売り払われる寸前の農場を建て直そうと納屋に「キャバレー」を開いたという“本当にあった話”を基にした『ショータイム!』が12月1日(金)より全国順次公開。このたび主演アルバン・イワノフのインタビューが到着した。
本作は、3代続いていた農場を自分の代で終わらせたくないダヴィッドが潰れかけている農場の納屋を改装し、そこにキャバレーを作ろうと奔走するという、フランスの田舎であった嘘のような実話をもとにした笑いあり涙ありのエンターテインメント作品。主役のダヴィットには『セラヴィ!』(17)で大きな感動を与えたアルバン・イワノフ。相手役のボニーは社会派作品に多く出演、ダンサーとしての才能も開花したサブリナ・ウアザニが務める。
このたび、自然豊かな田舎の農場にキャバレーを作り、人生の一発逆転を狙うダヴィッドを演じたアルバン・イワノフのインタビューが到着した。実在するダヴィッド・コーメットという人物や役作りについて、また本作に込めた「希望」のメッセージなどについて語っている。インタビューは以下にて。
『ショータイム!』は12月1日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。
アルバン・イワノフのインタビュー
——ダヴィッドというキャラクターについてどんな風に感じましたか?
絶望の淵に立たされたことによって、とてもクレイジーなことをひらめくダヴィッドの激情がとても気に入りました。彼は常軌を逸していて、周囲も彼をおかしくなったと思いますが、最終的に彼のアイディアは功を奏しますし、ダヴィッド自身も素晴らしい人物へと成長しました。“人と同じではいけない“というメッセージもすごく良いですね。
——何か特別な準備をしましたか?
ダヴィッド・コーメット本人には撮影前に一度会い、撮影中にも数日間会って彼から話を聞きました。彼がプロジェクトを立ち上げる際に苦労したこと、彼の家族や村の人たちなど、周囲の人たちからしばしば敵対的な反応を受けたことなど教えてもらいました。そして撮影を一緒にした、農家であるピエールとクリステルについてもよく観察しました。その前に、農業に関する資料を山ほど読んで農家が直面する問題について考えることに没頭しました。本質を理解すれば形はおのずと現れてきます。私が役を演じる時、その役柄を真似しようとはしません。『ショータイム!』では、農夫になろうとしたのではなく、一人の農夫でした。
——撮影までの経緯について教えてください。
昔からの知り合いのサブリナ・ウアザニがダヴィッドの役に私はどうかと話してくれていたようです。そして監督であるジャン=ピエールが私に脚本を送ってくれました。脚本を読んで初めて私たちは顔を合わせました。私はジャンの飾らないところ、人間性が大好きでした。作品を美しいと感じる事と同じくらい、監督する彼の気取らない姿に憧れを抱くのはとても自然なことでした。ジャンといるととても自信を持つことができます。私にとっては人が一番大切なことです。さらに言えば、人、出会い、違いを乗り超えることこそが、『ショータイム!』なのです。
——撮影現場でジャン=ピエール・アメリス監督はほとんどテイクを取らないそうですね。
そのやり方が私にも合っていましたし、それが彼との仕事を楽しめた理由の一つでもあります。ワンマンショー出身である私には撮り直すという選択肢がなかったので、その場でなんとか上手く演じ切るしかなかったのです。ですので、私はカメラの前でも同じような考え方をします。最初のテイクから役に入り込み、編集については決して考えません。やり直せるなんて決して思いませんし、様々な角度から撮影をするシークエンスショットも好きですね。私にとって疲労というものはないも同然です。
——劇中で牛の出産を執り行うシーンがとても印象的でした。
子牛の出産シーンは特に気に入ったシーンでしたね。現代社会に生きていると、人生におけるとてもシンプルなことを忘れてしまいます。あの納屋で藁に足を踏み入れながら、種が生き残り、人間が食べることのできる存在をこの世に誕生させる手助けをしていることに幸せを感じました。私は生命の根源にいて、人工的なものはそこになく、ただ自然とともにありました。
——映画の中ではあなたが演じるキャラクターが自ら命を絶とうとするシーンがありました。
統計によれば毎日一人はその決断に踏み切ってしまうように、多くの農家がそういった状況にあります。多くの人はダヴィッドのような強さや正気を持ち合わせていませんし、そのダヴィッドでさえも、命を絶つという考えを自らが経験しました。そのような決断に至ってしまうことはとんでもないことです。演じることは難しかったですが、非常に重要なシーンでもありました。この映画は「私たちはあなたがそこに存在していることが分かっていて、そしてあなたのことを思っている」という困難な状況にある全ての農家へのメッセージでもあります。
——今日の農業にはどんな未来があると思いますか?
