第78回カンヌ国際映画祭にてパルムドール(最高賞)を受賞したイランの巨匠ジャファル・パナヒ監督の最新作『シンプル・アクシデント/偶然』が5月8日(金)公開。このたび、主人公の抑えきれない復讐心が暴走していく緊迫のシーン映像と、撮影当時のイラン情勢について語ったパナヒ監督のインタビューテキストが解禁された。
本作は、不当に刑務所に投獄された人々が復讐を果たそうと試みる姿を、スリリングかつユーモアたっぷりに描いた復讐劇。監督自身の投獄経験や、同じ境遇の人々の声から着想を得て映画化され、予測不能の物語に渦巻く重厚なスリルと深遠なミステリーが交錯し、“魂の叫び”がほとばしる衝撃のクライマックスへと突き進む。ユーモアと緊迫感に満ちた社会派サスペンスの最高峰ともいえる一本となっている。
今回解禁された本編映像は、ある男を荒野に埋めようとする主人公ワヒドの姿を捉えたもの。過去に、自らの人生を理不尽な暴力によって奪った男と偶然再会したワヒドは、車でその後を追い、怒りに震えながら男を拘束する。「黙れ、人でなし」「埋めてやる」「ろくでなしめ」と罵倒を浴びせつつ、自ら掘った穴へと男を埋めようとするが――。抑えきれない復讐心が暴走していくシーンとなっている。

本作には主人公ワヒドのほか、イラン政府によって理不尽に収監された多くの人物が登場する。「特定のモデルはいるのか?」という質問に対し監督は、「登場人物は架空だが、彼らの物語は実在の囚人たちの体験に基づいている」と説明。「復讐心に駆られる者もいれば、時間をかけて未来を模索する者もいる。政治に関心を持つ者もいれば、無関心のまま偶然捕まる者もいる。主人公ワヒドはその最後のタイプだ」と語る。
そして、作中の登場人物たちは多様な反体制グループを象徴しており、同じ立場にありながらも思想の違いから衝突を起こす姿も描かれているが、監督は「ワヒドはただ賃金を要求しただけの労働者だった。しかし政権は人々を区別しない」と述べ、作品が現実社会と地続きであることも強調する。
監督はまた、2022年にヒジャブの着用方法を巡って逮捕・拘束され、死亡したマフサ・アミニをきっかけに広がった抗議運動「女性、命、自由」にも言及。政府への拒絶が社会に広がった一方で、「その先に置き換わる明確な政治モデルはまだ定まっていない」と現状を語っている。
撮影当時のイランについては「多くの女性がヒジャブを着けず公共の場に出るなど、市民的不服従が可視化されている。数年前には考えられなかったことだ」と説明。「映画で女優たちが髪を覆わず路上で撮影した場面は、いまの現実を反映している。変革をもたらしたのはイランの女性たちだ」と強調し、『シンプル・アクシデント/偶然』は、個人の偶然の物語を通して、揺れ動き続けるイラン社会の現実を映し出す作品にもなっていることを伝えている。
まとめ(注目ポイント)
- 映画『シンプル・アクシデント/偶然』5月8日(金)公開第78回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した、イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督が放つ社会派サスペンス。
- 抑えきれない復讐心が暴走する緊迫の本編映像が解禁理不尽に人生を奪われた主人公ワヒドが、怒りに震えながら男を荒野の穴に埋めようとするスリリングなシーンを活写。
- 現実のイラン情勢とリンクする監督インタビュー到着登場人物は実在の囚人の体験がベース。2022年の抗議運動をはじめ、女性たちが変革をもたらす社会のリアルを証言。
シンプル・アクシデント/偶然
2026年5月8日(金)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開
監督・脚本:ジャファル・パナヒ 『白い風船』『チャドルと生きる』『人生タクシー』『熊は、いない』
出演:ワヒド・モバシェリ、マルヤム・アフシャリ、エブラヒム・アジジ、ハディス・パクバテン、マジッド・パナヒ、モハマッド・アリ・エリヤ
2025年/フランス・イラン・ルクセンブルク/ペルシャ語/103分/日本語字幕:大西公子/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
配給:セテラ・インターナショナル/協力:ユニフランス
©LesFilmsPelleas
公式サイト simpleaccident.com




