核戦争の脅威を描き、世界的なセンセーションを巻き起こしたイギリス製アニメーション映画『風が吹くとき』が8月2日(金)より全国順次公開。このたび予告編と追加場面写真10点が解禁となった。また、スタジオジブリの鈴木敏夫からのコメントも到着した。
アニメーション映画『風が吹くとき』は、1986年に英国で制作され、翌1987年に日本でも劇場公開された。「スノーマン」や「さむがりやのサンタ」で知られる作家・イラストレーターのレイモンド・ブリッグズがマンガのようなコマ割りスタイルで描いた同名の原作「風が吹くとき」(あすなろ書房刊)を、自らも長崎に住む親戚を原爆で亡くした日系アメリカ人のジミー・T・ムラカミ(『スノーマン』)監督が映画化した。





今回解禁された約60秒の日本語吹替版予告編は、今回のリバイバル上映にあわせて新たに作られたもの。冒頭、元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズが手がけた楽曲「HILDA's DREAM(ヒルダの夢)」が流れ、牧歌的な田園風景が広がる中、ジムとヒルダ夫妻が平和な日常を送っている。
しかし、ラジオからの「わが国に向けて敵のミサイルが発射されました」という予期せぬ知らせに、夫妻はあわてて家の中にしつらえたシェルターの中へ。デヴィッド・ボウイによる映画タイトルと同名の主題歌「When The Wind Blows(風が吹くとき)」が流れる中、原爆による惨状が露わとなる本作の象徴的なシーンが連なる構成となっており、短いながらも強いインパクトを残す。





また、本作では原爆の被害をリアルに伝えるため、爆風にさらされたガレキなどを実写で描く演出も多く、そうした実験的な要素も見所の一つ。また、ラストでヒルダがタンポポに息を吹きかけると、綿毛とともに自らも蝶となって飛び立っていく描写があるが、これは原作にはない映画オリジナルの描写。夢の中で描かれる生命の象徴としての綿毛が、過酷な現実の描写と対比されるように描かれている。
今回、予告編の解禁と同時に、スタジオジブリの鈴木敏夫からコメントが届いた。当時、雑誌「アニメージュ」の編集長をしていた鈴木は、『風が吹くとき』が日本で初公開された1987年8月号で「緊急特集」として、表紙を含む巻頭14ページを割き、本作を大々的に特集した。コメントの通り、まさに「大冒険」の特集だったと推察される。コメント全文は以下にて。『風が吹くとき』は8月2日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
鈴木敏夫(スタジオジブリ・プロデューサー)コメント
ふたつのことを思い出す。
月刊『アニメージュ』で大特集したこと。
原発の記事も書き、当時としては大冒険だったが、その号は3日で完売した。
もうひとつは、英国版の声優ジョン・ミルズ(※1)のこと。
僕が少年時代から大好きなヘイリー・ミルズ(※2)のお父さんだった。
※1:ジョン・ミルズ(1908-2005):英国の俳優。『風が吹くとき』では声の出演でジムを演じた。デヴィッド・リーン監督作品の常連俳優として、また『ライアンの娘』(70)ではアカデミー賞とゴールデングローブ賞の助演男優賞をぞれぞれを受賞。1973年にサーの称号を得ている。
※2:ヘイリー・ミルズ(1946-):名優ジョン・ミルズの娘で、『ポリアンナ』(1960)でアカデミー賞子役賞、ゴールデングローブ賞有望女性新人賞を受賞。子役時代は多くのディズニー映画に出演した。
風が吹くとき
(日本語吹替版のみの上映)
2024年8月2日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
STORY
イギリスの片田舎で暮らすジムとヒルダの平凡な夫婦。二度の世界大戦をくぐり抜け、子供を育てあげ今は老境に差し掛かった二人。ある日ラジオから、新たな世界戦争が起こり核爆弾が落ちてくる、という知らせを聞く。ジムは政府のパンフレットに従ってシェルターを作り始める。先の戦争体験が去来し、二人は他愛のない愚痴を交わしながら備える…、そして、その時はやってきた。爆弾が炸裂し、凄まじい熱と風が吹きすさぶ。すべてが瓦礫と化した中で、生き延びた二人は再び政府の教えにしたがってシェルターでの生活を始めるのだが…。
1986年/イギリス/カラー/85分/1:1.33(スタンダード)/ステレオ
原題「When the Wind Blows」©︎MCMLXXXVI
提供:コンテンツ・ポテンシャル 後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:チャイルド・フィルム 配給協力・宣伝:プレイタイム
声の出演(カッコ内は日本語吹替版)
ジム:ジョン・ミルズ(森繁久彌) ヒルダ:ペギー・アシュクロフト(加藤治子) ロン(田中秀幸) アナウンサー(高井正憲)
スタッフ
原作・脚本:レイモンド・ブリッグズ 監督:ジミー・T・ムラカミ 音楽:ロジャー・ウォーターズ 主題歌:デヴィッド・ボウイ「When The Wind Blows」 日本語版監督:大島渚 製作:ジョン・コーツ 製作総指揮:イエイン・ハーヴェイ アニメーション:リチャード・フォードリー 美術・レイアウトデザイン:エロル・ブライアント 技術:ピーター・ターナー プロダクション・コーディネーター:アン・ゴドール 特殊効果:スティーブン・ウェストン
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