チェコのアニメーション&映画作家ヤン・シュヴァンクマイエルが、「最後の長編劇映画」と宣言して2018年に完成させた『蟲(むし)』が8月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開されることが決定した。またヤン・ダン&アダム・オルハ監督によるシュヴァンクマイエルのドキュメンタリー『錬金炉アタノール』、驚愕の記録映画『クンストカメラ』も同時公開。あわせて、予告編とポスタービジュアルが解禁された。
1988年の『アリス』以来、『ファウスト』『悦楽共犯者』『オテサーネク』『ルナシー』『サヴァイヴィング ライフ』と、これまで6本の長編を発表してきたチェコのシュルレアリストにして、アニメーション&映画作家ヤン・シュヴァンクマイエル(現在90歳)の最新3作品の日本公開が決定した。
「最後の長編劇映画」と宣言して完成させた『蟲』(2018)は、チェコの国民的作家であるチャペック兄弟の有名な戯曲『虫の生活』に取り組む、小さな町のアマチュア劇団の物語。とある稽古日のこと、コオロギ役を兼任する演出家は、メンバーたちのやる気の無さに、怒りが収まらない。不穏な空気でリハーサルが進むなか、やがて劇の展開と役者たちの行動が交錯し、ついに舞台に惨劇が訪れる……。
演劇の中の物語、それを演じる役者たちの素の姿、さらに『蟲』のメイキングも同時進行で提示されるという斬新な3層のメタ構造で、シュヴァンクマイエルならではのアニメーション技法も存分に味わえる本作。製作時には資金を補うためのクラウドファンディングが行われ、シュヴァンクマイエルを師と仰ぐクエイ兄弟やギレルモ・デル・トロも大々的に協力、日本のファンも含め世界中から多くの出資が得られて完成した。シュヴァンクマイエルの、シュルレアリストとしてのアプローチが極まった集大成的な一作だ。
加えて、シュヴァンクマイエルの現在と過去を捉えたドキュメンタリー『錬金炉アタノール』(20)、自身の奇怪なコレクションを見せ続ける驚愕の映画『クンストカメラ』(22)も同時公開。
ヤン・ダン&アダム・オルハ監督による『錬金炉アタノール』は、創作上のパートナーでもあった亡き妻エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの想い出、長年、製作を支えてきたプロデューサー、ヤロミール・カリスタとの愛憎入り交じる関係、怪しげな呪物や作品の制作風景、そして日常生活をおくる姿など、シュヴァンクマイエルのあらゆる側面が赤裸々に映し出される。過去作品の抜粋や記録映像もインサートされ、彼の全貌を把握する「入門編」とも言える1本。
「驚異の部屋」「博物陳列室」を意味する『クンストカメラ』で映し出されるのは、チェコの南西部ホルニー・スタニコフにあるお城と旧穀物庫にあるシュヴァンクマイエル自身の「クンストカメラ」。世界中から集めたコレクション、自身や妻の作ったオブジェなど、一般の価値基準とは無縁の不思議なコレクションがヴィヴァルディの「四季」に乗って、ナレーションもなしに延々と映し出される。
あわせて、本予告編と『蟲』のポスタービジュアルも解禁。虫を模したコラージュが大胆に配置されたポスタービジュアルは、ファッションから映画、音楽、書籍まで幅広く活躍するコラージュアーティストQ-TAによるもの。予告編では、『蟲』以外の2作品の映像も垣間見ることができる。

『蟲』『錬金炉アタノール』『クストカメラ』は、8月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。特典付き前売り券2種がシアター・イメージフォーラムで好評発売中。チェコ版ビジュアルのポストカード付き1回券1,600円(税込)と、チェコ版ビジュアルのミニポスター付き3回券3,900円(税込)の2種類だ。また、シアター・イメージフォーラムでは、最新3作品に加えて『アリス』『ファウスト』『オテサーネク』『サヴァイヴィング ライフ』も上映予定。
作品紹介
『蟲』
シュヴァンクマイエルのシュルレアリストとしてのアプローチが極まった集大成的な一作!
チャペック兄弟の有名な戯曲『虫の生活』の第二幕「捕食生物たち」に取り組む、小さな町のアマチュア劇団。遅刻や欠席するメンバーたちのやる気の無さに、コオロギ役兼任の演出家は怒りが収まらない。そしてやはりコオロギ役を務める彼の妻ルージェナはハチ役の男と明らかに不倫中……。不穏な空気でリハーサルが進むなか、やがて劇の展開と役者たちの行動が交錯し、ついに舞台に惨劇が訪れる!
監督:ヤン・シュヴァンクマイエル 2018年/チェコ・スロバキア/チェコ語/98分/原題:Hmyz

『錬金炉アタノール』
老境に達したシュヴァンクマイエルの現在と過去を捉えたドキュメンタリー
創作上のパートナーでもあった亡き妻エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの想い出、長年、製作を支えてきたプロデューサー、ヤロミール・カリスタとの愛憎入り交じる関係、怪しげな呪物や作品の制作風景、展覧会の準備や講演、そしてスーパーで買物をする日常の姿など、あらゆる側面が赤裸々に映し出される。
監督:ヤン・ダン、アダム・オルハ 出演:ヤン・シュヴァンクマイエル
2020年/スロバキア・チェコ/英語、チェコ語/117分/原題:ALCHYMICKÁ PEC

『クンストカメラ』
世界中から集めたコレクションや自身のオブジェが映し出される記録映画
チェコの南西部ホルニー・スタニコフにあるお城と旧穀物庫。2時間弱、世界中から集めた絵画や彫像、動物の剥製や貝殻、自身や妻の作ったオブジェなど、一般の価値基準とは無縁の不思議なコレクションがヴィヴァルディの「四季」に乗って、ナレーションもなしに延々と映し出される。
監督:ヤン・シュヴァンクマイエル 2022年/チェコ/115分/原題:Kunstkamera

蟲(むし)
2025年8月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
© Athanor Ltd.
提供・配給:ザジフィルムズ / クープ
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