『熱帯魚』『1秒先の彼女』で知られるチェン・ユーシュン監督の最新作であり、第62回金馬奨にて最優秀作品賞を含む最多4冠受賞を果たした映画『霧のごとく』が5月8日(金)より全国公開。このたび、本編冒頭映像が解禁された。また、映画監督の山下敦弘、大九明子、深田晃司、歌手の一青窈、小説家の温又柔ほか、各界の著名人から推薦コメントが到着した。
本作の舞台は1953年(民国42年)、戒厳令下の台湾。今回解禁された冒頭映像では、白色テロにより追われる身となった兄・阿雲(アユン)と、その妹・阿月(アグエー)が、サトウキビ畑に身を潜めながら言葉を交わす一場面が映し出されている。
病床の母を気遣いながらも阿雲は阿月に腕時計を差し出し、静かに語りかける。「つらくて耐えられない時は、こんなふうに時計の針を早めてみろ」来年、再来年、5年後、10年後――。まだ見ぬ未来へと針を進めることで、“今”を乗り越えようと阿月を励ます阿雲。兄の言葉に応えるように、阿月もまた、思い描いた未来を言葉にしていく。学校に戻りたい。大学に行きたい。やがて先生になり、家庭を持つ。
一方、阿雲は将来画家になり、絵本を描きたいという夢を語り、こう告げる。「その頃までには、世界から戦争が消え、人々は自由で平等。迫害も弾圧もない。」しかし次の瞬間、現実は無慈悲に二人を引き裂く。追っ手の足音が迫り、ささやかな時間は一瞬で崩れ去っていく…。
先の見えない激動の時代のなかで、それでも未来を信じようとする兄妹の姿と、彼らに降りかかる運命を予感させる本編映像となっている。
また、本作に心動かされた各界著名人からの熱い推薦コメントが到着。映画監督の山下敦弘は「人間を見つめる眼差しはいつものチェン・ユーシュンなのに、映画のラスト、不思議と今までとは違う涙が溢れました。」と、チェン・ユーシュン監督の新たな境地として本作の感動を語る。
また、映画監督の大九明子は「ひどい時代の間違った政治をエンターテインメントに昇華していて、どんなかたちでも暴き描き続けて残してやるんだという表現者としての意地のようなものを感じました。」と、映画監督としての強い共鳴を寄せた。
さらに、映画監督の深田晃司は「台湾の無法松(?)こと趙公道の人物像が最高で、ずっと見ていたくなるが、その期待に見事に応えてくれる脚本に嬉しくなった。」と、ウィル・オー演じる趙公道のキャラクターの魅力を賞賛した。
歌手の一青窈は「台湾人の懐っこさと優しいおせっかいの根源が痛いほど詳らかに見てとれます。」と、本作に映し出される人々の温かさに言及し、小説家の温又柔は「不幸な未来を招き寄せないために、不幸な過去を忘れまいとすることは、現在を生きる私たちみんなの義務だ。」と、本作が現代に投げかける切実な意義を言葉にしている。コメント全文・一覧は以下のとおり。
著名人コメント一覧 ※順不同・敬称略
人間を見つめる眼差しはいつものチェン・ユーシュンなのに、映画のラスト、不思議と今までとは違う涙が溢れました。
たぶんそれは台湾人としてあの時代に真摯に向き合った監督の覚悟に涙したんだと思います。
優しくて、可愛くて、ちょっと残酷なチェン・ユーシュン作品をこれからも観続けたいと思います。
山下敦弘(映画監督)
無垢で不器用な主人公が次から次へとひどい出来事に見舞われるもんだから、見てる私は心配で心配で絶えずスクリーンに吸い寄せられてしまう。エンドクレジットの優しいメロディと歌声に胸が熱くなりました。ひどい時代の間違った政治をエンターテインメントに昇華していて、どんなかたちでも暴き描き続けて残してやるんだという表現者としての意地のようなものを感じました。
大九明子(映画監督)
切実な時代を背景にしながら、センセーショナルに走らず一定のユーモアを失わないまま、見事なバランス感覚でそこにある暴力と希望を描き切っていた。
台湾の無法松(?)こと趙公道の人物像が最高で、ずっと見ていたくなるが、その期待に見事に応えてくれる脚本に嬉しくなった。
深田晃司(映画監督)
台湾人の懐っこさと
優しいおせっかいの根源が
痛いほど詳らかに見てとれます。
運命に翻弄されながらも
人を信じることを貫いた
青年の純愛です。
大切なことが霧にかかって見えなくなったときに
ぜひ、おすすめしたい作品。
この景色があなたを人間として
いつまでも留めてくれるでしょう。
