9月23日(金・祝)より開催される特集上映「生誕80周年記念 クロード・ミレール映画祭」の予告編が完成した。あわせてラインナップ詳細とタイムテーブルも発表された。
ロベール・ブレッソン、ジャン=リュック・ゴダール、ジャック・ドゥミ、フランワ・トリュフォーら映画史に燦然と輝くフランス映画の巨匠たちの助監督や製作主任としてキャリアをスタートさせたクロード・ミレール。映画評論家の梅本洋一はミレールの人物像について、かつてこのように書いた。「映画が好きだった。映画狂だった。イングマール・ベルイマンとアルフレッド・ヒッチコックは特に好きだった。何度も何度も繰り返し観た。若きトリュフォーのようにすべてのシーンを暗記していた。いつも行きつけの映画館の案内嬢とは顔見知りにさえなった。彼にとって若き日々とは映画館の暗闇だった。」(「見えない距離を踏破するークロード・ミレールについて」季刊リュミエール21985―冬(筑摩書房)より)
名門映画学校 IDHEC(現 FEMIS)で映画を学び、とりわけ同時代のヌーヴェル・ヴァーグの作家たちに刺激を受けたミレール。監督デビューは34歳。やがてミレールは映画の作り手として圧倒的な手腕を示し、巧みな演出術で、俳優たちの魅力を最大限に引き出した。
このたびの特集上映では、ミレールの代表作にして思春期映画の傑作『なまいきシャルロット』、日本劇場初公開となる名優たちが織りなす緊迫感あふれるサスペンス『勾留』、大人になる寸前の女性の複雑な心の揺らぎを大きな時代のうねりの中に描いた愛憎劇『伴奏者』、ミレール晩年期の最高傑作『ある秘密』の4作品が上映される。
今回解禁となった予告編では、『なまいきシャルロット』の主題歌、リッキ・エ・ポーヴェリの「Sarà perché ti amo」に乗せてシャルロット・ゲンズブールの様々な表情を切り取るほか、リノ・ヴァンチュラ、ミシェル・セロー、ロミー・シュナイダー、ロマーヌ・ボーランジェ、セシル・ドゥ・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、マチュー・アマルリックら俳優陣たちの姿を垣間見ることができる。
本特集に際して、映画批評家の須藤健太郎は、「クロード・ミレールの映画を見るときに試されるのは、われわれの想像力である」として、ミレール作品の見方を下記のように示している。
クロード・ミレールはいつも「想像力」のあり方を問うてきた。主人公はつねに妄想を膨らませ、物語を紡ぐ。今回上映される4作品はその典型だろう。『勾留』の刑事も、『なまいきシャルロット』の少女も、『伴奏者』のピアニストも、『ある秘密』の語り手も、みな想像界の住人だ。しかし、空想は現実の対義語とは限らない。噓は真実を隠すのではない。扮装が本来の姿を示すこともある。セクシュアリティに焦点が当てられるのは、そこで身体とファンタスムとが交錯するからだ。クロード・ミレールの映画を見るときに試されるのは、われわれの想像力である。現実を、自分のありのままの欲望を見つめるには、想像力の鍛錬が必要なのだ。
――須藤健太郎 (映画批評家)
繊細でありながらエネルギッシュに生きる若者の心情や、人間の心に潜む理屈では割り切れない複雑な感情。周りとの関係性や状況によって揺れ動く人間の心理を独自の作家性で描きながら、観客との共感を常に意識し映画を作り上げてきたクロード・ミレール。生誕80周年を迎える今、スクリーンで伝説の名作たちを堪能できる貴重な機会となる。
なお、新宿シネマカリテにて初日の9/23(金)18:30の回上映後に山崎まどか(コラムニスト)によるトークイベントが決定。また、本特集上映は角川シネマ有楽町でも同日 9/23 より開催が決定した。
新宿シネマカリテ タイムテーブル
上映作品詳細
① 『なまいきシャルロット』 (原題:L’EFFRONTEE) 1985 年/フランス/98 分
「この町を出て自由になりたい」。反抗期真っ只中の少女は、町にやってきた同じ歳の天才ピアニストと出会い、外の世界を夢見る。カーソン・マッカラーズの小説「結婚式のメンバー」をもとに、多感で繊細な少女のひと夏を描いた思春期映画の傑作。本作でデビューしたシャルロット・ゲンズブールは、史上最年少の 14 歳でセザール賞新人女優賞を受賞。思春期特有のコンプレックスや苛立ちを抱える少女を、瑞々しく好演した。
<1986 年セザール賞助演女優賞・新人女優賞/1985 年ルイ・デリック賞 受賞>
監督・脚本:クロード・ミレール
脚本:リュック・ベロー、ベルナール・ストラ、アニー・ミレール
撮影:ドミニク・シャピュイ
出演:シャルロット・ゲンズブール、ジャン=クロード・ブリアリ、ベルナデット・ラフォン
