ジョージア映画界を代表する女性監督ラナ・ゴゴベリゼ監督の『金の糸』の予告編と場面写真が解禁された。日本の“金継ぎ”に着想を得て描く、過去との和解の物語。激動の時代と人々の過去、古都・トビリシへの愛情を感じさせる予告編に仕上がっている。

『インタビュアー』(サンレモ国際映画祭グランプリ)、『転回』(東京国際映画祭最優秀監督賞)などが高く評価され、テンギズ・アブラゼ監督、オタール・イオセリアーニ監督、ギオルギ・シェンゲラヤ監督たちとともにソヴィエト時代からジョージア映画の発展を担ってきた伝説的な女性監督ラナ・ゴゴベリゼ。その27年ぶり、91歳にしての新作が『金の糸』だ。
本作で描かれるのは、過去との和解をテーマにした物語。ジョージアの古都・トビリシの旧市街の片隅。79 歳を迎えた作家エレネの元へ、娘の姑で、ソヴィエト時代に政府の高官だったミランダが引っ越してくる。そこへ突然、60 年前の恋人アルチルから電話がかかってきて———ジョージアの激動の時代を生きた3人の過去が明らかになっていくというストーリーだ。題名の『金の糸』には、日本の「金継ぎ」から着想を得て、“未来を見るために過去を金で修復する”という意味がこめられた。主役のエレネは、『ロビンソナーダ』で知られるジョージア映画界の重鎮ナナ・ジョルジャゼ監督が演じている。
このたび解禁された予告編は、主人公の女性作家エレネがキーボードを叩くシーンから始まり、風に揺れる花瓶の花、エレネの母親が監獄で作ったという人形、中庭のあるトビリシの伝統的集合住宅などが挿入される。
そしてエレネとミランダの激しい衝突はソヴィエト時代に何があったのかを想像させ、“金継ぎ”を元にしたアートに重ねられた「過去に囚われても過去を壊してもいけない 金で継ぎ合わせるの」という言葉からは本作のテーマが浮かび上がる。
繰り返し流れる美しい音楽は、2019 年に惜しまれつつ亡くなった国際的なジョージア人作曲家ギヤ・カンチェリによるもの。自身の母もスターリンの大粛清で流刑された経験を持つゴゴベリゼ監督が、自分の経験を投影しながら描いた『金の糸』は、映画の王国ジョージアを代表する女性監督にふさわしい新作だ。
『金の糸』は2022年2月26日(土)より全国順次公開。









金の糸
2022年2月26日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開
【ストーリー】
トビリシの旧市街の片隅。作家のエレネは生まれた時からの古い家で娘夫婦と暮らしている。今日は彼女の 79 歳の誕生日だが、家族の誰もが忘れていた。娘は、姑のミランダにアルツハイマーの症状が出始めたので、この家に引っ越しさせるという。ミランダはソヴィエト時代、政府の高官だった。そこへかつての恋人アルチルから数十年ぶりに電話がかかってきて…
監督・脚本:ラナ・ゴゴベリゼ|撮影:ゴガ・デヴダリアニ|音楽:ギヤ・カンチェリ
出演:ナナ・ジョルジャゼ、グランダ・ガブニア、ズラ・キプシゼ、ダト・クヴィルツハリア
原題:OKROS DZAPI|英語題:THE GOLDEN THREAD|2019 年|ジョージア=フランス|91 分
字幕:児島康宏
配給:ムヴィオラ
©️ 3003 film production, 2019