現代アメリカの最重要作家のひとり、ケリー・ライカート監督のキャリア初期の傑作 4 本を一挙公開する特集上映「ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ」のシアター・イメージフォーラムでの公開日が7月17日(土)に決定。フライヤービジュアルとともに、上映される 4 作品のUSオリジナル予告編も一挙解禁された。『ウェンディ&ルーシー』の予告編は、日本初公開となる。
ケリー・ライカート監督は、1994 年に初長編『リバー・オブ・グラス』でデビュー以来、新作を発表するたび、各国映画祭・メディアで激賞されながらも、ファイナルカット権(最終的な編集権)を保持するため大手スタジオとは距離を保ち、インディペンデントな制作体制とスタイルを貫き続けている、現代アメリカ映画を代表する女性映画監督。
故郷の南フロリダで撮影した一作目の『リバー・オブ・グラス』は、撮影許可料が支払えず、警察に機材の没収や俳優・スタッフの複数にわたる逮捕未遂といった圧力の中ゲリラ撮影を敢行、2 作目の『オールド・ジョイ』は 12 年間自己資金を貯め、ウィル・オールダム、ヨ・ラ・テンゴといったライカートの友人のミュージシャンらのボランティンアによって完成させた。
その後は、予算集めの苦労も減りコンスタントに作品を発表、作品を撮るごとに予算も増え、出演者もミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、ブルース・グリーンウッド、クリステン・スチュアート(本特集では上映されない 16 年『ライフ・ゴーズ・オン』に出演)…など有名俳優が出演するようになっても、その作風・制作スタイルは一貫し、自身の表現を追求し続ける姿勢は、「ジョン・カサヴェテスの真の継承者」「アメリカ・インディペンデント映画の女王」「現代アメリカの最重要作家」など、賞賛を集めている。
各国映画祭を席巻している『First Cow』、『ウェンディ&ルーシー』『ミークス・カットオフ』でもタッグを組んだミシェル・ウィリアムズが主演する現在撮影中の『Showing Up』は、A 24 製作・配給のもと公開を控えている。
本特集で上映されるのは『リバー・オブ・グラス』(94)、『オールド・ジョイ』(06)、『ウェンディ&ルーシー』(08)、『ミークス・カットオフ』(10)の4作品。16mm フィルムで撮られたデビュー作『リバー・オブ・グラス』は、UCLA 映画アーカイブ、サンダンス・インスティチュート、オシロスコープ社のサポートで修復され、2015 年トロント映画祭でプレミア上映された 2K レストア版での上映となる。
1)『リバー・オブ・グラス 2K レストア版』RIVER OF GRASS
撮影:ジム・ドゥノー 編集:ラリー・フェセンデン
出演:リサ・ドナルドソン(リサ・ボウマン名義)、ラリー・フェセンデン、ディック・ラッセル
1994 年/アメリカ/スタンダード/カラー/76 分
©1995 COZY PRODUCTIONS
楽園リゾート都市マイアミのほど近く、なにもない郊外の湿地で鬱々と暮らす 30 歳の主婦コージーは、いつか、新しい人生を始めることを夢見ている……。20 代最後の年、故郷に戻ったライカートが、逃避行に憧れ、アバンチュールに憧れ、アウトローに憧れた、かつての思春期の自身に捧げた「ロードの無いロード・ムービー、愛の無いラブ・ストーリー、犯罪の無い犯罪映画」。撮影許可料が払えず、警察から幾多の圧力を受けながら、ゲリラ撮影で完成させた珠玉のデビュー作。
2)『オールド・ジョイ』OLD JOY
脚本:ジョン・レイモンド 撮影:ピーター・シレン 音楽:ヨ・ラ・テンゴ 製作総指揮:トッド・ヘインズ
出演:ダニエル・ロンドン、ウィル・オールダム、ターニャ・スミス
2006 年/アメリカ/ヴィスタ/カラー/73 分
©2005,Lucy is My Darling,LLC.
