人間の心理を鋭く穿つ鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの、当時、日本での劇場公開が叶わなかった幻の2作品、『少しの愛だけでも』(1975-76)と『デスペア 光明への旅』(1978)が特集「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー ラブ(愛)&デスペア(絶望)」として、11月13日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて公開されることが決定した。あわせて2作品のポスタービジュアル、予告編が解禁された。
ヴェルナー・ヘルツォーク、アレクサンダー・クルーゲ、そしてヴィム・ヴェンダースと並び「ニュー・ジャーマン・シネマ」を代表するライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。彼が37歳という若さで急逝してから40年以上が経った今も、閃光のように駆け抜けた生涯で遺した傑作たちは、私たちの心を激しく揺さぶり続けている。
従来のモラルや映画の規範を過激に飛び越えたファスビンダーは、1970年代、破竹の勢いで時代の寵児へと登り詰めていった。その中で愛という名の「支配と搾取」を冷徹に暴き出した『少しの愛だけでも』と、ナチス台頭期のベルリンを舞台に他者になり替わろうと完全犯罪を目論む男を描いた『デスペア 光明への旅』は、彼の苛烈な作家性が最も鮮明になった到達点である。
1975-76年製作の『少しの愛だけでも』はテレビ映画として製作され、長い間鑑賞が叶わなかった貴重な作品。ファスビンダーの全キャリアの中で最も私的な作品と評され、彼自身の過酷な少年時代が色濃く投影されている。さらに巨匠ダグラス・サーク監督などのハリウッド・メロドラマから強い影響を受け、ドイツの戦後社会の問題やそこに生きる人々を描き出す。殺人を犯した青年の愛の渇望と執着、そして崩壊を巧みな物語構成で語るファスビンダー流のサスペンス風味の家族ドラマ。

1978年に製作された『デスペア 光明への旅』はファスビンダー初の英語作品として国際市場を狙ったメジャー作品。ナチス政権前夜のベルリンを舞台に、自身と瓜二つの男と出会ったことをきっかけに狂気に呑まれてゆく男を幻惑的な映像で描いたサスペンスドラマ。原作は「ロリータ」で知られる文豪ウラジーミル・ナボコフの「絶望」。『ベニスに死す』『愛の嵐』のダーク・ボガードが主演を務める。1978年カンヌ国際映画祭に出品され、ファスビンダー自身「生涯の3本」に数えるほど、思い入れの強い作品である。

今回解禁となったのは2作品のメインビジュアルと予告編。『少しの愛だけでも』というタイトルとも響き合う、愛を渇望する主人公の「“ただ愛してほしいだけなんだ”」という本編のセリフと共に妻と抱き合う姿が切り取られたビジュアル。一方、自分を見失っていく男が苦悩する姿が映し出された『デスペア 光明への旅』のビジュアルには、「君は私で、私は誰——?」というコピーが添えられている。


2作品の発表から長い年月が経過した、2026年。絶え間ない紛争、不穏に揺れる社会。SNSで「私らしさ」が過剰に追い求められる一方で、複数のアカウントの狭間でアイデンティティは分裂し、私たちはかつてない自己喪失の時代を生きている。そして世界に希望を見いだせない閉塞感が漂っている。これらはまさに両作が描く主題そのものであり、改めてこの2作と対峙することは、私たちの視界を——決して優しくはないが、確かな強度をもって——開かせてくれる、痛烈な映画体験となるだろう。また、あわせて9月18日(金)17:00よりMOVIE WALKER STOREにてオンラインムビチケも販売開始。
日本ではアテネ・フランセ文化センターで開催された特集上映『ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2016』のプログラムの一つとして上映されたが、全国で巡回上映されるのは今回が初めて。2023年・2024年には「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選」が上映され、ファスビンダー監督作品への注目は着実に高まっている。
上映作品
少しの愛だけでも ※劇場初公開
若くして結婚したふたり、満たされぬ心が運命を狂わす
愛の搾取を痛烈に描いた名篇。主人公の青年は「他者から愛され、認められたい」という想いから、過剰な献身と労働に身を投じ、精神的に追い詰められていく。ファスビンダーの全キャリアの中で最も私的な作品と評され、彼自身の過酷な少年時代が色濃く投影されている。さらに巨匠ダグラス・サーク監督などのハリウッド・メロドラマから強い影響を受け、ドイツの戦後社会の問題やそこに生きる人々を描き出した。撮影はファスビンダー作品を多く手がけた名手ミヒャエル・バルハウスが担当。テレビ映画として製作され、長い間鑑賞が叶わなかった貴重な作品。
出演:ヴィートス・ツェプリヒャール、エルケ・アーベルレ、アレクサンダー・アラーゾン ほか
1975-76年 | 西ドイツ | カラー | 105分 | 4:3 | DCP
© Bavaria Media International, All Rights Reserved.
デスペア 光明への旅 ※劇場初公開
ファシズムの時代、完全犯罪を目論む男、崩壊する精神
ナチス台頭前夜のベルリンを舞台に描く美しき狂気の物語。原作は名著『ロリータ』で知られる世界的文豪ウラジーミル・ナボコフの長編小説『絶望』。映画化不可能と言わしめた小説に果敢に挑み、ファスビンダー初の英語作品として国際市場を狙った最大の野心作。撮影のミヒャエル・バルハウスによる流麗なカメラワークや、イギリスを代表する名優ダーク・ボガードの圧倒的な演技力が評価され、1978年カンヌ国際映画祭パルムドールにノミネート、1978年ドイツ映画賞では監督賞、撮影賞、美術賞を受賞した。ファスビンダー自身「生涯の3本」に数える思い入れの強い作品として知られている。
1978年カンヌ国際映画祭パルムドール ノミネート
1978年ドイツ映画賞 監督賞、撮影賞、美術賞受賞
出演:ダーク・ボガード、アンドレア・フェレオル、クラウス・レーヴィッチェ ほか
1978年 | 西ドイツ・フランス | カラー | 121分 | 16:9 | DCP
© Bavaria Media International, All Rights Reserved.
まとめ(注目ポイント)
- ファスビンダー幻の2作品が11月13日公開『少しの愛だけでも』『デスペア 光明への旅』がBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかで劇場初公開。
- ポスタービジュアル&予告編解禁愛を渇望する男と自己を見失う男、それぞれの姿を捉えた2作品の映像とビジュアル。
- 『少しの愛だけでも』1975~76年製作テレビ映画として製作され、愛の渇望と執着、崩壊を描くファスビンダー作品。
- 『デスペア 光明への旅』1978年製作ナチス台頭前夜のベルリンを舞台に、自己のアイデンティティに揺れる男を描く作品。
特集「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー ラブ(愛)&デスペア(絶望)」
2026年11月13日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか順次公開
上映作品
『少しの愛だけでも』
『デスペア 光明への旅』
配給:アイ・ヴィー・シー 宣伝協力:XHORA




