ヒトラー率いるナチス支配下のドイツ“第三帝国”にかかわった市井の人々の証言を記録したドキュメンタリー『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』(8月5日公開)のルーク・ホランド監督、アソシエイト・プロデューサーのサム・ポープのインタビューが到着した。
ヒトラー率いるナチス支配下のドイツ“第三帝国”が犯した、人類史上最悪の戦争犯罪“ユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)”。本作はその「加害者側」の人間や目撃者たちの証言、当時の貴重なアーカイブ映像を記録したドキュメンタリー。武装親衛隊のエリート士官から、強制収容所の警備兵、ドイツ国防軍兵士、軍事施設職員、近隣に住む民間人まで、「現代史の証言者世代」と呼ばれる高齢になったドイツ人やオーストリア人などが、戦後の長い沈黙を破って当時について語る。
本作の監督を務めたイギリス出身のルーク・ホランドは、10代になって初めて、母がウィーンからのユダヤ人難民で、祖父母はホロコーストで殺害されたというルーツを知った。2000年代になり “祖父母を殺した人間を捜す”という目的でこのプロジェクトに着手したという。「すぐに無理だとわかりました。しかし、彼らの仲間には実際に会うことができる。ヒトラーのために腕や銃を振り上げた人たち、残虐な犯罪を犯した人たちを通して、ホロコーストが繰り広げられた背景をよりよく理解できるかもしれないと考えたのです」と、“ナチス第三帝国”にかかわった市井の人々の証言を記録した本作を制作するきっかけを明かす。
さらに「この映画は、文字どおりの意味で、インタビューに応じた人々が、彼らの特別な視点から何が起こったかを証言する “最後の機会”という役割を果たしました。しかし、ホロコーストに対する“最終的な説明”が得られる訳ではありません。ホロコーストに対する議論は決して終わらないのです。なぜ人はこのように残忍なことをしながらも人間であり続けることができるのか。簡単には答えがでないこの疑問は、これからも問いかけ続けなければなりません」と語り、「私の願いは、人々が歴史的重要性について考えるだけでなく、極めて複雑な今日の世界における自分自身について考えることです。自分が恐ろしい犯罪に関与しているかもしれないと気づいてほしい。私がインタビューした人々の中には、事態が深刻化するまで自分が恐ろしい犯罪に関与していると気づかなかった人たちがいます。この映画が、このことを考えるきっかけになればと思います」と本作に込めた思いを語っている。
2008年から10年の歳月をかけて250以上のインタビューを行ったホランドは、本作完成直後の2020年6月、71歳で癌で亡くなった。
一方、アソシエイト・プロデューサーと追加編集を担当したサム・ポープは、「監督とは、彼の息子と小学校の同級生だったこともあり、幼少期からの付き合いでした。彼に誘われて、40人ほどの、最初のインタビュー集を見せてもらいました。生きているだけでなく、自分の経験や記憶を共有しようとする人たちの顔を見たとき、とても衝撃的で感動しました。そして、私にできることであれば、ルークを手助けしたいと思うようになりました」とホランド監督の手伝いをするようになったのが本作に携わるきっかけになったという。
最も衝撃的だったことは「多くの証言者たちが、とても身近に感じられたことです。イデオロギーとは関係なく、自身を省みることができずに、同じような選択や間違いを犯してしまった彼らに、同じ立場になった時の私自身が見えたんです」と明かし、「私たちが収集している資料が現代に通じることは、強く認識していました。最も気掛かりだったのは、私たちがこの映画と歩んできた道のりが、年を追うごとに関連性を増しているように感じられたことです。そのため、一人でも多くの人に、亡くなる前にインタビューしておきたいと思うようになりました。願わくば、この映画がその目的を果たすことで、人々が自問するきっかけになればと思います。もしあなたが、自分が属する政府やコミュニティ、あるいは組織の中で、このようなことが起こっているのを見たら、それを検証し、疑問を持ってほしいです。ただ見過ごしてはいけません。行動を起こしても手遅れだと気づいてからでは遅いのです」と本作を観る観客へのメッセージを語った。
『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』は8月5日(金)より全国ロードショー。
ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言
※『ファイナル アカウント 最後の証言』から邦題変更
2022年8月5日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
STORY
イギリスのドキュメンタリー監督ルーク・ホランドは、アドルフ・ヒトラーの第三帝国に参加したドイツ人高齢者たちにインタビューを実施した。ホロコーストを直接目撃した、生存する最後の世代である彼らは、ナチス政権下に幼少期を過ごし、そのイデオロギーを神話とするナチスの精神を植え付けられて育った。戦後長い間沈黙を守ってきた彼らが語ったのは、ナチスへの加担や、受容してしまったことを悔いる言葉だけでなく、「手は下していない」という自己弁護や、「虐殺を知らなかった」という言い逃れ、果てはヒトラーを支持するという赤裸々な本音まで、驚くべき証言の数々だった。監督は証言者たちに問いかける。戦争における“責任”とは、“罪”とは何なのかを。
監督・撮影:ルーク・ホランド/製作:ジョン・バトセック、ルーク・ホランド、リーテ・オード
製作総指揮:ジェフ・スコール、ダイアン・ワイアーマン、アンドリュー・ラーマン、クレア・アギラール/アソシエイト・プロデューサー:サム・ポープ
編集:ステファン・ロノヴィッチ/追加編集:サム・ポープ、バーバラ・ゾーセル/音楽監修:リズ・ギャラチャー
2020年/アメリカ=イギリス/ドイツ語/94分/カラー(一部モノクロ)/ビスタ/原題:Final Account/字幕翻訳:吉川美奈子/字幕監修:渋谷哲也/ナチス用語監修:小野寺拓也
配給:パルコ ユニバーサル映画/宣伝:若壮房
©2021 Focus Features LLC.
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