『去年マリエンバードで』『ジャンヌ・ディエルマン』の伝説的女優デルフィーヌ・セリッグが監督として残した唯一の長編監督作、ドキュメンタリー映画『美しく、黙りなさい』が7月24日(金)よりBunkamura ル・シネマ 渋⾕宮下ほか全国公開されることが決定した。あわせてメインビジュアル、場面写真、メイキング写真が解禁された。本日4月10日はデルフィーヌ・セリッグの誕生日に当たる。

近年、主演した『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地 』(1975年/シャンタル・アケルマン監督)が世界的に大ヒットし、英国映画協会の2022年度版ランキングで「映画史上ベストワン」も獲得、若い映画ファンにも注目されている伝説的女優デルフィーヌ・セリッグ。アラン・レネ、フランソワ・トリュフォー、ルイス・ブニュエル、マルグリット・デュラス、ウルリケ・オッティンガーらの監督作でも知られる彼女が、監督として残した唯一の長編作品が、ドキュメンタリー映画『美しく、黙りなさい』(1976)。撮影対象は、ハリウッドとパリで活躍する23人の女優たち。デルフィーヌは、女優たちに2つの質問を用意した。ひとつは「もしあなたが男性だったとしても、この職業を選びましたか?」、もうひとつは「他の⼥優と友好的な場⾯を演じたことがありますか?」。女優たちが質問に答え、脱線し、繰り返す。率直に親密に、時にユーモラスに語る姿をとらえた。

映画に登場するのは、『ジュリア』(1977)のジェーン・フォンダ、『アパートの鍵貸します』(1960)のシャーリー・マクレーンといった当時でも大物女優だった2人を含め、『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974)のジュリエット・ベルトや、ゴダール『中国女』(1967)のアンヌ・ヴィアゼムスキー、さらに『カッコーの巣の上で』(1975)のルイーズ・フレッチャー、『血塗られた墓標』(1960)のバーバラ・スティール、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』(1972)でスター女優になった若きマリア・シュナイダーら有名な映画女優からテレビドラマの女優、まだ無名の女優など、様々な女優たち。撮影は、1975年と1976年。当時、女優たちがジェンダーについて答えることは、男性中心の映画業界でブラックリストに載りかねないことでもあり、簡単なことではなかった。しかし彼女たちは、リスクを負いながらも自身の言葉で率直に語った。

原題は「Sois belle et tais-toi !」、英語題は「Be Pretty and Shut Up!」。これは「美しくありなさい、そして黙っていなさい」という意味で、元々はフランスの映画・演劇業界などで女性に対して使われていた表現と言われている。今では英語圏でもジェンダー差別を象徴する言葉として使われる決まり文句。デルフィーヌは社会のジェンダー差別に声をあげ、女性の権利を映像で伝えようと活動した人でもあった。

今回解禁された日本版メインビジュアルは、ビデオカメラを構える監督、デルフィーヌ・セリッグの姿を前面に、その後ろに映画に登場した女優ヴィヴァ(60年代のアンディ・ウォーホル作品で知られる)が映り込んでいる写真と、「Sois belle et tais-toi !」という言葉を配置。「tais-toi (黙りなさい)」に引かれた赤いラインが、「いいえ、黙りません」というセリッグや女優たちの意志を反映するかのようで印象的。
今回、制作から50年を記念して本作の日本での劇場公開が決定。上映素材は、セリッグも創設者の1人で、女性の歴史についての映像を保全し普及することを目的にしたボーヴォワール視聴覚センターとフランス国立図書館が主導し、2022年に修復したもの。翌年2月にフランスで再公開されると、「#MeTooのはるか前に、これほど重要なドキュメンタリーがあったとは!」と大きな話題になった。「50年で変わった」と感じるのは、これまで女性の権利のために重ねられた努力がもたらした改善。「50年たっても変わらない」と感じるのは、変化を遮っている古いシステムがまだある証拠に他ならない。
今回の日本公開にあたって、配給会社のインタビューにデルフィーヌの息子ダンカン・ヤンガーマンが答えた。彼は撮影当時19歳。母がジェンダー平等に関わっていく経緯も、そして本作の制作の裏側も、強く記憶していた。日本公開に寄せた彼のコメントは以下のとおり。
なお、映画はその修復の主旨から、日本では、配信・テレビ・パッケージ化はなく、劇場上映と自主上映のみに限定されている。「美しく、黙りなさい」そう言われ続けながらも、唯一無二の存在感を焼き付けた女優たちが語る言葉をスクリーンで確かめよう。
ダンカン・ヤンガーマン コメント
50年後にこの映画がまだ関心を持たれていて、日本の配給会社に私が話を聞かれていると知ったら、母は驚くでしょうね。母がカメラの前でなく、カメラの後ろに立ちたいと、自分の映画を作り始めたのは『ジャンヌ・ディエルマン』がきっかけだと思います。25歳のシャンタル・アケルマンが、支援者がほとんどいない中で、あのように野心的な映画を作り上げたことは、母に勇気を与えました。彼女はきっと「シャンタルも成し遂げたのだから、自分にもできるはず」と思ったのでしょう。


まとめ(注目ポイント)
- 映画『美しく、黙りなさい』7月24日(金)公開決定伝説的女優デルフィーヌ・セリッグ唯一の長編監督作。制作50年を記念し、待望の日本劇場公開が決定した。
- ハリウッドとパリで活躍する23人の女優が出演ジェーン・フォンダら23人の女優が出演。男性中心の映画業界で、自身の言葉で率直に語る姿を記録。
- 配信・ソフト化なしの完全「劇場限定上映」2022年修復の素材を使用。配信やパッケージ化は行われず、劇場上映と自主上映のみの限定公開。
美しく、黙りなさい
2026年7月24日(金)よりBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
監督・インタビュアー:デルフィーヌ・セリッグ|撮影・編集:キャロル・ルッソプロス|編集:イオアナ・ヴィーダー
出演:ジェーン・フォンダ、シャーリー・マクレーン、ジュリエット・ベルト、アンヌ・ヴィアゼムスキー、マリア・シュナイダー、エレン・バースティン、ルイーズ・フレッチャー、バーバラ・スティール、ジル・クレイバーグ他
原題:Sois belle et tais-toi !|英語題:Be Pretty and Shut Up!|1976|フランス|白黒|112分|日本語字幕:竹内航汰|提供・配給:ムヴィオラ
©Families Seyrig and Roussopoulos Archive / Centre audiovisuel Simone de Beauvoir
©Sois belle et tais-toi ! / Delphine Seyrig, 1976 / Centre audiovisuel Simone de Beauvoir
©Sois belle et tais-toi ! / Delphine Seyrig, 1976 / Centre audiovisuel Simone de Beauvoir



