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唯一無二の映画監督レオス・カラックス初期傑作3作品が4Kレストアで2026年1月より連続公開されることが決定した。26歳の若さでルイ・デリュック賞、ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー賞に輝きカラックスの評価を決定づけた『汚れた血』が1月10日(土)から、“ゴダールの再来”とカンヌを沸かせた長編デビュー作『ボーイ・ミーツ・ガール』が1月31日(土)から、カラックス最大の衝撃作『ポーラX』が2月21日(土)から、ユーロスペースほか全国にて4Kレストア版で劇場公開される。あわせて、3作品のポスタービジュアルとシーン写真が解禁された。

上映作品

『汚れた血』 1月10日(土)より公開

どこまでも加速する一方通行の愛
極限まで美に徹した、鮮烈な色彩のフィルム・ノワール
25歳の若さで作家としての評価を決定づけたカラックス長篇第2作

鮮やかな才能を炸裂させ、作家としての評価を決定づけたレオス・カラックス長編第2作『汚れた血』。1986年度ルイ・デリュック賞をはじめ、第37回ベルリン国際映画祭のアルフレッド・バウアー賞(主に若手監督に与えられる銀熊賞、初回受賞作)、セザール賞3部門ノミネート(主演女優賞、新人女優賞、撮影賞)と高い評価が相次ぎ、名実ともに80年代後半を代表する「新しいフランス映画」となった(ロンドンで"The Night Is Young"の題で公開)。

愛のないセックスで感染する病気が蔓延する近未来のパリ。父の不可解な死の後、アレックス(ドニ・ラヴァン)は父の友人マルク(シェル・ピコリ )から犯罪に誘われ、マルクの愛人アンナ(ジュリエット・ビノシュ)に魅かれてゆく…。

ドニ・ラヴァンが再び主人公アレックスを演じ、フィルムノワールの設定と結ばれない男女の三角関係を、凝りに凝った映像でスピーディかつ衝撃的に描いた。デヴィッド・ボウイの「Modern Love」をバックにドニ・ラヴァンが走り続ける長回しシーンやラストのジュリエット・ビノシュの疾走など映画史に残る名シーンとされる。フランス本国の入場者数は50万人に及び、日本でも熱狂的ファンを生んだ。マイムや街頭演劇の出身で道化芝居やサーカスの経験があるドニは本作でも手品、トンボ返りなどを見せ、『ボーイ・ミーツ・ガール』に続き孤独感と一途さをたたえた「カラックス的主人公」を見事に演じた。マルクの情婦でアレックスの憧れの女となる美しいヒロイン・アンナにはジュリエット・ビノシュ。清楚で魅惑的な彼女が前髪を息で吹き上げるポーズは強く記憶に残る。本作の演技でフランス映画界注目の女優となりシュザンヌ・ビアンケッティ賞(最も有望な新人女優賞)も受賞、すぐに『存在の耐えられない軽さ』(88年)などで国際的女優に。『トリコロール/青の愛』(93年)でヴェネチア国際映画祭女優賞・セザール賞主演女優賞を、『イングリッシュ・ペイシェント』(96年)でアカデミー助演女優賞ほか多数の女優賞を獲得し、さらに活躍の幅を広げた。

『汚れた血』のポスタービジュアルは、鈍色の雲で覆われた空の下、ジュリエット・ビノシュ演じるアンナが飛行機のように手を広げ疾走する名シーン。ポスターには“血”の赤が印象的にあしらわれ、<愛が加速する>というキャッチコピーが添えられた、一途なアレックスを想いながら重力に逆らい滑走路を飛び立とうと走るアンナの姿が写し出されている。

3点の場面写真では、『汚れた血』を象徴するジュリエット・ビノシュが疾走するカットをはじめ、アンナとアレックスの若さ故の危うさと純粋な眼差しが美しい2ショットや、歳の離れたマルクを愛し自分には振り向いてくれないアンナを見つめるアレックスの写真からは交錯する3人の関係性が見てとれる。


『ボーイ・ミーツ・ガール』 1月31日(土)より公開

夢の断片のように美しいモノクロームの映像
夜のパリをさまようアレックスの恋
レオス・カラックスすべての出発点、アレックス3部作の始まり
若き才能の出会いが生んだ奇跡の長篇デビュー作

