2023年山形国際ドキュメンタリー映画祭で市民賞(観客賞)を受賞した『わたしの聖なるインド』(映画祭上映時タイトルは『我が理想の国』)が6月6日(土)より劇場公開。このたび、日本版の予告編が解禁された。あわせて、オピニオンコメントが到着した。
2019年12月、インド国内でイスラム教徒を意図的に排除しようとした市民権改正法が制定されると、ジャミア・ミリア・イスラミア大学で反対運動が発生。そこに警官が乱入し、多くの負傷者や逮捕者が出た。その暴力と差別への抗議としてムスリム女性たちが中心となり、国道を封鎖するシャヒーン・バーグでの座り込みが始まる。

本予告編では、その平和的な抗議運動が世代、文化、宗教を超えて広がり、歴史的なムーブメントとなっていく様子を、ムスリムの女性監督が自らのアイデンティティを模索しながら、観る者に語りかけるように映し出している。

また、サヘル・ローズや安田菜津紀らよりオピニオンコメントも到着した。コメント全文・一覧は以下のとおり。


オピニオンコメント(50音順・敬称略)
支持を集めるためにムスリムへの憎悪を煽る政治が、いかなる事態を招くのか。イスラモフォビアが蔓延する本国ではもはや他人事と思えないその帰結に背筋が凍る。権力者はその責任を負わず、マイノリティが一方的に苦しめられるばかりで、横たわる現実はあまりに不条理だ。それでも「この国にいたいなら慎め」というマジョリティの呪縛を打ち消すような、団結した女性たちの非暴力の抗議運動には微かな希望が灯る。「今、傍観していたら何も言えなくなる。行動しないと」という彼女たちの言葉は、国境を越えて、私たちにも向けられている。
―― ISO(ライター)
この作品は、インドの市民権改正法という大きなテーマを扱いながらも、一人の人生の選択や葛藤を通して、その現実を静かに映し出している点が印象的でした。
私自身は食を通してインドに触れてきましたが、同じ国の中に、これほど多様な背景や想いが存在していることを改めて考えさせられます。
特定の立場に寄るというよりも、「知ること」「想像すること」の大切さを感じる作品でした。
―― 印度カリー子(スパイス料理研究家)
「私たちのインドはこんな国だったの?」
属性による排除や分断が進む社会へと投げかけられた疑問は、インドだけのものではない。
これは特定の国の宗教や政治の話ではなく、人間性のもとに連帯する名もなき市民の希望を描いた映画だ。
―― 軽刈田凡平(インド音楽ライター)
『国家が人を選び始めるとき、何が起きるのか』
ある日突然、
自分の存在を証明しなければならなくなる。
その不安と恐れは、想像を超えている。
制度の変化は、決して紙の上だけで起きるのではなく、
社会の「空気」をも変えていく。
声をあげれば「反逆者」と見なされ、
やがて人は沈黙を選ばざるをえなくなる。
その静かな圧力が、
この作品には確かに映し出されていた。
とりわけムスリムの人々、
そして女性たちは、より弱い立場の中で、
自分の居場所を問い続けなければならない。
それでも日常を生きながら、声を枯らさない人々。
「自由とは誰のものなのか」
「この国は誰のためにあるのか」
この作品の問いは遠い出来事ではなく、
いまを生きる私たち自身の問題として受け止める必要がある。
―― サヘル・ローズ(表現者)
山形で上映された時は、「インドのリアルな姿がわかる傑作」として興奮した。だが観直してみると、近年、人々の怒りや祈りをそのまま掬い取った作品は静かに増え、世界中に点在し、互いに響き合いながら、圧政や差別、虐殺に抵抗する“映画による共和国”を形作っているようだ。生命の危険を顧みず、自らの出自でもあるムスリムと女性たちの抵抗運動をカメラで曝け出した監督に、心からの敬意を表したい。必見のドキュメンタリー。
―― 夏目深雪(映画批評家)
人権侵害を訴える非暴力の抵抗運動はどうしていつも暴力的な仕打ちに合うのでしょう?
時代や国を問わず、こういったことは普遍的な問題で、他人事ではない。
―― ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
「私たちは慎みも知っているけど、声の上げ方も知っている!」
ブルカを身に纏いながらインド国旗を掲げて憲法を読む女性たちの姿に衝撃を受けた。100日間・24時間道路を占拠し民主主義を叫んだのは、ごく普通のイスラム教徒のお母さんたちだった。
2020年のデリー暴動は単なる宗教闘争ではなかった。彼女たちが座り込んだシャヒーン・バーグは、平等と人間解放の砦であり、発せられた言葉は愛情と結束に満ち、謳われたのは希望の歌だったことを若き女性監督の目を通して知る。辺野古闘争初期のおばあたちの座り込みがオーバーラップし、何度も胸が詰まる。
男性記者の「報道」からこぼれ落ちる歴史の胎動を掬い上げるのは、やはり女なのだ。世界のドキュメンタリー界で活躍する女性監督たちから目が離せない。
―― 三上智恵(ジャーナリスト/映画監督)
為政者たちは時に特定の集団を「暴徒」「国賊」と恣意的に貶め、差別を政治の道具として振りかざす。家父長制にすがる者たちは、女性たちに「指図」し優位に立ちたがる。この映画で描かれていることは、果たして「遠い」話だろうか。イスラモフォビアの扇動は、私たちのすぐ隣でも起きているのだ。
―― 安田菜津紀(Dialogue for People 副代表/フォトジャーナリスト)
まとめ(注目ポイント)
- ドキュメンタリー映画『わたしの聖なるインド』6月6日(土)公開2023年山形国際ドキュメンタリー映画祭で市民賞(観客賞)を受賞した注目作が、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。
- インドの市民権改正法に抗議するムスリム女性たちの姿を記録2019年12月に制定されたイスラム教徒を排除する法案に対し、非暴力の座り込み抗議を行った人々の歴史的ムーブメントを映し出す。
- サヘル・ローズら各界の識者8名からオピニオンコメントが到着ピーター・バラカン、安田菜津紀など、平和的な抗議運動の普遍性やマイノリティの現実に寄り添う賛同の言葉が多数寄せられている。
わたしの聖なるインド
2026年6月6日(土)より渋谷ユーロスペースにて公開 ほか全国順次
原題:Land of My Dreams
監督・撮影・編集:ノウシーン・ハーン 音楽:クシュ・アシェール 宣伝:リガード 宣伝美術:中野香 配給:きろくびと
インド|2023|ヒンディー語、英語|74 分
©2023 Nausheen Khan
公式サイト landofmydreams-film.com



