デーブ・スペクター、エリザベス女王の国葬は「非常にスムーズで完璧」　映画『プリンセス・ダイアナ』トークイベントに登壇

今年で没後25年となる英国のダイアナ元皇太子妃のドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』の試写会が9月21日（水）に都内で開催され、上映前のトークイベントに TV プロデューサーで海外のセレブ事情にも詳しいデーブ・スペクターと海外セレブリティ誌「FRONTROW」編集長の大柳葵理絵が登壇し、ダイアナ妃や英国王室にまつわるトークを繰り広げた。

本作は世界中で大フィーバーを巻き起こし日本でも高い人気を誇ったダイアナ元皇太子妃の世界初の劇場ドキュメンタリー。アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートを果たした経験を持つ、気鋭のドキュメンタリー作家エド・パーキンズが監督を務め、1981年にチャールズ皇太子と婚約する数週間前から、世界中が悲しみに暮れた突然の死までの16年間が、当時のニュース番組の映像やホームビデオなど、あらゆるアーカイブ映像を繋ぎ合わせて語られ、これまで以上にダイアナを新鮮で身近に感じられるよう構築されている。

この日行われたイベントに登壇したデーブは冒頭から「日本語でよろしいですか？ 今日は戸田奈津子さんがいらっしゃると聞いたので…」とボケて会場の笑いを誘う。海外セレブに関する情報番組などに出演することも多い 2 人だが、意外にも顔を合わせるのはこの日が初めて。

9月8日にエリザベス女王が亡くなり、つい先日、国葬が行われたばかりのタイミングでの試写会となったが、2人はエリザベス女王の崩御と国葬をどのように受け止めたのか？　デーブは「（国葬は）綿密に何十年も前から計画されていたので非常にスムーズで完璧でしたね。古い伝統や習慣、王室のレガシーを上手く見せたと思います。英国はそんなに大きなわけでもないし、以前ほどの影響力はないと思っていましたが、天皇陛下も含めあれだけの王族や首脳が出席して、まだ影響力が大きいなと思いました。イギリス人のアイデンティティも心強くなったと思います。いろんな問題が山積していますが、やはりさすがだなという感じがしました」と印象を口にした。

亡くなったエリザベス女王の功績についても称賛を惜しまず、「二度と現れないであろう素晴らしい人でした。時代の変動と共に 70 年も（国家に）尽くしたわけですから。70 年ですよ！　チャールズ新国王も“見習い”を 70 年ですよ！　普通、お寿司の板前さんだって 10 年ですからね。70 年も待っていたわけで、それはすごいと思いますね。女王はとてもチャーミングでユーモアセンスもあったけど、公務となるとまっすぐでした。一方、チャールズ皇太子は、僕と同じように空気が読めない余計な発言の多い人だったけど（笑）、もうさすがにきちんとするのではないかと思います。やはり、王室に圧倒されますよ、どなたが行っても。圧倒されなかったのはメーガン妃くらいだったのかな…（笑）？ だからダメだったんですよね…」と毒舌を織り交ぜつつ語った。

大柳は、エリザベス女王の国葬について「あまりにも格式の高い国葬で驚きました。各国のセレブリティもエリザベス女王には『会いたい』とおっしゃっていて、実際に会ったら『あまりの気品の高さにビックリした』と言う人も多かったですが、改めて、影響力のある人だったんだなと感じました」と語った。

ダイアナ妃は25年前の1997年8月31日に亡くなったが、デーブは「事故だったので、ニュースとしてまずビックリしましたが、のちのち、どうしてそれが起こることになったのか？ ということや陰謀説が出てきて、どうやったら防ぐことができたのか？ という話も多かったですね」と当時の喧騒を振り返る。そして、36 歳でのあまりにも早すぎる死について「もったいないですよ！」と嘆息。「いま、（息子の）ウィリアム王子とヘンリー王子の確執があって大変ですけど、もしダイアナ妃が生きていればどうにかなっていたと思うんですよ。たぶん、（ヘンリー王子の妃の）メーガン妃をビンタしたんじゃないですか？ 『あの女はやめな！』って言ったと思うんですよ（笑）。ウィリアム王子がそう言って（兄弟の）仲が悪くなったけど、お母さんに言われたら『そうか…』ってなったかも」と想像とユーモアを交えつつ、その死を悼んだ。

大柳は「私はまだ高校生でした。亡くなった時に、ダイアナ妃が 16 年住んだケンジントン宮殿が、花をささげる人であふれかえったんですよね。あまりの花の多さに“花の海”と報道されていたのを覚えています。お花をささげる人たちがみんな泣いていて、ここまで人目をはばからず、人々が泣き崩れる光景は『イギリス始まって以来だ』と言われていたのも覚えています」と当時の衝撃をふり返った。

デーブも「（人々の反応は）予想以上でした。（離婚したので）厳密には肩書きは“プリンセス”ではないんですけど、いまでも“プリンセス・ダイアナ”と言われ“元”とつけないですよね。それくらい、存在が大きかったということ」とうなずいていた。

今回のドキュメンタリー映画について、デーブは「この映画を観て、『なるほど！』と思ったのは、ニュース映像や一般の人が撮った映像、資料をつないで、見事に編集してるんです。（説明をする）ナレーションもレポーターや専門家もいないので、ありのまま、当時のままでつないでいるんです。だから、観る側が（どう受け取るかを）判断できるようになっていて、誘導的なドキュメンタリーではなく、当時にタイムスリップできると思います」と感想を口にする。

この日のトークのために、デーブは私物のダイアナ妃を扱った雑誌を持参しており、それを見ると、婚約から結婚、出産、離婚にいたるまでで、メディアや世間のダイアナ妃に対する論調がいかに変わっていったかがわかるが「この映画を観ると、当時の映像でそれがわかると思います」と強調する。

