「死者の日」を迎える11月のエストニアの寒村を舞台に、世にも不可思議な純愛を描いた東欧ダーク・ラブストーリー映画『ノベンバー』が10月29日(土)より劇場公開されることが決定した。あわせて日本版ティーザーポスター、場面写真、予告映像も解禁された。
本作の原作となったのはエストニアの作家アンドルス・キビラークの「レヘパップ・エフク・ノベンバー(Rehepapp ehk November)」。2000年に発表されるや、エストニア内の全図書館において、過去 20 年間で最も貸し出された本としてカルト的ベストセラーとなる。現在では、フランス語、ポーランド語、ノルウェー語、ハンガリー語、ラトビア語、ロシア語に翻訳されてヨーロッパ各国で愛読されている一冊だ。
監督のライナー・サルネは“全てのものには霊が宿る”というアニミズムの思想をもとに、異教の民話とヨーロッパのキリスト教神話を組み合わせ映画化。その独創性に溢れた映像美が高く評価され、アカデミー賞外国語映画賞2018年のエストニア代表に見事選出された。日本では、同年に開催された第10回京都ヒストリカ国際映画祭「ヒストリカワールド」部門で上映され、高い評価を得ている。
月の雫の霜が降り始める雪待月の 11 月、「死者の日」を迎えるエストニアの寒村。戻ってきた死者は家族を訪ね、一緒に食事をしサウナに入る。精霊、人狼、疫病神が徘徊する中、貧しい村人たちは「使い魔クラット」を使役させ隣人から物を盗みながら、極寒の暗い冬をどう乗り切るか思い思いの行動をとる。農夫の娘リーナは村の青年ハンスに想いを寄せている。ハンスは領主のドイツ人男爵の娘に恋い焦がれる余り、森の中の十字路で悪魔と契約を結ぶ──。
儚い恋心に揺れる農家の娘リーナを演じるのはレア・レスト。喜びと、ほろ苦さと、痛みなど、複雑なキャラクターを魅力的に演じ切り、本作を別次元の作品に導いた。男爵の謎めいた娘には、パフォーマンス・アーティストとして活躍するジェット・ルーナ・エルマニスが扮し、そのエキゾチックな容姿で無垢なる役柄を演じ、彼女の記念すべき女優デビュー作となった。
この2人の美しいゴシック・ヒロインの気を引こうとする農家の青年ハンスにヨルゲン・リク。憂鬱な表情を浮かべては、愛に満ちた笑みを浮かべ、ストーリーを思いがけない方向へ誘う。男爵には『ムカデ人間』(10)のハイター役でカルト的人気を誇るドイツの名優ディーター・ラーザー。スパンコールのジャケットを身につけ、凛とした男爵の力強さと痛々しさを絶妙なバランスで演じる。2017年に撮影した本作が氏の遺作となった。そのほか、魔女、幽霊、得体が知れない老婆などの多くは役者経験のない村人が務めたが、皆がまるで催眠術にかかったかのように、役になり切ることで、本作の悪夢的世界を彩る。
夢のようなモノクロームの世界を撮影したのはマート・タニエル。その漆黒の深みと白い雪のような映像美に世界が絶賛。トライベッカ国際映画祭、ミンスク国際映画祭での最優秀撮影監督賞、アメリカ撮影監督協会スポットライト賞を始め、名誉ある賞を次々と受賞した。
10月31日のハロウィンから連続して、11月1日の「諸聖人の日」(All Saints’Day)、11月2日の「死者の日」(All Souls’Day)と続く。この「死者の日」は今まで亡くなった先祖を思い出し、追憶する日である。「万霊節」と訳される。 日本でこれに該当する日は「お盆」。お盆は8月15日に行われる。この日は先祖が里帰りすると信じられて、お墓などにお参りする日である。ハロウィンや万霊節はキリスト教が普及する前の土着宗教の風習が起源であるようだ。そして、キリスト教では、死者を追憶する日として重要な日となっている。
真夜中の十字路での悪魔的な出会い。満月の狼への変身と愛の特効薬。ペストを村から追い出すための奇策。白装束の死者の列。森の暗い松の間から漏れる月光…。フォークロア、ゴシック、ロマンス、ブラックユーモア、そして愛と哀愁をシームレスに縫い合わせ、凍てつく朝のように冷たくも美しい、ただひたすらに詩情溢れる少女と水と風の美しい物語は、深いため息とともにあなたに魔法をかける。
