ続け、みずみずしさと躍動感に満ちた映画を生み出し続ける名匠アンドレア・アーノルド。テレビ番組のダンサーとしてキャリアをスタートさせ、映画監督に転身してからはアカデミー賞、カンヌ国際映画祭など錚々たる映画賞に愛されてきた。フローレンス・ピューが「今後一緒に仕事をしたい監督の一人」として名前を挙げ、『アメリカン・ハニー』に出演したシャイア・ラブーフは「アンドレアのためなら何でもする。彼女は他の人が気づかない私を見てくれた」と語り、新作『バード ここから羽ばたく』に起用されたバリー・コーガンは「ずっとアンドレアと仕事をしたいと、何度も言い続けてきた」と他の多くのオファーを断って本作に参加。フランツ・ロゴフスキーは「アンドレアの手がけてきた作品を尊敬しており、ずっと求めてきたものだった」と、どんな役柄でも受けることを決めていたと語るなど、彼女の作品は俳優たちからも圧倒的な支持を集めている。
このたび『バード ここから羽ばたく』の劇場公開を記念して、これまで日本国内では映画祭や配信でしか観られる機会がなかった、突出した個性を放つ2作品が上映される。被写体への圧倒的な信頼に裏打ちされた、“本物”の魅力に触れる映画体験が待っている。
上映作品
『ワザリング・ハイツ ~嵐が丘~』(11)

第68回ヴェネチア国際映画祭 撮影賞受賞
《世界3大悲劇》のひとつ、エミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』。過去に幾度も映像化されてきた古典的名作を、アーノルドが独自の解釈と美意識を駆使して映画化した長編第3作。激しい風が吹きすさぶ荒れ地を舞台に、幼い頃からともに育ったヒースクリフとキャサリンの深すぎる愛情が、周囲の人々を巻き込んで不幸にしていく。自然派のアプローチで知られるアーノルドは、不条理なほど激しい愛憎劇の源泉を厳しい地理環境と主人公の幼少期に見出し、最も泥と濃霧にまみれ、野蛮で狂おしい『嵐が丘』を生み出した。出自が不明の主人公ヒースクリフ役に黒人俳優を起用したことも話題となった。

【STORY】 ヨークシャーの荒れ地に佇む屋敷“嵐が丘”の主人アーンショーが、ひとりの孤児を連れ帰る。少年はヒースクリフと名づけられ、アーンショーの娘キャサリンと一心同体のような強い絆で結ばれるが、キャサリンは裕福な家の息子エドガーと結婚してしまう。出奔したヒースクリフは数年後に大金持ちになって舞い戻り、再びキャサリンの前に現れるが……。
原作:エミリー・ブロンテ「嵐が丘」 出演:ジェームズ・ハウソン、カヤ・スコデラーリオ
2011年/イギリス/129分/英語/4:3スタンダード/5.1ch/原題: WUTHERING HEIGHTS/日本語字幕:森彩子
© 2011 Wuthering Heights Films Limited Channel Four Television Corporation and The British Film Institute. All Rights Reserved
上映作品
『COW/牛』(21)

第74回カンヌ国際映画祭プレミア部門出品
動物に並々ならぬ愛着を抱き、常に人間を自然と背中合わせに描いてきたアーノルドが、酪農場の一頭の乳牛に密着して、4年がかりで完成させたパワフルなドキュメンタリー。ナレーションやテキストによる説明を一切排し、われわれ観客はまったく新しい視点から家畜という存在と向き合うことになる。シンプルに畜産や動物について考えることもできれば、突然訪れる衝撃的な展開に、動物と人間の共生や社会批評や警鐘など、さまざまな寓意や鮮烈なメッセージを見出すことも可能だろう。現時点で唯一のドキュメンタリー作品でありながら、物語を一義的な解釈から解き放つアーノルド流の映画術が冴え渡る。

【STORY】 大規模酪農場で飼育されているホルスタイン・フリーシアン種のルマは、一頭の雌牛を出産する。やがてルマは子牛から離され、搾乳機に繋げられ、餌を食み、放牧されて走り回り、種付けされ、また子を生む。カメラは極力牛の目線の高さに据えられ、農場の日々の営みと、家畜たちの日常が綴られていく。ルマの物言わぬ瞳が語りかけているものとは?
2021年/イギリス/98分/英語/ビスタ/5.1ch/原題:COW /日本語字幕:林かんな/字幕協力:東京国際映画祭© Cow Film Ltd & British Broadcasting Corporation 2021
上映情報
『ワザリング・ハイツ 〜嵐が丘〜』
『COW/牛』
公開表記:8月30日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開
提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:arnold-film.com
アンドレア・アーノルド プロフィール
1961年生まれ、イギリスのケント州出身。1980年代に音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」にダンサーとして出演するなどテレビ業界で活動した後、アメリカン・フィルム・インスティチュートで映画を学ぶ。1998年、短編映画「The Milk(原題)」で監督デビュー。「Wasp(原題)」(03)が第77回アカデミー賞で短編映画賞を受賞する。初長編映画『Red Road(原題)』(06)、長編第二作『フィッシュ・タンク』(09)、第四作『アメリカン・ハニー』(16)で三度、カンヌ国際映画祭審査員賞に輝く。ほかの監督作に『ワザリング・ハイツ ~嵐が丘~』(11)、東京国際映画祭に出品されたドキュメンタリー『牛』(21)がある。スカーレット・ヨハンソン主演のFBIスリラー『Featherwood(原題)』が準備中である。
バード ここから羽ばたく
2025年9月5日(金)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国公開
監督・脚本:アンドレア・アーノルド
出演:ニキヤ・アダムズ、バリー・コーガン、フランツ・ロゴフスキ
2024年|イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ|英語|119分|ヨーロピアンビスタ|5.1ch|原題:BIRD |日本語字幕:石田泰子
提供:ニューセレクト|配給:アルバトロス・フィルム
© 2024 House Bird Limited, Ad Vitam Production, Arte France Cinema, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Pinky Promise Film Fund II Holdings LLC, FirstGen Content LLC and Bird Film LLC. All rights reserved.
公式サイト bird-film.jp
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