1984年カンヌ国際映画祭。100本近い新作から選ばれた「批評家週間」の7本にレオス・カラックスの初長編『ボーイ・ミーツ・ガール』が入っていた。ドニ・ラヴァン演じるアレックス(カラックスの本名)を主人公とする、カラックスの出発点となる長編デビュー作だ。当時すでに珍しかった白黒作品だったが、上映後にわかに注目を集め一部プレスは「カンヌの驚くべき発見」「ゴダールの再来」と報じた。

1960年生まれのカラックスが『ボーイ・ミーツ・ガール』(83年)を監督したのは22歳のときだった。カンヌ映画祭ではヤング大賞を受賞し「神童(ヴンダーキント)」「恐るべき子供(アンファン・テリブル)」と騒がれ始め、多くの国際映画祭にも招待、85年度シネデクヴェルト(映画発見)賞も受賞した。

「二人の名はアレックスとミレーユ。1960年生まれ、パリに住む。二人はまだ知りあっていない。彼はすでに彼女を愛している。だがそれは遅すぎた。」(オリジナル・プレスのシノプシス)

カラックスが愛読するセリーヌ(1894-1961)の『なしくずしの死』の書き出しをゆっくりと読む子供のような不思議な声から映画は始まり、夜のセーヌ川へ。フロントガラスが割れた車の母子、「お別れを言いに来たの」と軽快な曲が流れる(ジョー・ルメールが歌うゲンズブールの「手ぎれ」)。河岸のトマとアレックスへと、別れる者たちの連鎖で物語が進む。普通の映画とはかなり異なった手探りの初々しい語り方、詩的で静かな独白的語りのなかで、失恋したアレックスとミレーユの偶然の出会い、一目惚れ、そして思わぬ悲劇が、コップの水が静かに溢れ出すような緊張感で語られていく。物語の一こまというより記憶か夢の断片のようだ。モノクロームの世界は日常の光景を別の美しさに転じる。どこまで現実でどこから幻想かわからない夢うつつの本作にふさわしいトーン。

ドニとカラックスの出会いから生まれたアレックスは形を変えながら『ポンヌフの恋人』まで3作の主人公となる。また、カラックスとの仕事で名を知られることになる撮影のジャン=イヴ・エスコフィエ(1950-2003)との出会いも『ボーイ・ミーツ・ガール』だった。

『ボーイ・ミーツ・ガール』のポスタービジュアルは、アレックスとミレーユがパーティーで出会い、互いの恋について語らうシーンから切り取られている。一目で心奪われたアレックスはうたた寝するミレーユの短く切られた髪を撫でる。ふと目を覚ましたミレーユは歌を口ずさみ、物憂げに遠くを見つめながら“彼”の話をする。アレックスは彼女の声に耳を傾けている。心のわだかまりを吐露したミレーユはアレックスの指に触れる。<恋は夜生まれる>アレックスが恋に落ちたミレーユとの出会いを封じ込めたビジュアルとなっている。

場面写真では、アレックスとミレーユが言葉を交わした初めての出会い、電話ボックスでミレーユに電話をかけるアレックスの姿が穴の空いたガラス窓から伺える不可思議なカット、「話したくない」と家を出ていった恋人とインターホン越しに話す複雑な表情のミレーユ、モノクロが美しい3点となっている。


『ポーラX』 2月21日(土)より公開

『ポンヌフの恋人』から8年の沈黙を破り発表されたカラックス最大の衝撃作
ハーマン・メルヴィルの問題作「ピエール」を映画化

『ポンヌフの恋人』(91年)から8年、レオス・カラックスは『ポーラX』で復活する。19世紀半ばのアメリカ小説、ハーマン・メルヴィル(1819-91)の「ピエール」(1852)の映画化で、小説の仏題"Pierre ou les ambiguité" (ピエール、あるいは曖昧なるもの)の頭文字Polaに謎のXをつけた暗号だった。1998年12月、翌年のカンヌ国際映画祭正式コンペティション出品作の「1本目」として突然発表され、映画祭側の期待と歓迎を表わすものと話題になった。

