イタリアの名匠ジャンニ・アメリオ監督の最新作にして、第79回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され独立賞5部門を受賞した『蟻の王』が11月10日(金)より全国順次公開。このたびエットレ役の新星レオナルド・マルテーゼからメッセージ動画が到着。あわせて多彩な文化人からの応援コメントも解禁された。
人と人との繋がりを、時に冷徹に、時に繊細に描き続けてきたヨーロッパを代表する名匠ジャンニ・アメリオ監督の最新作は、同性愛者の存在すら認められなかった時代に恋に落ちた、実在した詩人で劇作家のアルド・ブライバンティとその教え子を巡る史実、“ブライバンティ事件”にインスパイアされた、“人間の尊厳”を問い直す、魂を揺さぶる物語。
今回、主人公アルドとの愛を貫き通そうとする恋人エットレを演じ、ヴェネチア国際映画祭を始め多くの映画賞で新人賞を受賞している新星レオナルド・マルテーゼから、日本の観客に向けたメッセージ動画が到着。本作の日本での公開について「世界のこんなに遠い場所で観て頂けることを嬉しく思います。とても感動的な映画だと思っているので皆さんも同じような感動を得てくれたら嬉しいです」と語っている。
また女優、作家、詩人、歌人、ジャーナリストといった多彩な文化人からも応援コメントが到着。女優の風吹ジュンは「こんな差別が当たり前だった時代!先端を行くアーティストとは己の性に正直に、行き場の無い社会の矛盾と毅然と向き合う…蟻に救われたに違いなく、蟻に学びたいと感じました。丁寧に作られた繊細な映画。」と絶賛。
また歌人・作家である東直子は「同性を愛したというだけで病院に送られ、危険な施術をされた青年の演技がリアルで、胸が苦しくなった。しかし決して誇りを失わない二人の澄んだ眼差しは清々しく、忘れられない。クラシカルな建物が作る影と哲学的な会話が響きあい、一瞬一瞬が美しい。」、長年イタリアに住んでいるジャーナリストの内田洋子は「どんな国にも誰にでも、開けたくないブラックボックスはあるのでは。勇気を出してふたを開け、140 分の道中で知らなかったイタリアに会う。どの人にも自由と理解を。そして、自分を大切に。今、この映画を日本で観ることができるのは運命かもしれない。」とコメントを寄せている。文化人からのコメント一覧・全文は以下のとおり。
『蟻の王』は11月10日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。オリジナルポストカード 3 枚セット付前売券は 1,500 円(税込)で、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、メイジャー・ネット通販にて販売中。
著名人の推薦コメント
イタリア映画は「顔」だ。
詩人で劇作家で蟻の生態研究者という究極にインテリジェントな人間を演じる役者の顔を見て、ああ、これはイタリア映画だと思った。
知的な人間が、愚かな人間に糾弾され裁かれることの皮肉をとくと観せてくれる。
山内マリコ (小説家)
人間の人生は、病棟あるいは牢獄だ。
愛に最も馴染まない正しさという尺度を押し付ける。
けれど、詩は閉じた世界に風を吹き込み、異種の生態は私たちを遠くに飛ばしてくれる。
孤高の詩人・劇作家が己の生を貫き、〈私〉の国の王になるまで。
佐々木ののか(作家)
これが映画だ、これが人生、これがすなわち、わたしたちの現実の様相だ。
小池昌代(詩人・作家)
同性を愛したというだけで病院に送られ、危険な施術をされた青年の演技がリアルで、胸が苦しくなった。
しかし決して誇りを失わない二人の澄んだ眼差しは清々しく、忘れられない。クラシカルな建物が作る影と哲学的な会話が響きあい、一瞬一瞬が美しい。
東直子(歌人・作家)
糾弾され、裁かれる一つの愛。
国、時代、宗教、イデオロギー、全てが異なる2023年の日本で、この恋人たちはどう映るのか。
「アイーダ」のデュエットと共に綴られるラストシーンは、とても哀しく、とても美しい。
ドリアン・ロロブリジータ(ドラァグクイーン)
こんな差別が当たり前だった時代!
先端を行くアーティストとは己の性に正直に、
行き場の無い社会の矛盾と毅然と向き合う…
蟻に救われたに違いなく、蟻に学びたいと感じました。
丁寧に作られた繊細な映画。
風吹ジュン(女優)
マジョリティの都合で作り上げられた時代の社会で理不尽に裁かれるも、
静かに凛とした愛を貫く、孤高の2人。
切なすぎる。が、間接照明とアースカラーを基調としたシーンの全てがほんのりとあたたかく、余韻がとても美しい。
東ちづる(俳優・一般社団法人Get in touch代表)
同性間の性加害が無視され失笑されてきた現実の一方で、
愛し求め合っただけの成人同士が、投獄され非人道的な矯正処置をされる現実もある。
気まぐれな社会の風潮に振り回され、当人たちの心はいつも置いてけぼりだ。
ブルボンヌ(女装パフォーマー)
広い草原でも蟻が群れる理由を、アルドは「一匹だけだと迷子になるから」とエットレに教える。「僕も蟻が好き」とエットレも応える。
「胃が二つあるから。自分用と空腹の仲間用の」──この二人を、矯正用の電気療法と洗脳を断じる裁判が引き裂く。
その電気療法こそが洗脳であることを1960年代のイタリアは知らない。
「全てを分かち合い決して裏切らない」蟻たちを引き合いに、この映画は「同性」の「愛」の真実を静かに叫び上げる。
北丸雄二(作家・ジャーナリスト)
どんな国にも誰にでも、開けたくないブラックボックスはあるのでは。
勇気を出してふたを開け、140分の道中で知らなかったイタリアに会う。
どの人にも自由と理解を。そして、自分を大切に。
今、この映画を日本で観ることができるのは運命かもしれない。
内田洋子(ジャーナリスト、イタリア在住)
蟻の王
2023年11月10日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほかにて公開
STORY
1960 年代、イタリア・ポー川南部の街ピアチェンツァに住む詩人で劇作家、蟻の生態研究者でもあるアルド(ルイジ・ロ・カーショ)は、教え子の若者エットレ(レオナルド・マルテーゼ)と恋に落ち、ローマに出て共に暮らし始める。しかしエットレの家族は二人を引き離し、アルドは“教唆罪”に問われ逮捕、エットレは同性愛の“治療”で電気ショックを受けさせられるため矯正施設に送られてしまう。世間の好奇の目に晒されながら裁判が始まり、新聞記者エンニオ(エリオ・ジェルマーノ)は熱心に取材を重ね、不寛容な社会に声を上げるのだが…。
監督・脚本:ジャンニ・アメリオ
脚本:エドアルド・ペティ、フェデリコ・ファバ 編集:シモーナ・パッジ 撮影:ルアン・アメリオ・ウイカイ 美術:マルタ・マッフッチ
出演:ルイジ・ロ・カーショ、エリオ・ジェルマーノ、レオナルド・マルテーゼ、サラ・セラヨッコ
2022 年/イタリア/イタリア語/ビスタ/カラー/Dolby Digital/140 分 映倫:G
原題:Il signore delle formiche 英題:Lord of the Ants 字幕翻訳:吉岡芳子
配給:ザジフィルムズ 後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
© Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)
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