『氷の微笑』『エル ELLE』などの鬼才ポール・ヴァーホーヴェン監督の最新作にして衝撃の伝記映画『BENEDETTA』が邦題『ベネデッタ』として2023年2⽉17日(金)に公開されることが決定した。また、2022年10⽉に開催される京都ヒストリカ国際映画祭にて1回のみ先⾏上映も予定されている。
17世紀に実在した⼥性、ベネデッタ・カルリーニはレズビアン主義で告発された修道⼥。幼い頃から聖⺟マリアやキリストのビジョンを⾒続け、聖痕が浮かび上がりイエスの花嫁になったと報告して信者の注⽬を集め、⺠衆の⽀持を得て修道院⻑に就任した⼥性である。
この歴史上初のレズビアン裁判記録『ルネサンス修道⼥物語―聖と性のミクロストリア』(J.C.ブラウン著/1988 刊)を読みベネデッタの⼈物像に魅せられた巨匠・ヴァーホーヴェンは、魅⼒的で唯⼀無⼆のセクシュアル・サスペンスを作り上げた。
17世紀のペシアの町(現在のイタリア・トスカーナ地方)。幼い頃から聖母マリアと対話し奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは、6歳で出家しテアティノ修道院に入る。純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助ける。様々な心情が絡み合い2人は秘密の関係を深めるが、同時期にベネデッタが聖痕を受け、イエスに娶られたとみなされ新しい修道院長に就任したことで、周囲に波紋が広がる。民衆には聖女と崇められペシアでの権力を手にしたベネデッタだったが、彼女に疑惑と嫉妬の目を向けた修道女の身に耐えがたい悲劇が起こる。そして、ペスト流行にベネデッタを糾弾する教皇大使の来訪が重なり、ペシアの町全体に更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていた…。
『氷の微笑』(92)のシャロン・ストーン、『ショーガール』(95)のジーナ・ガーション、『エル ELLE』(16)のイザベル・ユペールなど、男性も⼥性も虜にしてきたヴァーホーヴェンが描く予測不能な⼥たち。そこに新たに 1 ⼈加わったのが、フランスの国⺠的⼥優であり、⽇本では『おとなの恋の測り⽅』(16)、『エル ELLE』で知られるヴィルジニー・エフィラである。彼⼥が実在の⼈物、ベネデッタ・カルリーニを演じた『ベネデッタ』は、2021 年に⾏われた第 74 回カンヌ国際映画祭にて初上映され、⼤きな話題をさらった。各紙のレビュー(※抜粋)は本記事の下部にて。
他キャストも豪華な布陣で⾒所満載。ヘルムート・ニュートンやフランソワ・オゾンのミューズから世界的⼤⼥優となったシャーロット・ランプリングは「この映画に出演しない理由が⾒当たらない」と、宗教をビジネスとしてしかとらえていない修道院⻑を底知れない無表情で演じ、歌⼿兼俳優として活動するフランスの⼤スター、ランベール・ウィルソンが危険で威嚇的で欲にまみれた“悪党”の教皇⼤史を演じた。ヒロインの相⼿役となるバルトロメアにはギリシャの⼥優ダフネ・パタキアを抜擢。家庭内性暴⼒の被害者、そして聖⼥ベネデッタを破滅に導くきっかけとなるキーパーソンとして、真っ直ぐで⼤胆な演技を⾒せている。
ポール・ヴァーホーヴェン監督は本作について次のようにコメントしている。「ベネデッタの物語の独特な性質に惹かれたんだ。17 世紀初めにレズビアンの裁判があったこと、裁判の記録や本書のセクシュアリティの描写がとても詳細なことにも感銘を受けた。そしてこの時代、⼥には何の価値もなく、男に性的喜びを与え、⼦供を産むだけの存在とみなされていたにもかかわらず、ベネデッタが⼿段はどうあれ、完全に男が⽀配する社会で、才能、幻視、狂⾔、嘘、創造性で登り詰め、本物の権⼒を⼿にした⼥性だったという点だ。私の映画の多くは⼥性が中⼼にいる。つまり、ベネデッタは『氷の微笑』、『ショーガール』、『ブラックブック』、『エル ELLE』のヒロインたちの親戚というわけさ」。
各紙レビュー ※抜粋
宗教や欲望に関する作品は⽬新しいものではないかもしれないが、性的および政治的権⼒の描写によって信じられないほど楽しい作品となった。
IGN
『ベネデッタ』はこれまでの彼の作品と同じように、主⼈公である⼥性のベネデッタが男性の⽀配する世界で権⼒を握り、徐々に⾃分の声を⾒つけて解放を達成させる物語となっている。
The Hollywood Reporter
『ベネデッタ』はヴァーホーヴェンの集⼤成のように感じた。彼は 1 つの物語に性と腐敗、壊れたシステム、そして挑発を盛り込み、楽しく観ながらも深く考えさせてくれる作品を作り上げた。
Roger Ebert
ヴァーホーヴェンがまたやってくれたなという気持ちだ。恐らく 2021 年で最も挑発的な作品であり、時代劇及びブラックコメディ、エロティック・スリラーなど様々なジャンルを合わせた作品であった。監督は今回神聖な宗教と冒涜的な性愛を結びつけたのだ。
Polygon
ポール・ヴァーホーヴェンは『ショーガール』で描いたものを、信仰深い若い⼥性を主⼈公とした奇想天外な修道院映画に作り替えた。
The Guardian
ベネデッタ
2023年2月17日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
脚本:デヴィッド・バーク、ポール・ヴァーホーヴェン
原案:ジュディス・C・ブラウン『ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア』
出演:ヴィルジニー・エフィラ、ダフネ・パタキア、シャーロット・ランプリング、ランベール・ウィルソン
2021/フランス・オランダ/131 分/R18+/原題:BENEDETTA
配給:クロックワークス
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