フランスの名匠オリヴィエ・アサイヤス監督最新作『Hors du temps(原題)』が『季節はこのまま』の邦題で5月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開されることが決定した。あわせて、日本版ポスタービジュアルが解禁された。

本作が描くのは、2020年4月、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中で外出が制限された春。映画監督の兄ポールと音楽ジャーナリストで弟のエティエンヌは、それぞれが本格的な交際を始めたばかりである恋人のモルガン、そしてキャロルとともに、子どもの頃暮らした郊外の家に閉じこもって生活することになる。

懐かしい風景、新たな生活様式への戸惑い、世界から切り離されたような感覚、一緒に住んで初めて知る互いのこと……なにもかもが変わり、すべてが「止まってしまった」時間のなかで、ポールたちは不安を抱えながらもゆっくりと、たしかにそこにある光、愛と人生の新たな側面を発見していく。

いまからちょうど5年前の2020年3月17日、フランスでは最初の外出制限(ロックダウン)が開始され、段階的解除まで約2か月に及んだ(日本での最初の緊急事態宣言は4月7日から5月25日の約1ヶ月半)。オリヴィエ・アサイヤス監督が実際に弟と子供時代を、そしてロックダウン期間を過ごした両親の家で撮影された本作。物語には実際のロックダウン期間の体験から自伝的要素までを多分に含み、アサイヤス自身「これまでの作品のなかでも最もパーソナルで親密」と語る映画に仕上がった。

そんな本作の主演は、アサイヤス監督と3度目のタッグを組むヴァンサン・マケーニュ。そして監督の近作では欠かせない女優であるノラ・アムザウィ、初参加に舞台でも活躍するミシャ・レスコーや、伝説のモデル/デザイナーのイネス・ド・ラ・フレサンジュの娘で、Diorのモデルとしても活躍する新星ナイン・ドゥルソが見事なアンサンブルを見せてくれる。

さらにスタッフ陣もフランス映画界を代表する才能が集結。撮影はアルノー・デプレシャンやレオス・カラックス、ジャ・ジャンクー作品で知られるエリック・ゴーティエ、編集はミカエル・アースやミア・ハンセン=ラブ作品を手掛けるマリオン・モニエが担当。その他のスタッフも、セリーヌ・シアマやアラン・ギロディ、ウェス・アンダーソン、クレール・ドゥニからフランソワ・トリュフォーまで、錚々たる名監督たちを支えたメンバーがそれぞれに才能を発揮する。

このたび解禁となったポスタービジュアルには、美しくまばゆい新緑の庭にたたずむヴァンサン・マケーニュとナイン・ドゥルソが写された場面写真に、「あれから5年、私たちどうだった?」というコピーが添えられている。急に自炊に凝り出した。またネットで不要なものを買ってしまった。屋外で本を読む気持ちよさを知った。道で友人に会い、うれしくって泣いてしまった。縫い付けられた日々にたしかにあった、忘れてしまいたい時間、覚えておきたい静寂、ふとした優しさに救われる気持ち──実体験を基に作られた本作ならではの圧倒的な共感への期待が高まる。

本作の制作のきっかけとなり、本編にも登場するのが、アサイヤス監督が敬愛してやまない画家デイヴィッド・ホックニーの言葉である。「ホックニーがロックダウン中にiPadで、本作の舞台と同じノルマンディーの風景を見て絵を描いたように、自分はこの映画『季節はこのまま』を撮ったのだ」と、監督は語っている。名匠アサイヤス監督が誰しもの心に残る「あの日々」を描き、人生を見つめ直すロマンス・コメディが、この春観客を笑いと共感で包み込む。
オリヴィエ・アサイヤス OLIVIER ASSAYAS
1955年1月25日、パリに生まれる。画家・グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートし、フランスの映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」の編集者として働きながら、自身の短編映画製作を始める。長編初監督作『無秩序』(86)がいきなりヴェネツィア国際映画祭で国際批評家週間賞を受賞して以降、カンヌ国際映画祭やヴェネツィア国際映画祭での監督賞・脚本賞・女優賞等を複数回受賞するほか、テレビ映画でもゴールデングローブ賞を受賞するなど、40年近くにわたり現代映画界のトップランナーとして活躍する。主な作品に『冷たい水』(94)、『イルマ・ヴェップ』(96)、『8月の終わり、9月の初め』(99)、『クリーン』(04)、『夏時間の庭』(08)、『アクトレス 女たちの舞台』(14)、『パーソナル・ショッパー』(16)、『冬時間のパリ』(18)など。2022年にはA24とタッグを組み、同名作のリメイクとなるドラマシリーズ「イルマ・ヴェップ」(22)を制作した。様々なジャンルや形式に挑戦する多彩な作風の中にも、時の移ろい、そしてそれを見つめる人々の心の機微を繊細に描き、現代映画の可能性を大胆に拡張させてきた。

季節はこのまま
2025年5月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー
STORY
2020年4月、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中で外出が制限された春。映画監督のポールと音楽ジャーナリストで弟のエティエンヌは、それぞれが本格的な交際を始めたばかりであるモルガン、そしてキャロルとともに、子どもの頃に暮らした郊外の家に閉じこもって生活することになる。懐かしい風景、新たな生活様式への戸惑い、世界から切り離されたような感覚、一緒に住んで初めて知る互いのこと…なにもかもが変わり、すべてが「止まってしまった」時間のなかで、ポールたちは不安を抱えながらもゆっくりと、たしかにそこにある光、愛と人生の新たな側面を発見していく。
2024年/フランス/105分/1.85:1/5.1ch 原題:Hors du temps 英題:Suspended Time 字幕翻訳:手束紀子
第74回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門正式出品
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス(『夏時間の庭』『冬時間のパリ』「イルマ・ヴェップ」)
撮影:エリック・ゴーティエ(『そして僕は恋をする』『ポーラX』『新世紀ロマンティクス』)
編集:マリオン・モニエ(『サマーフィーリング』『それでも私は生きていく』「イルマ・ヴェップ」)
出演:ヴァンサン・マケーニュ(『女っ気なし』)、ミシャ・レスコー(『サンローラン』)、ナイン・ドゥルソ、ノラ・アムザウィ(『オークション 〜盗まれたエゴン・シーレ』)ほか
配給:Bunkamura
©Carole Bethuel
公式サイト https://kisetsufilm.com
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