幼少期の性被害によって人生を大きく変えられた2人の少年の行く末を描き、世界各国の映画祭で大きな反響を呼んだ映画『Mysterious Skin(原題)』が邦題を『ミステリアス・スキン』として4月25日(金)より渋谷ホワイトシネクイントほかにて全国ロードショーが決定した。長らく日本では未公開となっていた本作が、製作から20年の時を経てついに劇場初公開を迎える。あわせて両A面ポスタービジュアル、予告編、場面写真、監督コメント全文が解禁された。
90年代“ニュー・クィア・シネマ”のムーブメントを牽引し、つねに時代の遥か先を見据えてきたグレッグ・アラキ監督による本作は、第61回ヴェネチア国際映画祭(2004年)でのプレミア上映を皮切りに、トロント、サンダンス、ロッテルダム映画祭などでも上映され、世界中で大きな反響を呼んだ。当時23歳でブレイク前のジョセフ・ゴードン=レヴィット(『スノーデン』『(500)日のサマー』)、そして現在は映画監督として世界に名を轟かせるブラディ・コーベット(『ブルータリスト』『シークレット・オブ・モンスター』)が全身全霊を注ぎ、チャレンジングな役柄に果敢に臨んだ。


その他にもミシェル・トラクテンバーグ(ドラマ『ゴシップガール』シリーズ)、メアリー・リン・ライスカブ(ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』シリーズ)、エリザベス・シュー(『リービング・ラスベガス』、ドラマ『CSI:科学捜査班』シリーズ)など、人気を博する実力派俳優たちが脇を固めている。製作から20年、世界中でグレッグ・アラキの再評価が高まるなか、いま観られるべき作品が初の全国ロードショーを迎える。
カンザス州の田舎町ハッチンソン。1981年の夏、リトルリーグのチームメイトである8歳の少年ブライアン(ブラディ・コーベット)とニール(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、幼い子供への性加害を常習的に行なっていた一人の“コーチ”(ビル・セイジ)によって大きく人生を狂わされる。精神的ショックから記憶を失い、後遺症にさいなまれる日々を過ごしていたブライアンは、やがて自分は宇宙人に誘拐されたために記憶を失ったのだと思い込むように。一方 “コーチ”と8歳の自分の間にあったものは「愛」だと信じていたニールは、彼の影を追い求めて年上の男たちを相手に身体を売りながら生きる道を選んだ。「空白の記憶」から10年——ブライアンが真実を取り戻そうとするうち、手がかりとして浮かび上がってきたのは繰り返し夢に現れる一人の少年。そして、その少年がニールであることをついに突き止めたブライアンだったが、すでに彼はニューヨークへと旅立ったあとだった……。
今回、解禁となったのはブルーとピンクのノスタルジックな淡い色合いが印象的な両A面のポスタービジュアル。ブルーのビジュアルはブラディ・コーベット扮するブライアン、そしてピンクのビジュアルはジョセフ・ゴードン=レヴィット扮するニールの、それぞれアップの表情を切り取ったもの。精神的ショックでトラウマを抱え、性被害の体験を“思い出せない”ブライアン。その一方、特別な「愛」の思い出として、性被害の体験が“忘れられない”ニール。ひと夏の出来事により、その後の人生が大きく変わってしまった対照的な2人の少年、その表裏一体の姿を表現したデザインとなっている。

あわせて解禁となったのは、今年2月に行われたオーケストラ・セットでの来日公演の興奮さめやらぬアイスランドの至宝シガー・ロスによる劇中曲「Samskeyti」が忘れがたい余韻を残す予告編。また、オリジナル劇伴を手掛けるのはハロルド・バッド&ロビン・ガスリー。ハロルド・バッドは、ブライアン・イーノやコクトー・ツインズ(エリザベス・フレイザーとロビン・ガスリーによるユニット)とのコラボレーションでも有名なアンビエント・ミュージック界の巨匠(2020年に新型コロナによる合併症のため他界)。その他にもスロウダイヴ、カーヴ、ライドなど浮遊感のあるシューゲイザー・サウンドが彩りを添えている。
