アンドレイ・チカチーロをモデルにした連続殺人鬼をマルコム・マクダウェルが演じた映画『エヴィレンコ』が10月9日(金)より全国順次公開。このたび推奨コメントと物販情報が解禁された。

50人以上を殺害した旧ソ連時代最大の連続殺人犯であるアンドレイ・チカチーロを『時計じかけのオレンジ』のマルコム・マクダウェルが演じた『エヴィレンコ』。日本ではこれまで紹介されたことがなく、これが日本初上陸・初公開となる。
今回、各界8名より推奨コメントが到着。映画監督の白石和彌は、マルコム・マクダウェルの演技の凄みに触れながら「緊張感に身を削られながら必死で見た。」と恐ろしさについて触れている。
近現代史研究者の辻田真佐憲は、エヴィレンコを「スターリニズムの残滓であり、その醜悪な化身」と表現しつつ、本作がソ連だけの寓話には収まらないことを示唆。
作家の石井光太も、「ソ連の闇はどれだけ深いのだろう」と述べつつ、くり返される人間の歴史について言及。そのほか、有田芳生(衆議院議員)、末廣末蔵(ジャンル映画大好きツイッタラー)、速水螺旋人(漫画家)、山崎圭司(映画ライター)、ゆいちむ(映画好きOL)からコメントが寄せられた。全文は記事下にて。
そして、この公開にあわせて物販も完成。パンフレットのほか、Tシャツ2種も発売となる。収監されたエヴィレンコと、報道された内容が羅列された「収監Tシャツ」と、本国版のロゴを踏襲し、背面には印象的な台詞を挿入した「ロゴTシャツ」の2種。

コメント全文 五十音順、敬称略
有田芳生(衆議院議員)
不気味な重奏低音が観る者の心をザラつかせる。とくに30分を過ぎたあたりにアップされる主人公「エヴィレンコ」の姿が、この作品の恐ろしさをストレートに表現している。1980年代に旧ソ連で実際に発生した子どもと女性を被害者とした連続殺人事件の再現だ。加害者の逮捕により55人が被害者だったことが明らかになる。ラストシーンで流れていく数々の写真は、映画に登場した精神分析医役以外は、おぞましくも実際の被害者だろう。
追い詰める検察官の手法もすごい。何よりもソ連が崩壊に向かう時代の頑固な「旧守派」と「ペレストロイカ(改革派)」の対立のなかに揺れる精神まで表現されている。しかし世界のどこでも、いつの時代にも発生する幼児殺害事件の数々の動機と手法をどう見るか。私は「北関東連続幼女誘拐・殺人事件」を取材し、国会で取り上げた経験から、この作品で犯人の資質について「催眠術」という言葉が使われたことに注目した。北関東の連続事件でも犯人は幼女の心を惹きつける能力を自然に駆使したからだ。
それにしても裁判の過程で、モンスター「エヴィレンコ」の精神は「正常」だと判断された。ならば大量殺人はいかに可能だったのか。この作品の監督デヴィッド・グリエコの祖父がファシズムと闘ったイタリア共産党の書記長(1934年から38年)だったジューロ・グリエコだったことも、社会主義社会への関心として背景にあるのだろう。ソ連のスターリン書記長の政策による虐殺や餓死は、最近の研究でも1000万人近いとされている。「社会主義」のもとでこれほどの犯罪が実行された世界で、55人の殺害が「正常」な精神でのことだとされたなら、世界の「異常」とはいったい何だというのだろうか。
石井光太(作家)
社会や家庭の環境が犯罪者を作り出すという理屈に基づくなら、この比類なき凶悪な殺人鬼を生み出した、戦中から冷戦時代にかけてのソ連の闇はどれだけ深いのだろう。こういう悪魔を誕生させては、恐れおののき、処刑するということをくり返しているのが人間の歴史なのだ。
白石和彌(映画監督)
とんでもなく恐ろしい。エグい描写がたくさんあるわけではない、恐ろしいのはマルコム・マクダウェルのその顔。何を考えてるのか分からないその目で、じっと見つめられて耐えられる者などいない。映画後半の刑事との圧巻のやり取りは映画史に残る凄まじいシーンだ。映画全編に響き渡る重低音のような緊張感に身を削られながら必死で見た。多くは語れないが、ラストカットを見た後の感情を言語化出来る人は果たしているのだろうか。
