2020年ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)に輝いた名匠ホン・サンス監督の24作目『逃げた女』が、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほかにて 6月11日(金)より絶賛公開中。このたびホン・サンス監督のインタビューが到着。あわせてメイキング写真も一挙公開された。
『逃げた女』は、2021 年ベルリン国際映画祭で『INTRODUCTION』が銀熊賞(脚本賞)を受賞し、2 年連続して銀熊賞受賞に輝く快挙を果たした注目の名匠ホン・サンス監督と、公私にわたるパートナーの主演キム・ミニ(『お嬢さん』)との7度目のタッグとなる話題作。
今年で監督デビュー25 周年を迎えるホン・サンス監督は、来月開催される第 74回カンヌ国際映画祭の新部門カンヌ・プレミア部門に最新作にして 26 作品目『In Front of Your Face(原題)』を出品。相変わらずのハイペースで新作を発表し続け、世界的注目を集める韓国映画界においてひときわ特異な存在感を放ち続ける映画作家。
『逃げた女』では、5 年間の結婚生活で一度も離れたことのなかった夫の出張中に初めてひとりになり、3人の女友達のもとを訪ね再会する主人公ガミを、キム・ミニが独特の魅力で好演。逃げた女とは誰なのか、いったい何から逃げたのか——? ラストのガミの意外な行動まで目が離せない。
このたび公開されたのは、第 70 回ベルリン国際映画祭でのホン・サンス監督のインタビュー。観客の想像力を刺激しまくる本作の意味深なタイトルについて、また猫の奇跡の名演技の撮影エピソードなどを語っている。
あわせて、ホン・サンス監督と俳優たちが話し込む様子や、焼肉シーンのメイキング、現場で脚本を読むキム・ミニの写真など、一緒に映画作りをしてきた俳優たちとの信頼関係が窺える映画撮影中のメイキングシーンも一挙公開された。
Q.映画のタイトルについて、「逃げた女」(The Woman Who Ran)とは誰のことなのでしょうか。そして、
彼女は何から逃げているのでしょうか?
実は誰かは決めていなかったんです(笑)。 決めることもできたんですが。でも決めてしまう前に、考えるのを止めました。それでも私はこのタイトルが気に入っていて、とても満足しています。私がこのタイトルを付けたら、人々が映画を見て、どんなことをタイトルに関連づけるか推測もしてみましたが、私が何を望むのかはっきりさせる前に考えるのを止めました。私がただ言えるのは、そう感じることが好きだということだけです。もう少し考えてみるならば、おそらく、この映画のすべての女性たちが何かから逃げていると言えるでしょう。それは虐げられることからであったり、満たされないことからであったり…。でも、むしろそれははっきりさせない方がいいんです。
Q.映画を観ると「友情」と「孤独」という 2 つの言葉がテーマのように思われますが、あなたの映画作品はこうしたテーマをどう扱っているのでしょうか?
もし「友情」とは、私にとって何を意味するかを前もって定義してしまうと、私自身による「友情」の一般化、定義に適合するように、ディテールの断片を集めてこなければなりません。しかし、人生や生きるということは、どんな一般化をも常に超えていきます。そのため、映画作りにおける私のアプローチは、あらゆる一般化や、あらゆるジャンルのテクニック、特定の効果に対するあらゆる期待を避けようと試みることです。ただ心を開いて、自分自身を信じ、これだと思えるものが現れた時に、ただそれを掴むと、いつも何かが生まれるのです。私が望むのは、どんな意味付けもすることなく、いかに断片を集めてこられるかということなのです。その断片を一つにする過程で、ある具体的なものが生まれて、その具体的なものが、多くの異なる人々にとって、多くの異なる意味をもたらすことができます。
Q. 本作の編集のプロセスについてお話を伺えますか?
私の編集はとても速いです。なぜなら、撮影している段階で既に頭の中で編集しているので。撮影が終わってから、編集を終えるまでに通常で 1 日か 2 日です。そして、1 週間くらい何もしないで待ってから、新鮮な目で
再び編集したものに向き合います。
Q.猫のシーンについて、あの素晴らしく完璧なまでの猫の演技をカメラに収めるのに、どれだけの準備をかけて、何テイクほど撮ったのでしょうか?
猫が何かをするというシーンは脚本に書いてから、撮影場所に向かいました。実は、そのシーンは夕方に撮ろうと思っていました。夕方が猫を撮るには適していると思ったからです。最初に他のシーンを撮ろうとしていたのですが、映画にも登場した防犯カメラにあの猫がうろついているのが見えたので、クルーを集めて急いで下に降りて撮影をしました。だからこれは、ファーストテイクなんです(笑)。
逃げた女
6月11日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺他 全国順次公開中
<STORY>5 年間の結婚生活で一度も離れたことのなかった夫の出張中、初めてひとりになった主人公ガミ(キム・ミニ)は、ソウル郊外の3人の女友だちを訪ね、再会する。行く先々で、「愛する人とは何があっても一緒にいるべき」という夫の言葉を執拗に繰り返すガミ。穏やかで親密な会話の中に隠された女たちの本心と、それをかき乱す男たちの出現を通して、ガミの中で少しずつ何かが変わり始めていく。
監督・脚本・編集・音楽:ホン・サンス 出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、ソン・ソンミ、キム・セビョク、イ・ユンミ、クォン・ヘヒョ、シン・ソクホ、ハ・ソングク
2020 年/韓国/韓国語/77 分/カラー/ビスタ/5.1ch 原題:도망친 여자 英題:The Woman Who Ran 字幕:根本理恵
配給:ミモザフィルムズ
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