2024年ベルリン国際映画祭にてプレミア上映され、観客の大喝采を浴び最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞をW受賞したパレスチナ人とイスラエル人の若手監督による衝撃と奇跡のドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』が2月21日(金)より全国公開。先日発表された第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートを果たし、映画にさらなる注目が集まる中、日本版予告編がついに完成した。
本作は、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区「マサーフェル・ヤッタ」の住民たちが力を合わせ20年以上占領に抗い続けてきた歴史にも触れながら、イスラエル軍がパレスチナ人に対して長年行ってきた占領政策の本質と実態に肉薄。パレスチナが置かれた現状を知る上での必見作だ。

そんな本作の日本版予告編は、マサーフェル・ヤッタにあるバーセルの暮らす村をイスラエル軍の無数の軍用車両が急襲し、彼がビデオで撮影していたために兵士に襲いかかられる緊迫の場面で幕を開ける。彼はイスラエル軍の不当な行いに心を痛めてこの村にやってきたジャーナリスト・ユヴァルからのサポートの申し出を快く受け入れるが、バーセルとともに占領に抗ってきたハムダーンがユヴァルに「イスラエル人だろ? 侵略者の仲間など信頼できない」と面と向かって厳しい言葉を投げかける様子も映し出す。
ふたりは素材提供や自ら番組にも出演することでマサーフェル・ヤッタの現状はたびたび報道されるが、状況が改善する気配はない。映像では、軍などにより家が破壊されることに抗議する人、村の自由をもとめて行進する人々、「時間がかかっても諦めない」というバーセルの強い覚悟が伝わる言葉、ユヴァルがカメラを手に兵士に「祖国の暴挙を見過ごせない」と詰め寄る様子などのほかに、代々この場所で生きてきたマサーフェル・ヤッタの人々のささやかな日常が伝わる光景も切り取った。
映像の最後では同じ想いで行動を共にするバーセルとユヴァルが笑顔で互いの顔を見る様子を捉えるが、そこに記された「一滴のしずくから、世界は変わる」というメッセージは、バーセルが本作の中で村人たちに諦めないことの大事さを呼びかけた際の言葉をベースにしている。
予告編のナレーションを担当したのは、俳優の池松壮亮。今年だけでも『レイブンズ』『フロントライン』『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』といった話題の映画への出演が続く名優・池松は、これまで作品本編にナレーションとして参加した経験はあるが、映画の予告編単体でナレーションを務めるのは本作が初めて。今回のナレーションに際して、「並外れた作品だと思いました。このような形でこの作品に賛同できることをとても光栄に思っています。異なるバックグラウンドを持つ4名の監督が親密に手を取り合い、同じ空の下の現実を伝えようと、ジャーナリズムへの献身と努力で世界に情報を伝えてくれました。決して他人事ではいられず、無関心ではいられませんでした。今作に出会えたことに感謝しています。 今この映画を、是非観ていただきたいです」と語った。

本作の舞台となるのは、イスラエル軍による破壊行為と占領が今まさに進行している、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区「マサーフェル・ヤッタ」。この現状をカメラに収め世界に発信することで占領を終結させ故郷の村を守ろうとするパレスチナ人青年バーセル・アドラーと、彼に協力しようとその地にやってきたイスラエル人青年ユヴァル・アブラハームの2人による決死の活動を、2023年10月までの4年間に渡り記録。あまりに不条理な占領行為を、そこで暮らす当事者だからこそ捉えることのできた至近距離からの緊迫感みなぎる映像であぶりだしていく。同時に、バーセルとユヴァルが、パレスチナ人とイスラエル人という立場を越えて対話を重ね理解し合うことで生まれる奇跡的な友情と、ただ故郷の自由を願い強大な力に立ち向かい続ける人々の姿も映し出す。監督は、バーセルとユヴァルを含むパレスチナとイスラエルの若き映像作家兼活動家の4人が共同で務めた。
1月27日時点で11の観客賞をはじめすでに61もの賞を獲得しており、堂々のオスカーノミネートといえるが、世界各地での圧倒的な高評価とは裏腹に、アメリカ国内では政治的な事情から、劇場公開しようと手を挙げる配給会社が未だにない。そのため、本来であれば配給会社へ権利を販売する役割であるセールス会社が、みずから劇場に働きかけ1月末の公開を実現させるという異例の事態となっている。
1月8日(現地時間)のニューヨーク映画批評家協会賞の授賞式では、作品賞を受賞した『ブルータリスト』のブラディ・コーベット監督がスピーチの締めくくりに「最後に言いたいことがあります。『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』を配給する時が来ました」と述べ、大きな話題を呼んだ。米国内の映画人からも本作の今後の動向に注目が集まっているが、日本はフランスやドイツなど欧州各国に続く劇場公開となり、アジアでは最速公開だ。
ノー・アザー・ランド 故郷は他にない
2025年2月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋 ほか全国公開
監督:バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショール
2024年/ノルウェー、パレスチナ/アラビア語、ヘブライ語、英語/5.1ch/95分/原題:NO OTHER LAND/日本語字幕:額賀深雪/配給:トランスフォーマー
Ⓒ2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA
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