大柳は「ダイアナ妃が王室に入る前の婚約当時の映像から見られるんですけど、当時は 19 歳。はにかんだ笑顔のピュアな時から、20 歳で結婚されて、公務をこなすにつれて気品やオーラをまとっていく、変化していく様子が見られるというのが、貴重な映像だなと思いました。編集が素晴らしくて、見やすくて見応えがあります。個人的にはファッションも見応えがあって、ダイアナ妃は華やかな着こなし、伝説的なドレスの着こなしもありますが、それも映画に収められています」と見どころを明かしてくれた。

さらにトークは白熱し、ダイアナ妃とチャールズ皇太子の結婚生活の破綻――その“原因”となった、当時のチャールズ皇太子の不倫相手で、現在の妃であるカミラ王妃の話題に。デーブは「最初から（チャールズ皇太子が）ダイアナと結婚するのには無理があったんですよ。それなら浮気しなきゃいいのに…。（映画を通して）チャールズの当時の心境が見えてきますけど、あんなに美人で素敵なダイアナがいるのに（カミラ夫人と不倫するなんて）なんで？ と思っちゃうけど、結論から言うと、男って本当にバカなんですよ（苦笑）」とバッサリ。カミラ王妃との再婚についても「本命だったし、ダイアナ妃と会う前から付き合っていたのでね。普通ならダイアナ妃と結婚するときに縁を切りますよ。チャールズのほうが迫っていたわけで、そんなに好きだったのなら、なんで、ダイアナのようなナイーブな人と結婚したのか…？　傷ついちゃって、本当に見ててつらいですよ！」と感情たっぷりに語る。

大柳は「ダイアナ妃とカミラって対極で、ダイアナ妃は 178 センチもあって、目鼻立ちもハッキリした女優顔で写真でも映像でも“ばえる”んですよ。それに比べてカミラ夫人は言ってしまえば地味で洋服の色あいも地味。ルックスだけでなく性格も地味」と 2 人の王妃が正反対の要素を持った女性であると指摘する。

また、ダイアナ妃の死亡事故をきっかけに、日本でもセレブを追いかける“パパラッチ”という存在が知られるようになったが、デーブは「ダイアナ妃も自信がついてきて、写真を撮られるのが大好きになっていったのが顔に出ている。メディアを利用してもいて、ギブ＆テイクだった」と語る。加熱する取材に対し、マスコミを“悪者”扱いする論調もあるが、デーブは「ダイアナ妃を追いかけたのは、行儀の悪いパパラッチだけでなく普通のメディアもいた。いわゆる知る権利――次の国王になる人の、おとぎ話のようなお嫁さんですので、それは取材はしますよ。でもルールがあって、子どもたちの学校の様子は撮らないし、どこまで近づいていいかもルールがあるし、抗議する機関もある。実は結構、きちんとしてた。言われているほど、悪質ではないと思います」と取材に一定の理解を示す。

大柳も、セレブリティを扱う雑誌の編集長として、取材の在り方やメディアと取材対象の関係性について言及。「名声を得ることでプライバシーがなくなるというのは、現在も続いている問題。いまは SNS の普及でセレブとマスコミ、ファンの関係性がとても近くなっています。著名人も一般の方からコメントが来ることで良いことも悪いこともあり、精神を病んでしまうセレブも後を絶ちません。ですけど、著名人とマスコミとファンの関係はどの時代もセットになっていて、ダイアナ妃もそれは理解していて、わざとカメラマンを呼んだこともあると言われています。実は、いまでも私たちのような会社にセレブリティから『ここにいるから撮ってくれ』と連絡が来ることもあります。そうやって利害関係を築いていくけど、熱量が上がってしまいコントロールできなくなった時にダイアナ妃のような事故が起きてしまう。今回、映画が公開されることで、個人もマスコミも考える機会になると思います」と語った。

また、メディアだけでなく TV の視聴者や雑誌を見る一般人の存在についても触れ「結婚を機に、パパラッチの過熱報道が収まると言われてたけど、逆にどんどん上がっていって、（写真の）金額も上がっていった。それは雑誌にダイアナ妃の写真が載ると、売れるから。ピーク時はダイアナ妃が事故で亡くなる 1 か月前で、恋人のドディと過ごしていた写真で、当時の金額で 6 億円。いまもその金額を超えるセレブはいません」と語り、デーブも、観る側の“責任”について言及。「それが、この映画の一番大きなポイントかもしれません。見る側、視聴者の責任はどこまであるのか？関心がなくなれば、視聴率や発行部数、（WEB の）閲覧数に表れるのでやらなくなる。でも、（数字が）高いままだと、人々が見たがってるからやめられない。人々が好奇心、興味を持っている限りはやるし、誰も興味なければ（写真の）値段も下がる。（映画は）それを一般の方の意見も描いていて、参考になるし、考えさせられます」と説いた。

最後に映画についてデーブは「TV ですと、コメンテーターや司会者がいるし、“めくり”など説明がいっぱいあるけど、この映画は本当に生の素材だけですので、別な感覚で見られると思います。毎日 TV やネットを見てる方の経験とは違う斬新な作りになっていて、説明がなくても、自分で（そこに描かれていることを）判断できるなってこと。みなさんが編集長になる気分で見られると思います」とアピール。

大柳は「閉鎖的な王室にダイアナ妃が入り、いろいろなアイディアや強い意志で切り拓いていったのを見て、とても勇気もらえる作品だと思いますし、女性として意見を持って言うことの大切さを感じます」と語り、トークイベントは幕を閉じた。

『プリンセス・ダイアナ』は9月30日（金）、TOHO シネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー。

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