香港特別行政区設立25周年記念映画祭「Making Waves – Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」が11月13日(日)に最終日を迎え、13日に行われた『6人の食卓』上映には、キュートな魅力で大人気のマレーシア出身の女優リン・ミンチェンが上映前の舞台挨拶、上映後のQ&Aに登壇した。
『6人の食卓』は三兄弟と三人の女性が織りなすお料理コメディ。9月に香港で公開されるや大ヒット、コメディとして香港歴代興行収入第1位となる7,500万香港ドルを突破した。
今回が初来日となるリン・ミンチェンは、11日の『ワン セカンド チャンピオン』上映でもチウ・シンハン監督とともに登壇。日本語で観客に感謝を伝える姿が印象的だったが、『6人の食卓』の際も「皆さんこんにちは、私はリン・ミンチェンです。この映画が皆さんの心に響けば嬉しいです。楽しんで頂けましたか?」とすべて日本語で挨拶し、観客からは大きな拍手が!
Q&Aでは、最初に脚本を受け取ったときの感想を「これは楽しく喜んだり笑ったりする、私の大好きな正月映画だ!」と喜んだ一方、「私が皆さんを笑わせなければならないんだと感じました。でも脚本家や監督が私のためにこの役柄を作ってくれたのか、と思うくらい自分と共通点が多かったので、やります!と返事しました」と振り返る。
そして「でも出演するにあたって私の最大のチャレンジが言葉です。まだあまり広東語が得意でないので、自分のセリフのところに英語で発音を記したり、九声ある広東語をラップのように繰り返し言いながら暗記をしました」と役作りの裏話を披露。コロナ禍での撮影で、21日間の隔離中に必死にセリフを覚えていたという。
また、リン・ミンチェン演じるモデルが撮影を依頼する三兄弟の長男ホンを演じたダヨ・ウォン(黃子華)は香港で大変人気のある俳優だが、彼との共演を聞いたときには「オーマイゴッド!」と驚き、緊張したそう。でも「現場に行くと、共演者がみなさん優しくて、私にあわせてくれ、みんなは広東語なまりの下手な北京語で話しかけてくれ、私は北京語なまりの下手な広東語で返事をしたり(笑)ちょうど映画の中のやりとりのようでした」
また、印象に残るシーンを聞かれるとダヨ・ウォンとテラスに出て話すシーンを挙げ、「脚本を読んだ時からここは重要な場面だと感じ、その後は撮影するまであえて読まないようにした。なぜなら一度読んだだけで涙があふれたから」と答え、本番のときには監督とダヨ・ウォンと共にどう撮影するか時間をかけて話し合って臨んだという。
その甲斐あって気持ちがとても入りやすくなり、ダヨ・ウォンを抱擁する場面も「彼のことを本当に愛しいなぁと心から思いました。私自身も感動しましたが皆さんはどうでしたか?」とリン・ミンチェンが逆質問。観客もその思いが十分伝わり大きな拍手で応えていた。
最後に、今後やってみたい役については、「実は私は歌手なので、自分が役者になるとは考えてなかった。これからもっと努力しなければならない」というリン・ミンチェンだが、『6人の食卓』は映画館でなんと7回も観たという。
「観客が笑っているとすごく嬉しいし、私には喜劇の才能があるのでは(笑)と自信も出てきて、これが私の役割なのではないかと考えるようになりました。今後もコメディのオファーがあったら喜んでやりたいし、私の役で皆さんを楽しませて笑わせて、喜ばせることができたら、これ以上嬉しいことはないと思っています」と覚悟も見せた。
そして現在香港で大ヒット中の本作は、出演者全員が続編を望んでいるそうで、リン・ミンチェン自身も「もし私が出演することができたら、もっと演技を磨いてもっと皆さんを笑わせようと思います!」とにこやかに答え、大いに盛り上がったQ&Aとなった。
11月9日(水)から13日(日)まで5日間にわたって開催された本映画祭は、13日のラウ・チンワン主演『神探大戦』まで、世界的に評価された話題作から、これからの香港映画界を担う期待の新人監督作品まで、個性豊かな8本が揃い、各作品のチケットは即完売の大盛況。会場となったBunkamuraル・シネマには連日多くの映画ファンが集まり、来日ゲストを大きな拍手で迎えた。
上映作品の来日ゲストは『黄昏をぶっ殺せ』の脚本・プロデューサーであり『リンボ』主演のラム・カートン、『ワン セカンド チャンピオン』監督・原作・出演のチウ・シンハン、香港返還25周年記念作『同じ空の下』ティム・プーン監督とサニー・イップ監督、『ワン セカンド チャンピオン』と『6人の食卓』出演のリン・ミンチェンと多彩な顔触れが登壇し、上映前の舞台挨拶とQ&Aに登壇。コロナ禍でなかなか叶わなかった来日ゲストとのQ&Aでは、質問が多く寄せられ、ゲストは時間の許す限り、日本の観客とのQ&Aを楽しむ様子が見受けられた。
特に期間中、『黄昏をぶっ殺せ』と『リンボ』の2作品で上映後Q&Aに登壇したラム・カートンは、最後の挨拶で「このように映画館にわざわざ足を運んで頂き、観客の皆様へこの場を借りてお礼を申し上げたいです。今回の私の2作品(『黄昏をぶっ殺せ』『リンボ』)を含めて、観客の皆様にはあまり失望を与えないようにいつも心がけていますが、これから私たちも力を出して、より良い香港映画をたくさん作って、また日本の観客の皆さんにご覧いただけるようがんばりたいと思います。本当にありがとうございました!」という熱く力強い言葉には、会場からの大きな拍手が鳴りやまず、来日ゲストと観客からの香港映画愛を存分に感じる5日間の映画祭となった。
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