一青窈(歌手)
政治に抹殺された真実の数々が、政治に推奨されて日の目を見るまでに、台湾では長い年月を要した。今では、多くの人々が、時代の犠牲となった力なき者の悲哀に涙する。この映画が、その証拠の一つだ。
歴史は警告する。覚えておけ。さもなくば、また巻き戻すぞ。
銃殺する側の末裔だろうが、銃殺された家族の子孫だろうが、関係ない。不幸な未来を招き寄せないために、不幸な過去を忘れまいとすることは、現在を生きる私たちみんなの義務だ。
温又柔(小説家)
台湾の戒厳令は38年の長きにわたった。劇中で強調される「時の流れ」はいつの日か訪れる「夜明け」までのカウントダウンを示すものだ。その間、「白色テロ」により不当に未来を奪われた人々の犠牲のうえに台湾の人々は生きている。そこにあるのは悲哀だけではなく、次の世代の人々に託された「希望」である。時を超えて繋がれていく時計は、その「希望」を抱えながら刻んだ「時の流れ」を象徴するものだ。
野嶋剛(ジャーナリスト、大東文化大学教授)
現代社会を生きる人間たちを描くことで評価を確立した映画作家が、ひとたび自国の歴史とその時代を歩んできた人間たちを題材にした時、それはその作家のフィルモグラフィを代表する名作中の名作となる。これは、台湾の優れた映画作家に特有の運命的な現象のようだ。侯孝賢の『悲情城市』しかり、エドワード・ヤンの『牯嶺街少年殺人事件』しかり。あるいはそこに、魏徳聖の『セデック・バレ』を加えてもいいだろう。そして今、この台湾映画史ならではの特徴に、陳玉勲の『霧のごとく』も加わった。
暉峻創三(映画評論家、大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター)
自由と尊厳が蝕まれた激動の時代でも助け合い、「より良い未来は必ず来る」と信じて生き抜くこと。その抵抗の積み重ねが社会を変えるうねりとなる。たとえ霧に覆われた暗い世でも、人が灯し続ける小さな光が未来へとつながっていくのだと、この映画は我々を優しく、そして力強く鼓舞してくれる。
ISO(ライター)
まとめ(注目ポイント)
- 『霧のごとく』2026年5月8日(金)より全国順次公開第62回金馬奨にて最優秀作品賞を含む最多4冠に輝いたチェン・ユーシュン監督の最新作が全国公開。
- 激動の時代を生きる兄妹の絆を描く冒頭映像が解禁白色テロから逃れ、サトウキビ畑に身を潜めながら未来を語り合う阿雲と阿月の切ない本編冒頭シーン。
- 山下敦弘、大九明子ら各界の著名人から推薦コメント到着映画監督の深田晃司や歌手の一青窈など、各界のクリエイターが本作の魅力を熱く絶賛するコメントを寄稿。
- 1950年代、戒厳令下の台湾を舞台にした希望の物語過酷な運命に翻弄されながらも、ささやかな希望を信じて生き抜こうとする人々の姿を力強く描写。
霧のごとく
2026年5月8日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、Strangerほか全国順次公開
STORY
1950年代、戒厳令下の台湾。白色テロにより反政府分子として捕らえられた兄が台北で処刑されたと知った少女・阿月(アグエー)は、故郷の嘉義から、なけなしの金と兄の形見の時計を手に、遺体を引き取るため一人台北へ向かう。しかし遺体を引き取るには高額な手数料が必要で、途方に暮れてしまう。怪しい男に騙され、遊郭に売り飛ばされそうになったその時、彼女を救ったのは人力車の車夫・趙公道(ザオ・ゴンダオ)だった。中国・広東出身の公道は、国民党軍の元軍人として台湾に渡って以来、故郷へ帰ることもかなわず、その日暮らしの生活を送っている。白色テロで軍の仲間を喪い、人生に行き場を見いだせずにいた彼は、阿月の想いに心を動かされ、手を差し伸べることを決意する。先の見えない時代の激流の中で出会った二人の運命が大きく動き出していく……。
監督・脚本:チェン・ユーシュン
キャスト:ケイトリン・ファン、ウィル・オー、9m88、ツェン・ジンホア、リウ・グァンティン、ビビアン・ソン
2025年│134分│台湾│原題:大濛│カラー│配給:JAIHO/Stranger
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