海外REVIEW
アカデミー賞外国語映画賞の候補作の中で、最も奇妙な作品『ノベンバー』は、厳かでありながら驚くほど美しいモノクロの撮影と、不気味な宗教的民間伝承に彩られた催眠術のような悪夢である。言い換えれば、「完全にイカれてる」のである。
Cinemablograph
『ストーカー』『神々のたそがれ』『ヴェルクマイスター・ハーモニー』『フリークスも人間も』『マルケータ・ラザロヴァー』など、東欧アートフィルムの傑作に匹敵する『ノベンバー』。初見では筋書きをあまり気にせず、ただただその独創性と美しさを堪能するが良い。
Dallas Film No
ゴージャスで神秘的な『ノベンバー』は途方もなく美しく幻覚的な傑作だ。
The Village Voice
心にしみるほど美しい幻想的なイメージの対比を、荒々しい質感で表現する『ノベンバー』は、1コマ1コマが芸術作品であり、優美で優麗だ。
Blueprint
灰色のエストニアの風景の中の飢えと、疫病と貧困に満ちたこの寂しい世界にも、まだ美しさの余地はある。この素晴らしい映画には、そのすべてが詰まっているのだ。
Cine-George Vermi
奇想天外でありながら、美しく、人を惹きつける。観客が興味を失う心配がない。一回見ただけでは、この映画の不可思議さを本当に理解することはできないだろう。
Cryptic Rock
この世のものとは思えない映画。驚くほど美しく、深く独創的で、笑いと深みがある。次に何が起こるかわからず、ハラハラドキドキしながら、登場人物や素晴らしいコミュニティに思いを馳せることができる。
100 Years of Terror
ミヒャエル・ハネケとデヴィッド・リンチの出会いのような、この厳しくも見応えのあるホラーファンタジーSHOWと美味しく暮らすことができるだろうし、奇妙で珍しいものを求める映画ファンは、奇妙な感謝の気持ちで唇をなめるはずだ。
Cine Scope
テリー・ギリアムを思わせるゴシックなグロテスク描写と、ブラザーズ・クエイのような仕掛け、サミュエル・ベケットのような不条理なユーモアが混在する異端の匂い漂う極上の映画体験。
Eye For Film
ヤン・シュヴァンクマイエルの作品を彷彿とさせる粗いながらも効果的な方法でのアニメーション化が、この作品に奇妙なアクセントを加えている。序盤のシーンではおぞましく、他のシーンでは詩的に、そして多くの場合、非常に滑稽に活用されているのだ。
Cinema Slasher
『ノベンバー』の奇妙な宇宙観では、疫病は美しい女性の姿になり、錆びた道具は悪魔と契約して命を吹き込まれる。オランダの画家ピーテル・ブリューゲルの絵画を思わせるような綿密にして大胆な異色作。
Big Horror Guide
ノベンバー
2022年10月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
脚本・監督:ライナー・サルネ 撮影監督:マート・タニエル セット・デザイナー :ヤーグ・ルーメット、マティス・マエストゥ 編集:ヤロスラフ・カミンスキー サウンド・デザイナー :マルコ・フェルマース 作曲家:ジャカシェク プロデューサー:カトリン・キッサ
出演:レア・レスト、ヨルゲン・リイイク、ジェッテ・ローナ・ヘルマーニス、アルヴォ・ククマギ、ディーター・ラーザー
【2017年/ポーランド・オランダ・エストニア/B&W/115分/5.1ch/DCP/原題:NOVEMBER】 日本語字幕:植田歩
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ・サクセション 配給:クレプスキュール フィルム
©Homeless Bob Production,PRPL,Opus Film 2017
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