末廣末蔵(ジャンル映画大好きツイッタラー)
50人以上を惨殺したアンドレイ・チカチーロには、人間を惑わす何かがあったのだろう。この謎に対してマルコム・マクダウェルをキャスティングしたのは正に慧眼であった。
実在の連続殺人鬼をモデルとしながらも、民主化の波で崩壊に向かうソ連の動乱とその闇をも、その青い瞳にドス黒く湛える、エヴィレンコと言う新しい邪悪を誕生させたのだから。
このサディストを、時代の転換期に発生したウィルスであると唱える本作は、今の不確実な世界の危うさをも見透かしているのかも知れない。
辻田真佐憲(近現代史研究者)
エヴィレンコは、スターリニズムの残滓であり、その醜悪な化身である。人を操り、服従させ、未来を喰らう。そして時代に否定されるほど、その凶暴さをむき出しにしていく。だが、これはソ連崩壊だけの寓意だろうか。ソ連は滅んでも、「スターリン的なもの」までは滅びない。彼の内にいた「ライオン」は、いまを生きるわれわれの内にも潜んでいる。
速水螺旋人(漫画家)
イタリアの映画だからでしょうか。欧米の作品にありがちな、ソ連の体制をことさらに悪としてではなく人々が生活する日常の社会として描いていたのが印象的です(それゆえに普遍性も得ていたと思います)。 マルコム・マクダウェルはさすがでした。 レシエフもいい役どころでした。彼が共産党員であることをもうちょっと深堀りしてほしかったとも思いますが、それだと冗長になるのかもしれませんね。
山崎圭司(映画ライター)
理想国家の再構築<ペレストロイカ>が狼を解き放つ―。幼子を狙う“赤い人食い”を追う捜査陣が迷子になるなか、真犯人にまっすぐ向かってゆくショタ同性愛の精神分析医。社会が忌み嫌う劣情を抱えたふたりの咎人が急接近する妖しいスリル。一転、飢えた本能が丸裸になって襲い来る衝撃のクライマックス。変態怪優マクダウェル、還暦の燃えあがる狂演。奇抜なチョイ足し解釈で編み直す、ロシア史上最悪の怪物伝説!
ゆいちむ(映画好きOL)
50人以上を殺害した実在の連続殺人犯アンドレイ・チカチーロを題材としながら、本作が見つめるのは一人の怪物だけではありません。
思想にしがみつくエヴィレンコと、崩壊へ向かうソビエト連邦。
その姿が重なるにつれ、猟奇殺人の物語は、やがて国家そのものを映し出す寓話へと変わっていく。
犯罪映画の枠を超え、ひとつの時代の終わりまで映し出した異色作です。
まとめ(注目ポイント)
- 『エヴィレンコ』10月9日公開マルコム・マクダウェル主演の実在事件モデル作が日本初上陸・初公開。
- 各界から推奨コメント到着白石和彌、石井光太、辻田真佐憲ら各界からコメントが寄せられた。
- アンドレイ・チカチーロをモデル50人以上を殺害した旧ソ連時代最大の連続殺人犯を描く作品。
- パンフレット&Tシャツ2種発売「収監Tシャツ」「ロゴTシャツ」の2種を含む物販情報も解禁。
エヴィレンコ
2026年10月9日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
STORY
生徒への強姦未遂事件により学校の教師の職を追われたエヴィレンコ。やがて次々と女性や子供を惨殺して食い殺す、真の怪物と化していく。連続殺人の犯人を見つけられないまま4年が経過した頃、検察官のレシエフは捜査に加わり、エヴィレンコの心の闇に接近していくこととなる。
監督・脚本:デヴィッド・グリエコ 撮影:ファビオ・ザマリオン 音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演:マルコム・マクダウェル、マートン・チョーカシュ、ロナルド・ピックアップ
2004年|イタリア|カラー|118分|PG-12|原題:Evilenko キングレコード提供 アンプラグド配給
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