© TF1 FILMS PRODUCTION – MONTHYON FILMS – FRANCE 2 CINEMA
② 『勾留』 (原題:GARDE A VUE) 1981 年/フランス/84 分 ★日本劇場初公開
大晦日の夜、幼女連続レイプ殺人の容疑をかけられた公証人。決定的な証拠が見つからない中、彼が犯人だと信じて疑わない刑事は尋問を続けるが、物語は思わぬ方向へ展開していき……。リノ・ヴァンチュラ、ミシェル・セロー、ロミー・シュナイダーら、名優たちが織りなす緊迫感あふれるサスペンス。セローはセザール賞主演男優賞を受賞。2000 年に『アンダー・サスピション』としてリメイク。
<1982 年セザール賞主演男優・編集・助演男優・脚本賞/1981 年モントリオール世界映画祭最優秀脚本賞 受賞>
監督・脚本:クロード・ミレール
脚本:ジャン・エルマン、台詞:ミシェル・オーディアール、撮影:ブルーノ・ニュ
出演:リノ・ヴァンチュラ、ミシェル・セロー、ロミー・シュナイダー、ギイ・マルシャン
©1981 - TF1 FILMS PRODUCTIONS - TF1 DROITS AUDIOVISUELS
③ 『伴奏者』 (原題:L' ACCOMPAGNATRICE) 1992 年/フランス/110 分
第二次大戦時、ドイツ占領下のパリで世界的オペラ歌手の伴奏者となった貧しい 20 歳のピアニスト。彼女はオペラ歌手への羨望と嫉妬を胸に秘めながらも仕事に励むが、時代は彼女たちに人生の選択を迫り……。大人になる寸前の女性の複雑な心の揺らぎを、大きな時代のうねりの中に描いた愛憎劇。原作はニーナ・ベルベーロワの同名小説。
<1993 年イスタンブール国際映画祭国際批評家連盟(FIPRESCI)賞・審査員特別賞、1993 年ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞受賞>
監督・脚本:クロード・ミレール
脚本:リュック・ベロー、撮影: イヴ・アレグロ
出演:ロマーヌ・ボーランジェ/リシャール・ボーランジェ/エレナ・サフォノヴァ/サミュエル・ラバルト/ベルナール・ヴェルレー
©1992 STUDIO CANAL - France 3 Cinéma
④ 『ある秘密』 (原題:UN SECRET) 2007 年/107 分/フランス
あるユダヤ人家族。父親の愛情を感じられない病弱な少年は、両親が何か隠し事をしていると疑っている。第二次大戦を生き抜いた両親の秘密が、過去と現在を往来して紐解かれていく。フィリップ・グランベールの自伝的小説が原作の、ミレール晩年期の最高傑作と評される重厚な人間ドラマ。セシル・ドゥ・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、マチュー・アマルリックら当時の若手実力派が顔を揃えた。
<2008 年セザール賞助演女優賞/2007 年モントリオール世界映画祭最優秀作品賞/2008 年ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞受賞>
監督・脚本:クロード・ミレール
脚本:ナタリー・カルテル、撮影:ジェラール・ド・バティスタ
出演:セシル・ドゥ・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、マチュー・アマルリック
© UGC YM – FRANCE 3 CINEMA – INTEGRAL FILM
photo:Thierry Valletoux
生誕80周年記念 クロード・ミレール映画祭
開催期間: 2022 年 9 月 23 日(金・祝)~10 月 13 日(木)
※角川シネマ有楽町は10月20日(木)まで連日1日1回上映
会場:
新宿シネマカリテ (新宿区新宿 3-37-12 新宿 NOWA ビル B1F)
角川シネマ有楽町 (千代田区有楽町 1-11-1 読売会館8階)
※タイムテーブルは特集上映公式サイトおよび劇場の公式サイトにて近日発表
上映予定作品:
『なまいきシャルロット』 原題:L’EFFRONTEE 1985 年/フランス/96 分
『勾留』 原題:GARDE À VUE 1981 年/フランス/84 分 ★日本劇場初公開
『伴奏者』 原題:L' ACCOMPAGNATRICE 1992 年/フランス/107 分
『ある秘密』 原題:UN SECRET 2007 年/フランス/110 分
主催・配給:ノーム
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