本作の原作はスコット・ハイムが1995年に発表し、かのウィリアム・バロウズも絶賛した同名小説。日本では『謎めいた肌』として2016年にハーパーコリンズ・ジャパンより刊行された。グレッグ・アラキは、本作の魅力について「人生のうち、何年かを費やして映画にしたいと思えるほどの情熱と興奮を覚えたのは、この作品に出会ったときだけでした。ずっと起きてきたのに決して語られることのなかった関係性や出来事が露になり、読者は心をかき乱されつつも惹きつけられてしまいます」と表現する。
また、映画化にあたっては「こうした極めて不穏な場面に背を向けてしまうのであれば作る意味がないと思いました。それでは原作の持つ特別な力や、心を引き裂くような衝撃が失われてしまうからです。この物語は人々に気づきをもたらす、語られるべき話であり、それを途中で目をそらせない“映画”という形で見るのは強烈な体験になるでしょう。私としては、『ミステリアス・スキン』が見た人に変化を起こし、タブーへの沈黙を破るきっかけになることを願います」とその決意を語り、自身の実体験をもとに小説を著したスコット・ハイム自身も「これ以上の映画化はない」と太鼓判を押す、最良の実写版を作り上げた。
グレッグ・アラキ(監督)コメント全文
人生のうち、何年かを費やして映画にしたいと思えるほどの情熱と興奮を覚えたのは、この作品に出会ったときだけでした。ずっと起きてきたのに決して語られることのなかった関係性や出来事が露になり、読者は心をかき乱されつつも惹きつけられてしまいます。もし映画化でこうした極めて不穏な場面に背を向けてしまうのであれば作る意味がないと思いました。それでは原作の持つ特別な力や、心を引き裂くような衝撃が失われてしまうからです。この物語は人々に気づきをもたらす、語られるべき話であり、それを途中で目をそらせない“映画”という形で見るのは強烈な体験になるでしょう。私としては、『ミステリアス・スキン』が観た人に変化を起こし、タブーへの沈黙を破るきっかけになることを願います。本作のエンディングには、個人的に魔法のようなものを感じます。光と影が絶妙な塩梅で共存していると感じるんです。嘘くさいハッピーエンドではありませんが、完全に絶望しかないわけでもなく、一筋の希望が見えます。観たあとには、私が真に望んだのはどちらなのかという疑問が残るでしょう。
ミステリアス・スキン
2025年4月25日(金)より渋谷ホワイトシネクイントほか全国ロードショー
ブラディ・コーベット ジョセフ・ゴードン=レヴィット
ミシェル・トラクテンバーグ ジェフリー・リコン ビル・セイジ メアリー・リン・ライスカブ エリザベス・シュー
監督・脚本:グレッグ・アラキ 原作:スコット・ハイム『謎めいた肌』(ハーパー・コリンズジャパン刊)
製作総指揮:マイケル・J・ワーナー、ヴァウター・バレンドレクト 製作:メアリー・ジェーン・スカルスキー、ジェフリー・レヴィ=ヒント、グレッグ・アラキ 撮影監督:スティーヴ・ゲイナー(ASC) プロダクションデザイン:デヴォラ・ハーバート 衣装デザイン:アリックス・へスター 音楽:ハロルド・バッド、ロビン・ガスリー 音楽監修:ハワード・パー 製作会社:アンチドート・フィルムズ、デスパレート・ピクチャーズ
2004年|105分|アメリカ|英語|アメリカンビスタ|5.1ch|原題:Mysterious Skin|字幕翻訳:安本熙生|R15+
配給・宣伝:SUNDAE
©MMIV Mysterious Films, LLC
この記事が気に入ったらフォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow WEEKEND CINEMA