ロベルト・ロッセリーニの『ドイツ零年』(1948)と、ジャン=リュック・ゴダールの『新ドイツ零年』(1991)の2作品が、「特集 ロッセリーニ×ゴダール[2つのゼロ年]」と題して12月20日(土)より全国順次公開。このたび、『ドイツ零年』より本編映像の一部が解禁、さらに文化人の推薦コメント、イベント情報も到着した。
ネオレアリズモ映画の最高傑作の一つである『ドイツ零年』は、父と兄に代わってお金を稼ぐため、廃墟のようなベルリンの町をさまよう12歳の少年エドムントが主人公。かつての担任教師でナチを信奉するエニングとの偶然の再会によって、エドムントに深刻な事態が引き起こされる……。1948年のロカルノ国際映画祭で金豹賞および最優秀オリジナル脚本賞を受賞している。
ゴダールの『新ドイツ零年』は、西側のスパイとして30年もの間、東ドイツに潜伏していたレミー・コーション(エディ・コンスタンティーヌ)が、ベルリンの壁崩壊を機に徒歩で「西」へ向かいながらさまざまな象徴的人物と出会う姿を描く。ロードムービーの形をとる一方で、『ドイツ零年』からの抜粋映像を含むさまざまな映画、音楽、絵画、文学、哲学を引用しながら、ドイツの過去と現在をめぐる思弁が展開されていく。
2人の巨匠が描く[2つのゼロ年]が、ドイツの敗戦から80年、東西ドイツ再統一から35年となる2025年に、スクリーンに甦る。
このたび公開されたのは、『ドイツ零年』の主人公エドムントが、戦災孤児の少年少女とともに総統官邸を見物中の連合軍兵士にヒトラーの演説レコードを密売するシーン。元教師エニングの指示によるものだが、生活に困窮したエドムントは目先の駄賃のために闇商売に手を染めてしまう。蓄音機から流れるヒトラーの声が響きわたる総統官邸をはじめ、瓦礫と化した戦後ベルリンの光景や人々の姿も本作の大きな見どころだ。

© Cinecittà Luce, CSC - Cineteca Nazionale, Cineteca di Bologna, Coproduction Office.
あわせて文化人からの推薦コメントも到着。作家・フランス文学者の小野正嗣は「零から始めるとは、無垢の大地の上に希望に満ちた未来を思い描くこと? 残念ながらそうではない、と二つの零年——残酷な零年と困惑の零年——は告げる。それは何よりも、瓦礫から、それ以前に積み重ねられてきた途方もない犠牲から決して目を背けないことなのだと。」と寄せている。ほかに作家・映像作家の中村佑子、爆音映画祭プロデューサー・映画批評家の樋口泰人、批評家の佐々木敦からも到着している。コメント全文は記事下にて。
なお、シアター・イメージフォーラムでは上映後トークイベントの実施が決定。12月20日(土)『新ドイツ零年』13:50回に映画監督の筒井武文、27日(土)『ドイツ零年』13:50回に日本大学文理学部教授・ドイツ映画研究の渋谷哲也をゲストに招く。
さらに、公開初日より劇場用パンフレットの発売も決定。パンフレットは全88ページで、フランス文学者・学習院大学名誉教授の中条省平、映画評論家の遠山純生、映画監督の清原惟、そして筒井武文、渋谷哲也らによる寄稿のほか、映画研究者で特にゴダール作品に造詣の深い堀潤之による『新ドイツ零年』採録シナリオを掲載。あわせて本特集のB2ポスターも発売される。

コメント ※敬称略・順不同
零から始めるとは、無垢の大地の上に希望に満ちた未来を思い描くこと?
残念ながらそうではない、と二つの零年——残酷な零年と困惑の零年——は告げる。
それは何よりも、瓦礫から、それ以前に積み重ねられてきた途方もない犠牲から決して目を背けないことなのだと。
小野正嗣(作家・フランス文学者)
父のため、家族のために、と罪を犯した少年の彷徨いは、やがて瓦礫そのものになる。
傷だらけだが、そこから動くこともできない。闇のなかを歩く少年の背中を、即物的に捉えるショットの壮絶さに息を呑んだ。
彼の背中は、今という時代にまっすぐつながっている。
中村佑子(作家/映像作家) ※『ドイツ零年』
もし絶対的な「零」があるとしたらそれはロッセリーニの映画の風景以外にあり得ない。
瓦礫の街、そこを生きる人々、そこに木霊する音。
ひたすら強くそこにありわれわれを引き寄せともに生き続ける巨大な重力としての映画。
まだ何も終わっていない。
樋口泰人(爆音映画祭プロデューサー/映画批評家) ※『ドイツ零年』
その生涯を通して「映画」に聳え立つ沢山の「壁」に挑み、
「壁」を壊してみせたゴダールによる「ベルリンの壁崩壊」へのコメンタリー。
ロッセリーニへの敬慕に満ちた哲学的スパイ映画。見て、聴いて、考えろ!
佐々木敦(批評家) ※『新ドイツ零年』
まとめ(注目ポイント)
- 「特集 ロッセリーニ×ゴダール[2つのゼロ年]」公開ロッセリーニの『ドイツ零年』とゴダールの『新ドイツ零年』の2作品が、12月20日より全国で順次公開。
- 『ドイツ零年』本編映像が解禁少年エドムントが、ヒトラーの演説レコードを兵士に密売するシーンが公開された。
- 小野正嗣ら文化人が絶賛作家・フランス文学者の小野正嗣や中村佑子らが、本作への推薦コメントを寄せた。
- 上映後トークイベントも決定12月20日に筒井武文、27日に渋谷哲也を招いたトークイベントがイメージフォーラムで行われる。
特集 ロッセリーニ×ゴダール[2つのゼロ年]
2025年12月20日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
『ドイツ零年』
© Cinecittà Luce, CSC - Cineteca Nazionale, Cineteca di Bologna, Coproduction Office.
『新ドイツ零年』
© BRAINSTORM 1991. Licensed through ECM Records GmbH
配給:ザジフィルムズ
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