★ロッテルダム国際映画祭タイガー・アワード(最高賞)受賞、ロサンゼルス映画批評家協会インディペンデント・フィルム賞 受賞
もうすぐ父親になるマークは、ヒッピー的な生活を続ける旧友カートから久しぶりに電話を受ける。キャンプの誘い。 “戦時大統領”J・W・ブッシュは再選し、カーラジオからはリベラルの自己満足と無力を憂う声が聞こえる。ゴーストタウンのような町を出て、二人は、ポートランドの外れ、どこかに温泉があるという山へ向かうが……。『リバー・オブ・グラス』から 12 年――貯めた資金をもとに完成の目処なくスタートした企画だったが、ライカートの評価を一躍高めた 2 作目。
3)『ウェンディ&ルーシー』WENDY and LUCY
脚本:ジョン・レイモンド 撮影:サム・レヴィ 製作総指揮:トッド・ヘインズ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ウィル・パットン、ジョン・ロビンソン、ウィル・オールダム
2008 年/アメリカ/ヴィスタ/カラー/80 分
© 2008 Field Guide Films LLC
★カンヌ国際映画祭パルム・ドッグ賞受賞
『オールド・ジョイ』に惚れ込み、ライカートに自らアプローチしたミシェル・ウィリアムズを主演に迎えた、一人と一匹の異色のバディが織りなす彷徨譚。ほぼ無一文のウェンディは、愛犬ルーシーと共に新しい生活を始めるため、仕事を求めてアラスカへと向かっている。しかし、途中オレゴンのスモールタウンで車が故障。さらに警察に連行されてしまい、ルーシーは行方不明に……。ライカート自身「これは私の物語でもある」と語る、世界の悲惨と個人の尊厳を描き切った代表作。
4)『ミークス・カットオフ』MEEK’S CUTOFF
脚本:ジョン・レイモンド 撮影:クリストファー・ブローヴェルト 製作総指揮:トッド・ヘインズ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ゾーイ・カザン、ポール・ダノ、ブルース・グリーンウッド
2010 年/アメリカ/スタンダード/カラー/109 分
©2010 by Thunderegg,LLC.
★ヴェネツィア国際映画祭 SIGNIS 賞 受賞
アメリカのアイデンティティの根源たる西部開拓神話が、ライカートのオルタナティブな視点とスタイルによって見事に解体された歴史的一作。1845 年のオレゴン。広大な砂漠を西部へと向かう白人の三家族は、近道を知っているという先住民・ミークを雇うが、長い 1 日が何度繰り返されど、目的地に近づく様子はない。道に迷った彼らを襲うのは飢えと互いへの不信感だった……。実在の人物と史実をベースに、当時の女性たちの日記を丹念に読み込み、現代の寓話として生々しく再構築した意欲作。
ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ
7月17日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次開催
【上映作品】
『リバー・オブ・グラス』
撮影:ジム・ドゥノー
出演:リサ・ドナルドソン(リサ・ボウマン)ラリー・フェンセンデン
1994/アメリカ/スタンダード/カラー/76 分
『オールド・ジョイ』
脚本:ジョナサン・レイモンド
撮影:ピーター・シレン 音楽:ヨ・ラ・テンゴ
出演:ダニエル・ロンドン、ウィル・オールダム
2006/アメリカ/ヴィスタ/カラー/73 分
『ウェンディ&ルーシー』
脚本:ジョナサン・レイモンド 撮影:サム・レヴィ
出演:ミシェル・ウィアムズ、ウォリー・ダルトン
2008/アメリカ/ヴィスタ/カラー/80 分
『ミークス・カットオフ』
脚本:ジョナサン・レイモンド
撮影:クリストファー・ブローヴェルト
出演:ミシェル・ウィルアムズ、ゾーイ・カザン、ポール・ダノ
2010/アメリカ/スタンダード/カラー/103 分
配給:グッチーズ・フリースクール、シマフィルム
提供:シマフィルム、東映ビデオ
公式 Twitter: https://twitter.com/kelly2021_jp
この記事が気に入ったらフォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow WEEKEND CINEMA