若い世代が、親世代が直面している困難を目の当たりにしてどうして農場を継ぎたいと思えるのでしょうか?我々がこの問題を見て見ぬふりをし、狂ったような税金で農家を追い詰め続ければ、この先、食べ物を食べることができなくなっても驚きません。農家の人々の声に耳を傾けて、フランスの農業のノウハウ、農産物を守っていかなければなりません。
——この映画のモデルでもあるダヴィッド・コーメット氏について知っていたことはありましたか?
はい、詳細にというわけではありませんでしたが聞いたことがありました。また農家たちが直面している問題についても耳にしていました。私の母方の家族は全員農家だったので。『ショータイム!』の台本を読んでいるとき、惑星が一直線に並び、線と線がつながったように突然感じました。我々があまり知ることのない世界に、スッポトライトを当てるのにふさわしいタイミングだと思いました。私は映画が、平和な武器のように役割を果たすことができる点が好きです。そして何よりも、私たちが劇中で語ろうとしている冒険が、現実に根ざしていることが嬉しかったです。ダヴィッドに関する記事なども調べるようになりました。そして監督であるジャン=ピエール・アメリスに出会えたことはかけがえのないことでした。
——映画が完成した時のダヴィッド・コーメットの反応はいかがでしたか?
彼が感動している様子を見て、彼がこの映画に共感していることを感じて私自身も感激しました。こういったことが、私がこの仕事を愛していると思える理由の一つです。
——芸術家と農家という一見真逆なタッグからどのようなメッセージを汲み取ることができるでしょうか?
もちろん希望のメッセージです。 全く異なる二つの世界では、未知なるものや初めてのものに対する恐怖が常に支配するため、共同生活は最初のころは大変でしょう。両者が共通点を見つけ出すために互いに耳を傾け、話し合うことで十分であると分かります。違いというものが美しいものになっていきます。作品の中で私たちは、両極端にいるのでその衝撃はとても大きいです。私の親の世代から言わせると、俳優になるということはドラッグを使用することと変わらなかったそうです。型にはまった概念や、既存の考えを解体することは重要なことです。
ショータイム!
2023年12月1日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
STORY
フランスの中南部、酪農家のダヴィッドは地方裁判所へ“出頭”する。3代続いた農場が経営危機により差し押さえられてしまうのだ。何とか2か月の猶予を与えられたものの、挽回の策はない。途方に暮れた帰り道、道端に明るく輝くネオンサインを見つける。「キャバレー」だった。そこで見たのは、妖艶なダンサー=ボニーの魅力的なパフォーマンス。ダヴィッドは、納屋をキャバレーに改装して勝負を賭けようと思いつく。折しもクビになったボニーに、ダヴィッドはショーの出演と演出をもちかける。怪しまれるも、ボニーはマネージャーと喧嘩別れしたばかり。かくしてボニーは演出兼任の鬼となり、ダヴィッドが集めた訳ありパフォーマーを厳しく鍛えると、みるみるうちにステージのパフォーマンスが出来ていく。いよいよオープンを明日に迎えた日、思いもよらない事態が起きてしまう…。
監督:ジャン=ピエール・アメリス 脚本:ジャン=ピエール・アメリス、マリオン・ミショー、ジャン=リュック・ガジェ 脚本協力:ミュリエル・マジェラン
出演:アルバン・イワノフ、サブリナ・ウアザニ、ベランジェール・クリエフ、ギイ・マルシャン、ミシェル・ベルニエ
撮影:ヴィルジニー・サン=マルタン 音楽:カンタン・サージャック
2022/フランス/フランス語/ビスタ/109分/ 原題:Les Folies Fermières/字幕翻訳:中沢志乃/配給: 彩プロ 映倫G
© 2021 - ESCAZAL FILMS - TF1 STUDIO - APOLLO FILMS DISTRIBUTION - FRANCE 3 CINÉMA - AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA
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