ウクライナ映画界の俊英として世界中の期待を集めるヴァレンチン・ヴァシャノヴィチが監督・脚本・撮影・編集・製作を手がけた『アトランティス』と『リフレクション』の2作品がいよいよ今週末6月25日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開。このたび、今も戦禍のウクライナで撮影を続ける監督から日本の観客へのメッセージ動画が到着した。
現在も続くウクライナ侵略戦争を真正面から描いた、今こそ観るべき珠玉の2作『アトランティス』『リフレクション』。『アトランティス』は2025年を舞台に、元兵士の“生”のはかなさと“愛”の尊さを描いた近未来のディストピア映画。『リフレクション』は、敵の捕虜となった外科医の運命を、純真な少女の視点を交え、驚くべきショットの連続で凝視した。
本作の監督のヴァレンチン・ヴァシャノヴィチは、ウクライナ映画史上屈指の傑作との評価を得た『ザ・トライブ』(14)に製作・撮影で参加するなど同国を代表する映画人の一人。いま最も注目を浴びるウクライナの才能だ。
今回そんな監督から『アトランティス』『リフレクション』の日本公開にあたってのメッセージ動画が到着。監督は現在キーウ(キエフ)にて戦禍のウクライナを撮影しているという。
今回上映される作品について「私の母国ウクライナに対するロシアの戦争がテーマです」と語り始める監督。「ニュースで伝えられない人々や出来事に焦点を当て」た彼の作品は、「パーソナルで小さな物語かと思われるかもしれません。しかし何千もの個人の物語がウクライナの国民性を作り上げています。それはロシアの侵略やその爪痕や悪影響に対する、何百年もの抵抗により形成されました」と、長きにわたりウクライナがロシアの脅威にさらされてきたこと、そして、その脅威は国民性にも影響を及ぼしていると監督は語る。
さらに、「こうして話している間も何万もの英雄たちが、自由と民主主義のために命をかけて戦っています。皆さんがこの映画を観ることで我々は勝利に少し近づきます。ウクライナの視点を知ってくださるほど、ロシアのプロパガンダと戦意は弱体化していくのです」と、観客へ真摯に語りかけている。
なお、ロシアとの戦争終結後PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱える元兵士が主人公である『アトランティス』で主演を務めたアンドリー・ルィマルークは実際に元兵士で、ヴァシャノヴィチ監督の抜擢により『アトランティス』で初めて映画に出演し、いきなり主演でデビューを飾ったという経歴を持つが、彼もまた、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったため再び兵士として前線で戦っているという。
そして『アトランティス』『リフレクション』のプロデューサーであるウォロディミル・ヤツェンコもまた、現在ウクライナ軍の兵士として戦っているとのこと。カメラを武器にして戦っているヴァシャノヴィチ監督からの、命がけとも言うべき渾身のメッセージ映像となっている。監督からのメッセージ全文は以下にて。
本作の公開初日である6月25日(土)にはシアター・イメージフォーラムにてトークイベントが開催されることが決定。12:50〜の『アトランティス』上映終了後に梶山祐治(筑波大学UIA)によるトークイベントが行われる。
トークイベント概要
■日時 :6月25日(土) 12:50〜『アトランティス』上映終了後
■会場 :シアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区渋谷2−10−2)
■登壇 :梶山祐治(筑波大学UIA)
ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督メッセージ全文
ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチです。今からご覧いただく『リフレクション』の監督です。この映画に時間を割いてもらえ、うれしく光栄に思います。2014年から始まり現在も続いている、私の母国ウクライナに対するロシアの戦争がテーマです。ニュースで伝えられない人々や出来事に焦点を当てています。パーソナルで小さな物語かと思われるかもしれません。しかし何千もの個人の物語がウクライナの国民性を作り上げています。それはロシアの侵略やその爪痕や悪影響に対する、何百年もの抵抗により形成されました。こうして話している間も何万もの英雄たちが、自由と民主主義のために命をかけて戦っています。皆さんがこの映画を観ることで我々は勝利に少し近づきます。ウクライナの視点を知ってくださるほど、ロシアのプロパガンダと戦意は弱体化していくのです。ウクライナのキーウより感謝と敬意をこめて。では、ご覧ください。
アトランティス
リフレクション
2022年6月25日(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
アトランティス
STORY
ロシアとの戦争終結から1年後の2025年。戦争で家族を亡くし、唯一の友人も失った孤独な主人公セルヒーが、兵士の遺体発掘、回収作業に従事するボランティア団体の女性との出会いをきっかけに、自らが“生きる”意味と向き合っていく姿を描く。死に覆いつくされた世界を漂流する生のはかなさと、そこに芽生えた愛の尊さをサーモグラフィー・カメラが鮮烈に映し出す。
【監督・脚本・撮影・編集・製作】ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ
【出演】出演:アンドリー・ルィマルーク、リュドミラ・ビレカ、ワシール・アントニャック
2019年|ウクライナ映画|ウクライナ語|109分|シネスコ|デジタル5.1ch|原題:Атлантида|英題:Atlantis|日本語字幕:杉山緑
字幕監修:梶山祐治|字幕協力:東京国際映画祭|協力:ウクライナ映画人支援上映 有志の会
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム
©Best Friend Forever
リフレクション
STORY
クリミア侵攻が始まった2014年。従軍医師のセルヒーは、東部戦線で人民共和国軍の捕虜となり、悪夢のような非人道的行為を経験。やがて首都キーウに帰還したセルヒーが、失われた日常を取り戻そうと苦闘する姿を、娘ポリーナとの触れ合いを軸に見すえていく。戦争と平和、生と死、肉体と魂、そして贖罪。深遠なる多義性に富んだ本作には、ヴァシャノヴィチ監督の並外れた才気が凝縮されている。
【監督・脚本・撮影・編集・製作】ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ
【出演】ロマン・ルーツキー、アンドリー・ルィマルーク、ニカ・ミスリツカ
2021年|ウクライナ映画|ウクライナ語・ロシア語|126分|シネスコ|デジタル5.1ch|原題:Відблиск|英題:Reflection|日本語字幕:額賀深雪
字幕監修:梶山祐治|協力:ウクライナ映画人支援上映 有志の会
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム
©Arsenal Films, ForeFilms
公式サイト Atlantis-reflection.com
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