カラックスは全作品の脚本を書いてきたが、小説の映画化は初である。原作「ピエール」は「白鯨」の翌年にメルヴィルが熱狂のうちに書き上げた長編で、発表当時あまりに背徳的で虚無的な内容のため「メルヴィル発狂す」と報じた新聞まであった。語り手メルヴィルとピエールが一体化していくような特異な怪物的作品で、カラックスは18歳の頃に読み「自分のために書かれたかのような奇妙な感覚」を抱いたという。ストーリーや役名、金髪ルーシー(本作ではフランス読みのリュシー)と黒髪イザベルの対比も原作通りだが、現代のパリに設定を変え、二人の絶望の深み、そしてその果てにあるあらゆる愛憎あらゆるしがらみからの超越を、壮絶なロマンティシズムの物語として描いた『ポーラX』は、20世紀の映画シーンの終わりにカラックスが発した魂のメッセージだった。

裕福で満ち足りた田園生活を送るピエール(ギヨーム・ドパルデュー)と母マリー(カトリーヌ・ドヌーヴ)。そこに片言のフランス語で「姉」と称してボスニア難民イザベル(カテリーナ・ゴルベワ)が闇の世界から現われ、ピエールはイザベルの抗しがたい魅力に引き寄せられ、母も婚約者も家督も全て捨てて彼女とパリに出る。ピエールとイザベル、螺旋状の暗闇を深く下降しながら強烈に求め合う二つの魂、闇の中で真実を探すべく絡み合う肉体。この二人の激しく疾走する愛をカラックスは息もつかせぬエモーショナルな映像と音でラストまで描き切る。

主演のギヨーム・ドパルデュー(1971-2008、ジェラール・ドパルデューの息子)とカテリーナ・ゴルベワ(1966-2011、カラックスのパートナー)が困難な役柄を体当たりで演じ、ピエールが姉と呼ぶ母をカトリーヌ・ドヌーヴが演じ前半と後半で極端な変化を見せる。

『ポーラX』のポスタービジュアルは、闇を纏い憂いを湛えたイザベルと、黄金色の田園地で彷徨うピエール、異なる世界にいたふたりを象徴的に捉えたもの。<破滅に至る愛>運命に翻弄され、絶望へと吸い込まれていくふたりを予見する言葉が添えられたビジュアルとなっている。

場面写真は、イザベルがピエールの頭を膝に抱き抱え、奈落に落ちていくふたりが互いを癒すように体温を求め合うカット、街へ来たイザベルとピエールが群衆のなかで肩を並べて歩くシーン、そして、着飾り正装したパーティー会場によれたシャツで怒りの表情を湛え乗り込むピエールの姿が切り取られている。

まとめ(注目ポイント)

  • レオス・カラックス監督の初期傑作3作が4Kレストアで連続公開。
  • 『汚れた血』『ボーイ・ミーツ・ガール』『ポーラX』が上映決定。
  • 1月10日より『汚れた血』を皮切りにユーロスペースほか全国にて順次公開。
  • 各作品のポスタービジュアルと場面写真が解禁。
作品情報

汚れた血
2026年1月10日(土)からユーロスペースほか全国にて4Kレストア版で劇場公開

ボーイ・ミーツ・ガール
2026年1月31日(土)からユーロスペースほか全国にて4Kレストア版で劇場公開

ポーラX
2026年2月21日(土)からユーロスペースほか全国にて4Kレストア版で劇場公開

『汚れた血』
監督・脚本:レオス・カラックス/撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ/出演:ジュリエット・ビノシュ、ドニ・ラヴァン、ミシェル・ピコリ 1986年/フランス/カラー/120分/DCP

『ボーイ・ミーツ・ガール』
監督・脚本:レオス・カラックス/撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ/出演:ミレーユ・ペリエ、ドニ・ラヴァン 1983年/フランス/モノクロ/104分/DCP

『ポーラX』
監督・脚本:レオス・カラックス/撮影:エリック・ゴーティエ/出演:ギョーム・ドパルデュー、カテリーナ・ゴルベワ、カトリーヌ・ドヌーヴ 1999年/フランス・ドイツ・スイス・日本/カラー/135分

配給:ユーロスペース

公式サイト http://carax4k.com

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